第39話 模擬店二日目

 (文化祭二日目、海斗の教室で)

 長谷川先生は機嫌が良かった。

「皆、先生の中でも評判だよ! 今日も頑張って行きましょう」

 皆は準備に取りかかった。昨日の反省を生かして、パンケーキを焼き始めた。お客さんには先に焼いたパンケーキを温めて出す事で時間の短縮が図かられた。昨日の評判が話題となり、今日は開店前から凄い列になった。遠藤駿は言った。

「残り半日だね、今日もがんばろうぜ! 今日は最初に記念写真を撮ろうよ。松本、お願いしても良いかな」


 松本蓮は文化祭のスナップ写真を撮るためカメラを用意していた。カメラを準備して記念写真を撮った。誰もが羨む、思い出の一枚になった。

 遠藤駿は皆を注目させた。

「皆、今日も佐藤さんが、がんばるぞって言うから、皆は、おーって続いてね。三回やるよ。じゃあ、佐藤さんお願い!」

 佐藤美優は言った

「頑張るぞー!」

「おー!」


 開店時刻になり佐藤美優は、お客さんを入れた。開店をして三十分が経った時だった。ある生徒が来店したのだ。

「伏見君は居るかい?」小野梨紗が海斗に声を変えた。

「海斗! ご氏名のお客さんだよ!」


 海斗はホールに向かうと池田会長がニンマリしていた。

「池田会長、遊びに来てくれて有り難う御座います」

「校内の視察中だったんだけどね、近くまで来たから、海斗君の顔でも見ようと思ってね、寄ってみたんだ」


 海斗は池田会長を裏方に回し、席に着いてもらった。裏方の生徒に言った

「皆、聞いて貰えるかな。今回の許可をしてくれた生徒会長の池田さんだよ。皆で挨拶してね」

 遠藤駿は音頭をを取り、皆は声を揃えて言った。

「有り難う御座いました!」

「や~、照れるよ。お店も大盛況だね」


 海斗はパンケーキと紅茶を出し、橋本七海を連れてきた。橋本さんには、遠藤駿から事情を話してもらい連れて来のだ。橋本七海は池田会長に両手でハートを作りかけ声をかけた。

「萌え、萌え、キュン、キュン、いらっしゃいませ、池田会長様」

 池田会長は、真っ赤になった。

「橋本さん、ミスコン応援しているからね」

橋本七海は池田会長の肩に手を置いてた。

「有り難う御座います。応援して下さいね、会長」

 さすが橋本七海だ、接客になれている。会長は食事を済ませると早々に引き上げた。

 遠藤駿が海斗に話しかけた。

「伏見さあ、今晩文化祭の打ち上げしないか?」

「うん、いいよ」

「今からなら、喫茶「純」は予約取れるかな?」

「森さんに聞いて見ようか、でもあそこじゃ、クラス全員は入らないよ」

「希望者だけを誘ってさあ、クラスの半分ぐらいになるでしょ」

「なら、座れるかもね」

「それとさあ、言いにくいけど、森さんも一緒にどうかな」

 海斗はピンと来た

「何か回りくどいと思ったんだ、京野から頼まれたのか。いいよ、遠藤の頼みだもん」

「やー、助かるよ!」


 海斗は森さんのリクルートの件で丁度良いと思い、彼女にメールを入れた。すると森幸乃から返信が来た。海斗は遠藤駿に答えた。

「遠藤、OKだって。十八時から二一時まで貸し切りにしたよ。細かい事は、お店に電話をかけて決めてね。貸し切りにするんだから、ドリンク一杯って訳にはいかないよ」

「うん、分かった。有り難う」


 海斗はSNSのグループに、今晩の打ち上げの連絡を送信した。

そばに居た松本蓮は海斗に話しかけた。

「面白そうだけど、京野颯太の出方が心配だな」

皆は既読した。


 すると小野梨紗は海斗と松本蓮のそばに歩み寄った。

「海斗、緊張してきた。どうしよう」

「大丈夫だよ、梨紗、いつもの元気な梨紗で良いんだよ。俺達が応援しているからね。十三時三十分に舞台袖で、待ち合わせだからね。着替えてくるんだよ」

 小野梨紗はホールに戻った。入れ替わるように鎌倉美月が来た。

「や~、疲れたよ。慣れないことやるから、喉がヒリヒリだよ」松本蓮は答えた

「お疲れ様、美月。……今度は俺にもやって欲しいな」

すねた松本蓮に海斗と鎌倉美月は笑った。


 鎌倉美月はトイレで着替えをして、教室に戻って来た。海斗達はミスコンの準備の為、皆に挨拶をして体育館に向かった。

 十二時になり、クラスの模擬店は大反響のもと終了した。佐藤美優を始め、クラスメイトも成功を収めた模擬店に感動し達成感を覚えた。女子の着替えの為に、再び男子は廊下に移動し着替えを終えた。生徒は模擬店に拘束された分、他の模擬店を楽しみ体育館に向かった。


 小野梨紗はミスコン用の私服に着替えた。中山美咲と林莉子も制服に着替えて、小野梨紗に付き添った。林莉子はカチカチの小野梨紗に声をかけた。

「梨紗、そんなに緊張をしないの。いつも通りで良いって、海斗が言っていたでしょ。」中山美咲は続いた。

「小野さん、今日の私服もステキだね。モデルみたいよ」

「莉子、美咲、有り難う」

 中山美咲は時計を見た

「そろそろ時間だよ、一緒に体育館に行くからね。そろそろ行こうか」

「有り難う、心細かったんだよ」林莉子は言った。

「もー、友達なんだから、最後まで付き合うよ」

三人は橋本七海のグループと合流して、体育館に向かった。


 小野梨紗も橋本七海も、海斗達に会い最前列の出場者席に着いた。仲間は二列目の関係者席に座った。学校の体育館はコンサート会場の様に照明やマイクのテスト軽音楽のリハーサルが行われていた。

 林莉子は会場の雰囲気に呑まれた。

「美咲、何だか私が緊張して来ちゃった。去年は興味が無かったのにね」

「そうよね、独特な雰囲気がするよね、梨紗は大丈夫かしら」

京野颯太も、空気に呑まれていた。

「遠藤、緊張するね。橋本さん大丈夫かな?」

「二回目ですから大丈夫だよ、たぶん」


 開場時間となり体育館の扉は開かれた。沢山の生徒達が楽しそうに入場して来た。生徒達は候補者の名前を口々に上げ開演時間を待った。

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