第2章 始まりは現実逃避 1
あたりが暗くなっていた。その中を一筋の光がさした。この時代の電車は、薄暗い中で目を凝らしても車輪は見当たらない。僅かに宙に浮いている。次第に電車が止まりスズラカミが中から出てきた。
『終点、終点です。お忘れ物がないようにご注意ください』
改札の前に来た。人が一人通れるぐらいの機械のドアが並んでいる。スズラカミはマイクロチップに入っている電子マネーでお金を払う為、駅が発してる公共ネットワークに繋いだ。目の前に金額が表示された。スズラカミはその金額を出てきたアイコンで押した。すると、目の前の金額が消えた。
扉が開いた。横に警備用のロボットが立っていた。それを横目にスズラカミは歩いていった。
この世界では、ほとんどのものにインターネット接続ができるようになった。それも脳から。これによって昔はよく駅に人が立っていたらしいが、それも今や無人が当たり前になった。
マイクロチップからデータを受け取ったIOTはデータを自動的にまとめ上げてビッグデータとして蓄積される。そしてAIで分析されて、また「もの」に共有するいう仕組みだ。
スズラカミは駅を降りた後、赤い雨を避ける為、コーティングされた特殊な傘をさした。
それから、スズラカミは家のドアと脳内のマイクロチップを
スズラカミはエクスを起動した。目の前がたちまち白い空間に包まれた。パスワードとIDを入力した。黒い縁に手の形をしたものと沢山のアイコンが出てきた。真ん中の緑色のアイコンを見た。すると上に黒い縁取りで、手の形をしたものが浮かび上がり、緑のアイコンを掴んだ。そのまま右斜め下に移動すると扉のように開き、中からデータが大量に出てきた。娯楽、音楽、ゲーム、映画、ニュース、セラピー、健康、スポーツ、恋愛、性欲。これらはマイクロチップの脳内で見ることができる。昔はテレビやスマートフォン、ラジオというものがあったらしいがそれらは全てエクスに取って代わられた。
こういう「半鬱」状態の電車の帰りで1番良い選択は、セラピーのエクスを擬似体験することだろう。実際、エクスの「あなたへのおすすめ」の欄にセラピーへの体験が表示されている。
だが、スズラカミは数時間前に顧客が言っていた映画のあらすじが気になっていた。1番上の検索欄にインセプションと表示された。目の前が暗くなる。映画の始まりだ。
30分ほど見たところで家に着いた。
薄暗い家の中で
だが、こんな憂鬱な気分も終わりだ。人が一人入れるほどの電話ボックスのような機械の物体の扉を開けた。スズラカミはマイクロチップをその機会の物体に繋げた。起動するまでの時間に気分が高揚してきた。やがて青白い光に包まれた。
この世界の未来のゲーム機「ガン✖️ナイト」である。ボックスの中に入るとVR空間状でプレイすることができる。自らの五感をバーチャルの中に委ねることができる。今までの青白い光が視界から消えた。
健康的な緑色の芝生があたり一面に広がっている。その水平線上まで見ると上には青い空と太陽。風が肌を打つ。スズラカミは地面を見た。一歩踏み出した。足が地を踏む感覚がある。
「おせーぞガク」
ガク、それがスズラカミのゲーム上の名前である。
そして、この声はガン×ナイト上のハンドルネーム、ネムである。
突然人の形をした光が5つ空から転送されてきた。やがて地面に到達すると光は実際に人に変わった。皆思い思いにサバイバルに行くかのような格好をしている。これはガン×ナイトの戦闘服である。
「今日も仕事が長引いてな」
「ガクは社畜なんだからしょうがないだろ」とレイ。
「それにも関わらず俺と同じレベルなんだからよ。才能だけはあるよな。無駄に」
とシャチ
「シャチ、それは自分の能力が足りてないだけだろ」とワタリ
「おっす!、久しぶりだなガク元気にしてたか?仕事でぶっ倒れてんじゃないかと思ってたわ」とジャガー
「じゃあ、久しぶりに全員揃ったことだし、今月の試合に向けて練習不足だったチームでの連帯の部分を意識して射撃場にいきたい。終わったらマッチをガッツリ回していこうぜ」ジャガー続けていった。
「うおー!」とネム
「ゴリラかよ」とワタリ
「黙れよ雑魚野郎」
「うるせーよニート」
「おいおい、チーム内での煽り合いはは良くないぞ。まったくお前らは…最高だな。ガッハッハッ」とジャガー。
「はーい」とネム。
「了解、リーダー」とワタリ
ガン×ナイトは通常6人がワンチームとなり、戦場で戦うリアリティVRバトルロワイヤルゲームである。現在のゲームの中で最も現実の戦場に近いゲームであるとして人気が高い。
このゲームにはチーム練習ができる射撃場が設けられている。何度撃っても復活するバーチャルの銃の的。バーチャルの岩の木で射線を切る。空は永遠に晴れている。
チームが射撃場で練習をしている中スズラカミはいった。「新マップの情報を見たが、あのマップだと障害物が多く、より射線が通らない。マイクロハックが特に有効的になりそうだな」
「同感だな。俺もマイクロハックの環境が来る気がしているんだよな」とジャガー。
「今言われて気づいたわ」
「相変わらず二人は頭がいいな」
「ニートの俺なんかよりよっぽど忙しいのによく気付けるな」
「ほう」
それぞれの反応を見た後にジャガーは全員にいった。「今のうちに新マップの地形も頭に入れつつ、マイクロハックを相手に仕掛けた後の動きを確認していくぞ」
スズラカミは的に銃を撃ちながいった「賛成だな」
2階建て住宅が並び立つエリアで銃声と爆発音、それによる煙が上がっていった。実戦が始まっていた。場所は住宅街で建物同士は2階だけの通路があったりと道は入り乱れていた。
「フォーメーションDだ。部隊を3つに分ける。マイクロハックのワタリとレイは後ろの長屋の2階、すぐ脱出できる位置にいろ。ガク、ネムは自動歩行技術で左右から仕掛けて、スモークで巻け。正面は開けて、敵が来たら挟み込め。シャチは俺と来い」
ジャガーはそういって最初に集合する部屋から出ていった。
「了解」
「それにしても、ジャガーは優秀だよな」ネムが話しかけてきた。
「ああ、あいつは何か、戦闘に関しての特殊な訓練を受けてきたんじゃないかと思わせるぐらいに動きが洗練されている」
「実はリアルで軍人とか?」
「さあな、俺も知らねえよ」
「ヘヘッまあだとしたらこんなゲーム毎日やる時間ないよな。よし!、いっちょやってやろうぜガク」鼻の下を擦りながらネムがいった。
「ああ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます