第195話 まだ打ち解けられず
色々あったが、森に到着した。
というか、あれから数回魔物と遭遇したのだけれども、全てレイがワンパンで仕留めてしまったりする。
レイは「まもの、なぐりにいく」と自ら言っていたくらいなので、たくさん殴れて満足そうだ。
「レイ、スッキリしたか?」
「ん!」
アキヒサが尋ねるのに、レイが大きく頷く。
若干頬が緩んでいて、大変楽しかった様子である。
本当に魔物狩りが好きな幼児だ。
そしてレイが倒した魔物を前足でペシペシと叩き、ちゃっかり経験値を稼いでいるのがシロである。
これを世の中では寄生レベリングというのかもしれないが、シロは早く強くならないとパクっと食べられてしまうのだから、寄生でもなんでも強くなれた方が勝ちだろう。
そんなレイの一方で。
「……」
子どもたち三人組は、最初の威勢は彼方へと行ってしまったらしく、青い顔で大人しくなっている。
いや、ダンはレイをじぃーっと見ていて、話しかけたそうにしているのを、他の二人から止められている感じであったか。
ダンは半獣人なので、人族である他の二人とは、レイの強さへの考え方が違うのかもしれない。
まあ、そんな子供たちの様子をレイ当人が全く気にしていないので、アキヒサはしばらく放置しておくことにした。
――休憩する時にでも、会話を促せばいいかな。
それよりも今は依頼の薬草探しが先だ。
なにしろ時間がもうそれなりになっているので、急いでちゃっちゃと終わらせなければならない。
手っ取り早く群生している所がないものかと、アキヒサは探索スキルで探してみる。
すると薬草と小型の魔物の反応がちらほらとあって、この森の生態系も徐々に戻ってきているようだ。
採取物の反応が空白の場所がちらほらあるのは、もしかすると乱獲されてなくなってしまったのかもしれない。
逆に反応が多いのは――
「ふむ、あっちだな、行こうか」
「ん!」
アキヒサが行き先を決めると、レイもこっくりと頷く。
けれど、子どもたちは「え?」という顔になる。
「あの、そっちには汚い沼があるだけですけれど」
ジムが思わずといったように、そう告げてくる。
キャシーは「わからないくせに」と若干馬鹿にしたような目になっているし、ダンも戸惑っている様子である。
まあ、三人組にはアキヒサがスキルを使っているだなんてわからないのだから、こういう反応になるのも無理はない。
けれどもそちらにどうやら群生地があるらしいのだから、行くしかないわけで。
――そういえばこの『探索』のスキルって、この世界の人はどんな風に使うんだろう?
アキヒサやリュウにはパネルとして出てくるが、これは生体兵器やアキヒサの固有のシステムなのだろうか?
『探索』スキル持ちに出会えていないので、その使用感がわからず、余計に気になる。
そんな疑問はともかくとして。
「まあいいから、行ってみようか」
アキヒサが促すと、三人組もしぶしぶと言った様子でついてくる。
なにしろアキヒサがいないと自分たちだけでは薬草採りはできないのだから、一緒に行くしかないのだ。
――引率って大変だなぁ。
アキヒサは簡単に引き受けたことを、今になってちょっと後悔し始めていた。
「薬草どっさり、魔物ドカーン♪」
そんなアキヒサの隣を、レイが歌いながら歩くのがなんとも和む。
やがてジムが言ったように、進む先に沼らしきものが見えてきた。
「確かに汚いな」
アキヒサは顔をしかめて、その沼を見る。
しかもちょっと臭いし、三人組が嫌がったのはこの臭いもあるのかもしれない。
――でもその沼の中なんだよな、反応があるのって。
となると、この汚い沼に入らなければならないと、そういうことになる。
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