第38話 学園祭


 海斗、松本蓮、鎌倉美月は、午後から写真部の展示室店番をする為、展示教室に向かった。森幸乃が先に待っていた。海斗は森幸乃を見た。

「森さん、お待たせ! あれ、留守番を決めた割には部員が多くいるね」

「私も今、来たところよ。たぶん、クラスの模擬店が無い人は、行く所が無いのかもね」


 松本蓮は午前の留守番の部員に声をかけ引き継ぎした。森幸乃は声をかけた。

「鎌倉さん可愛いわね。朝はバタバタして、まともに褒める事が出来なかったわ」

「私も、この格好で、またココに来るのが怖かったけど、折角、学園祭だし、可愛い衣装で来ちゃった。それに蓮、ようやく話が出来るね。さっきまで、急がしかったもんね」

「ホントだよ、まして裏方だから、折角の美月が見られなかったよ」

二人は赤くなった。松本蓮は部室を見回した。

「なあ美月、ここは静かだな、さっきの騒ぎが、嘘みたいだ」

「そうね、生徒の中で、あまり写真に興味がある人は少ないのかな」


 森幸乃は模擬店の異例の許可について訪ねた。

「そう言えば伏見君、君達のクラスは二日間のフル営業をしないでよく許可が下りたね」

「それが大変だったんだよ! クラスで二人もミスコンの候補が出てんだよ。昨年のミスグランプリ橋本さんと、小野さんノミネート第二位でね。ミスコン開催時間はクラスメイトは応援に回るから営業が出来ないでしょ。それで模擬店を取るか、ミスコンを取るかで仲違いになりそうになったんだ。どちらも取る為に、異例の許可が必要だったんだ。そこで生徒会の許可を取る為に池田会長に相談に行ったの。

 皆は去年の議事録を見た時に気付いていたかな? 池田会長は去年も生徒会をやっていたんだ。和泉部長のコメント欄には池田君はミスグランプリになった。橋本さんが好きなようで、最後に握手をして喜んでいた。と書いて有ったんだ。それに許可の相談に行った時も、クラス名を言うだけで、コスプレを楽しみにしているって言ったでしょ、それで確信したんだ。池田会長は絶対、橋本さんのメイド姿を見に来るし橋本さんのミスコンも残す。つまりウチのクラスと利害が一致していると思ったんだ。


 松本蓮も、鎌倉美月も驚いた。松本蓮は海斗に話しかけた。

「えー、そんな事まで考えて交渉していたの」鎌倉美月も続いた

「私も気が付かなかったよ。凄いよ海斗」

 海斗は続けた

「それとね、会長と親しい小川さんに聞かれたら、良く無いと思って、わざわざ耳打ちをしたんだよ」松本蓮は納得をした。

「あ~、それで耳打ちをしたの、小川さんには怪しまれたけどね」

 森幸乃は感心をした

「へ~、伏見君はホントに凄いね。失敗したら明日のミスコンだって、盛り下がっていたかも知れないのにね。見かけによらず策士なのね」

海斗は頭を掻いた。

「それ、褒められているのかな~?」

皆は笑った。


 展示教室に海斗達の仲間が訪れ、小野梨紗が声をかけた。

「海斗、皆で見に着たよ!」

 すると、彼女達は写真部員に囲まれ餌食となった。メイド姿の女子が四人も並んだのだから。アイドルの記者会見の様にフラッシュが止まらなかった。

 松本蓮は事態の収集を図った

「もー! ダメだよ。肖像権の侵害だよ! 許可も取らずに撮影しないの!」

 森幸乃は笑った

「伏見君、皆かわいいね、これじゃあメイド喫茶は忙しくなるわよ」

「ププ、そうなんです。粒ぞろいなんです」


 海斗は仲間を紹介した。

「こちらは港湾課三年の森幸乃さん。お父さんは喫茶「純」のマスターなんだよ。それと初めましての人は、同じクラスの、こちらが小野梨紗さんと林莉子さんです。小野さんは明日のミスコンに、出場するんだよ」

 皆は挨拶を交わした。すると写真部の看板娘と勘違いして、お客さんがコスプレ見たさに入場してきた。松本蓮は言った。

「皆は凄い人気だね。このまま歌でも歌ったら、売れるんじゃないの?!」

皆は笑った。そして皆で記念写真を撮り、展示作品を見て回った。


 松本蓮の写真は彼女達がモデルなので評判が良かった。後で印刷して渡す事になった。鎌倉美月の写真も評判が良かった。どちらも彼女達の思い出の写真だからだ。海斗の写真は違う評価だった。

 小野梨紗は腕を組んで言った

「あー、海斗ズルい、私も行ってみたい!」中山美咲も続いた。

「あ~、これが課外受業ね。他の二人が写って無いようだけど」林莉子も続いた。

「とっても綺麗な写真だよ。私も撮って欲しいな」

 森幸乃は彼女達を見て海斗に言った。

「伏見君は人気者だね、クラスの中心に居るんだろうね」

海斗は照れて頭を掻いた。暫くすると女子はメイドカフェに戻った。


 十五時をまわり終了時間となった。展示室の鍵を閉め、海斗達は教室に戻った。教室の皆は疲れてクタクタになっていた。海斗達は労いの声をかけた。

「お疲れ様! 大変だったね」

 遠藤駿はくたびれた声で答えた

「伏見! 大変だったよ。焼いても、焼いても間に合わないんだ」


 海斗達も片付けに加わった。長谷川先生は声を張った。

「今日は、みんな良くやったな。恐らく校内でも一位の評判だと思うよ。まだ明日が有るから、明日も頑張ろうね。それと火の元対策で電気ポットとホットプレートのコンセントは必ず抜くようにして下さい」

教室の生徒達は一時間ほどの片付けと、明日の準備をして帰宅した。


 この日は夕方十六時から、ミスコン実行委員の最後の全体打ち合わせが行われた。校内で最も注目されるイベントだ。音響・映像は放送部、照明効果は演劇部、司会は放送部と演劇部、前座とツナギは軽音楽部、そして主催の生徒会と写真部の面々が揃い、明日のイベントの確認を行った。これだけの部活が揃うのもミスコンならではのイベントだった。関係する部活も関係する事に誇りを持って参加した。

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