第159話 起きている?

光線を素手で弾いたレイは、大丈夫なのだろうか?


「レイ、怪我してないか!?」


「……ちょっといたい」


アキヒサが確認すると、着地したレイが光線を弾いた方の手を見せてきた。


「赤くなってるじゃないか!」


するとレイの手の甲が火傷をしたみたいになっている。

 リュウのドラゴンブレスでもちょっと日焼けしたくらいだったのに、先程の光線はあれよりも強力だったというのか? それにレイがダメージを受けるのは、リュウを殴って血を流した時以来だ。


「『治癒』、これでもう痛くないか?」


「いたくない」


アキヒサがレイに『治癒』をかけると、レイが手をニギニギしてみせた。

 一方で、リュウが驚愕の表情で光線が壁に開けた穴を凝視している。


「今のはまさか、起動しているのか!?」


そう呟いたリュウが壁をトントンと叩き、それを合図に覆っていた壁が全て消えてしまう。

 機械があった部屋は、元々あった壁と天井も含めて、全てが消し飛んでなにもなくなっていた。

 残っているのは床のみだ。

 その床も、リュウが壁で覆っていた場所を境にして、まるで別空間であるように焼け爛れている。

 機械類は全て消し炭になったのか、残骸すら残っていない。

 天井も自爆の勢いで消し飛んだらしく抜けていて、見えるのは上の階層の床下である。


 ――壊して使えなくするとかじゃなくて、本気で証拠隠滅のための自爆だったのか。


 それだけ他の生体兵器、特にリュウに見つかるのを恐れたのかもしれない。

 まあそれも、ウン千年を超えて見つかってしまったわけだが。

 そのなにもなくなった空間の中に、しかし一つだけ残っていたモノがあった。

 容器に入っていた中身である。

 ソレは白っぽい色をしていて、容器があったあたりに浮かんでいた。


「リュウさん、あれって……」


「No.1が容器の外で生きている、やはり起動しているではないか」


アキヒサが問うのに、リュウがそう説明する。

 今のこの状況は、彼にとって想定外であるようだ。

 改めてみるソレは、生き物の内臓部分に強引に目と鼻と口をくっつけたような、奇妙な形をしていた。

 はっきりいって不気味である。


 ――どういう状態なんだ?


 アキヒサは先程と違い、No.1単体を鑑定してみた。


~~~


名 前 破棄

性 別 不明

年 齢 未設定

職 業 生体兵器No.1

レベル 未設定

スキル 神レベルなし

※ No.1の破棄された部位を拾い集めて造られたスクラップ品で、半覚醒状態で維持されている。


~~~


なんだか物騒な情報が見えた気がする。

 要するにNo.1の捨てられるはずのものをちゃっかりちょろまかして手に入れて、強引に繋ぎ合わせてかろうじて形を成したものを、なんとか生体兵器として生かしているということだろうか?


 ――日本だってそういうものから、危ない事故が起きるものだった気がするけど……。


 資源再生と言えば聞こえがいいが、それもちゃんとした知識があってしっかり管理ができていて、初めて安全に使えるものだろう。

 それがてんでダメダメな管理状態で、しかも半覚醒状態で維持とか、よく今まで事故を起こさなかったものである。

 しかし半覚醒ということは、まだちゃんと起きていないということでもある。

 対処するなら今のうちだろう。


「鬼神よ、早く壊せ!」


「うるさい」


リュウに言われるまでもないといった調子で、レイが弾丸のように跳び出す。


 ジュゥウッ!


 だがそれを遮るように、ソレの口らしき部分から光線が薙ぎ払うように発される。

 しかしレイはその攻撃を想定していたようにひらりと避けたものの、足を止めてしまう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る