第27話:閑話・没落・ジェイムズ王国ウェントワース国王視点

 腹が立つ、腹が立つ、もうこれは戦争以外道はない。

 何なのだ、この薄汚れた王宮は。

 侍女も侍従もほとんどいなくなって、ろくに掃除もできていない。

 日々の食事さえ以前と比べものにならないくらい粗末になっている。


「おい、誰かおらんのか、余は空腹なのだ、直ぐに食事の用意をしろ。

 いったい何日豚肉を食べいないと思っているのだ。

 直ぐに豚肉を焼いて持ってこい」


 余が、国王の余がこれほど呼んでいるのに誰も来ないとはなんたることだ。

 

「おい、誰かおらぬのか、国王の余が呼んでおるのだぞ」


 本当に、本当に余は貴族士族達から見捨てられてしまったのか。

 今までは貴族士族が競って子弟子女を侍従侍女に差し出してきた。

 それが今ではウィルブラハム公爵家以外は王家から離反しおった。

 譜代の士族ですら余を見捨ててブートル家に仕えておる。

 全部、全部、ウィルブラハム公爵の責任じゃ。


「ウィルブラハム公爵、ウィルブラハム公爵はどこにおる。

 誰かおらぬか、直ぐにウィルブラハム公爵を呼んでこい、誰かおらぬのか」

 

 ★★★★★★


「麗しき御尊顔を拝し、恐悦至極でございます」


「そのような意味のない言葉などどうでもいい。

 この責任をどうとるのだ、ウィルブラハム公爵。

 ほとんどの貴族士族が余を見捨てたのはお前のせいだぞ、ウィルブラハム公爵」


「恐れながら申しあげます、私は何も悪い事はしておりません。

 全てはルドルフ殿下がセシリア嬢を殴り婚約破棄したのが原因です」


「ルドルフを唆したのはお前の娘、コリンヌではないか」


「それは御無体な事を申されます。

 コリンヌはルドルフ殿下を心配して社交界の噂をお伝えしただけです。

 それをちゃんと調べもせずに暴力に及んだのはルドルフ殿下の責任でございます」


「おのれ、ウィルブラハム公爵、お前の遣り口はよく分かった。

 ならば余にも覚悟がある」


「ほう、覚悟でございますか。

 今の王家にウィルブラハム公爵家を討伐する力がございますかな」


「ふん、虚勢を張ってもどうにもならぬぞウィルブラハム公爵。

 確かに王家の力は激減しておる。

 だが王家以上の苦境に陥っているのはウィルブラハム公爵家であろう。

 余から離反した貴族士族は、今回の元凶がウィルブラハム公爵であることをよく知っておるぞ。

 余以上に周囲の貴族士族や商人盗賊に狙われておるのであろう」


「……」


「なんとかしろ、コリンヌは聖女なのであろう。

 だったら聖女の力を使ってルイーズやセシリアのに負けぬ働きをせよ。

 さもなくば余はブートル家の追放を取り消すぞ。

 全てはウィルブラハム公爵の謀略のせいだと言って呼び戻すぞ。

 いや、それだけではないぞ。

 ブートル家のウィリアムにウィルブラハム公爵の継承を認めるぞ。

 それでよいのか」


「……だったら、お前が死ね」


「ぐっ、はっ!」


 腹が、腹が熱い。

 痛い、痛い、痛い、痛い。

 余は死ぬのか、こんな奴に殺されて死ぬのか。

 いやだ、いやだ、ぜったいにいやだ。

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