第45話 無断使用

 松本蓮は紙袋から写真を出した。文化際で展示した手持ち花火をする少女の写真だ。

「松本君、こんなすばらしい写真をココに飾っても良いのかな」

「はい、折角の写真です。皆に見て貰えたら良いなって思います」

 森幸乃は恥ずかしそうな顔をした。

「それと、私の写真も」

「えっ? きりんのかい?」

「私の撮った写真じゃ無くて、海斗くんが撮った写真よ」


 海斗も文化際で展示した写真を紙袋から出した。森幸乃がモデルの写真だ。

海斗はマスターに話しかけた

「これね、夕立で服がビチョビチョになった日に、撮った写真なんですよ。蓮の様に金賞は受賞出来なかったけど、それでも入賞作品なんです」

「へ~、夕立の日の写真なんだ。幸乃がとっても綺麗に撮られているね。記念になる写真だよ、綺麗に撮ってくれて有り難う。どちらも写真家が撮った写真だね。素人には撮れないよ。流石写真部だ! 店の良い所に飾るね。そうだ、松本君は写真が得意だから、カメラを持つ仕事に就くと良いんじゃないかな、例えばテレビや新聞のスチールカメラマンとかね。個人のカメラマンだと安定した収入が見込めないから会社員がいいかな」

「おー、何か良いかも、でも就職のハードル高そうだな。今度、調べてみようかな。マスター有り難う」鎌倉美月も続いた。

「そうね、写真が好きだもんね。でも、安定した収入が欲しいから個人は止めてね」

森幸乃は笑った

「やだ~、もう夫婦みたいじゃない!」

皆も笑った。





 (新聞部とは)

 毎月発行される学園通信は、校内の催事事を始め校長先生の言葉や、部活動など

の受章発表を内外に発表する校内新聞である。この新聞の後ろの一ページを作る

事が新聞部の活動である。海斗達には関係の無い部活にも思えるが、新聞に

使われる大半の写真は、写真部から提供されるものだった。良い記事にしたい

新聞部と多くの人に見て貰いたい撮影者の、利害が一致するウィン、ウィンの関係

なのだ。


 (写真部にて)

 放課後に海斗達が部室に居ると歩み寄った。和泉部長が海斗話しかけた。

「なあ、前々から問題になっていたが、裏サイトの存在を知っているか? 

「ええ、知っています」

「その裏サイトは、新聞部が作っているって噂が有るんだ」松本蓮が言った

「俺も聞いた事が有ります。写真部の共有ホルダーから引き出され、承諾も無く

使われるって、先輩が言っていました。海斗は聞いた事はないの?」

「無いよ。だったら、すぐバレるだろ?! 写真なんだし」

「だから、加工ソフトで少し加工してあるらしいよ、だからぱっと見ても

解らないらしい。でも撮影した人は木や人を変えたって、構図を覚えているから

分かるんだよ」


 困った顔をして和泉部長は相談をした

「それでね、最近では先日のミスコン写真も、裏サイトで使われたんだよ」

「えー!、使われていたの!」

「と言う事は君たちも、サイトは見ていないんだね。サイトを見る写真部員から

相談を受けたんだ。松本君、どうしたものかな」


「事実を追求すると、ウィン、ウィンの関係が崩れるって事か、確かに学園通信に

掲載されるのは写真部員なら憧れがあるからな。撮影者○○なんて記念になる

もんね」海斗も続いた。

「でも写真部の写真が無きゃ、学園通信だって、つまらない新聞になるんだから、

写真部だって強気に出ても良いんじゃなんですか! あのサイト、ゴシップネタや、

フェイクニュースが多くて、俺、嫌いなんだ」

「俺達だって、クレーマー事件で嘘を書かれたもんな、海斗なんて実名報道され

ちゃったもんな!」

 和泉部長は心配をしていた。

「ああ、そう言えば、記事にインパクトが有って忘れていたよ。ハハ、伏見君は

実名入りだったね。サイトの管理人が新聞部だったら、写真部部員の名前を知って

いても可笑しくないよな。一番心配しているのは写真部が裏サイトを作っていると

思われるのが問題なんだ」


 海斗は腕を組んだ

「よーし、今度、俺が証拠を掴んでみるよ!」

 松本蓮首を傾げた

「海斗、でも、どうやってやるんだ?」

「んー、分かんない!」

ズゴ! 三人はコケた。

「でも、考えてみるよ」

「伏見君は頼もしいね、でも新聞部に直接掛け合う時は、俺も呼んでくれ、

神経質な問題だからね」

「はい、分かりました」


 (海斗の教室にて)

 海斗は裏サイトに付いて、聞き込みを始めた。

「ねえ美咲、美咲! う~ん美咲? ……うん、良い響きだ」

海斗は本題に入る前に、名前を言った事に赤くなった。中山美咲は赤くなった

「海斗、私の名前を呼んで、赤くならないでよ、こっちが私が恥ずかしよ」

「ゴメン、ゴメン、学校の裏サイトって知っているかな?」

「ああ、私はあまり見ないけど、莉子が見ているかな」林莉子は答えた

「うん、見ているよ。それがどうしたの?」

「あのサイトの管理人って、誰か知っている?」

「あー、それは解らないわ! 考えた事も無かった。相当な情報通な人よね。

まさか先生じゃ無いわよね」中山美咲は続いた

「先生だったら、いい加減な事は表にしないよ。むしろ学校側に立ってみれば、

煩わしい情報よ、削除の対象だと思うわ」

 遠藤駿が参加した

「そうなんだよ、俺も前から思っていたんだ。野球部の先輩がマネージャーと

破局した時に迷惑していたんだ。それで運動部上げて探したんだぜ!

情報力が有って、文書力が有るとなると……、それで出た推測は新聞部なんだよ。

新聞部に掛け合ってみたけど「知らない」の一点張りだったんだ。俺たちはしっぽ

を掴まずに追求をして息詰まったんだ。」

 松本蓮も同感した。

「やっぱりな、実は俺達も同じ事を考えていたんだ。新聞部の活動は学園通信の

たった一ページの割に、アチコチ頭を突っ込んでいるよね。人数もいるしアンテナ

の数も多いと思うんだ」鎌倉美月が続けた

「そうそう、私、野球部のエースとマネージャーが破局したニュースを読んだわ。

悪いけど笑っちゃった」遠藤駿が続けた

「それが彼らの狙いなんだよ! 面白おかしく書いて閲覧数えお上げ、注目させ

たいんだよ」林莉子は海斗を見た

「海斗はクレーマー事件と感謝状と二回流されたよね、ねえ梨紗」

「ププ、海斗は学園の有名人じゃん!」海斗は不満だった。

「こんな裏サイトで有名人は嫌だよ、梨紗も純ミスグランプリで流されたもんね。

あれは悪口じゃ無かったけどね。葵が言っていたけど、このサイトは中等部まで

見ているんだよ」中山美咲は驚いた。

「えー! こんなの見ているの? ちゃんと真実を見分ける事が出来るのかしら」

 遠藤駿は首を傾げて言った

「伏見は、調べて何をするんだ?」

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