第10話:ブートル伯爵領
「ブートル伯爵閣下、伯爵夫人、セシリアお嬢様、よくぞご無事でお戻りくださいました、家臣一同一日千秋の想いでお待ちしておりました」
城代家老を筆頭に、全家臣が領境まで出迎えに出てくれていました。
先触れの騎士が全力で馬を駆って領地に知らせてくれたので、二十数日前から全ての準備を整えてくれていたようです。
城代家老をはじめとした家臣達のほとんどは、父上が分家した時にウィルブラハム公爵家からついてきてくれた者達です。
普通なら公爵家の家臣からは伯爵の家臣になるのは、格が下がると考えて嫌がる者が多いのに、待遇が悪くなるにも関わらず多くの者がついてきてくれたそうです。
多過ぎて一人に与える領地や報酬を下げなければいけないほどに。
本家のソマーレッドはよほど嫌われていたのでしょうね。
「領地も爵位を捨てる我々の為に、よくぞここまで迎えに出てきてくれた。
集まってくれた者達全員に心から感謝する」
父上や母上と一緒に私も軽く頭を下げます。
ここで頭を下げ過ぎると逆に家臣達に気を遣わせてしまいます。
「なんの、家臣一同伯爵閣下の決断が正しいと信じております。
領地に残ると言う者も他家に仕えたいという者もおりません。
全員がキャッスル王国についていきたいと申しております。
これは家臣だけではありませんぞ。
領民の全員が伯爵家の方々に従ってついていくと申しておりますぞ」
これは私が二人目三人目の伝令を送って希望を聞かせた返事です。
街道での惨状を考えれば、ブートル伯爵領の将来は絶望的なのです。
私も力を貸して領地を開発してきましたが、将来荒廃してしまうのは確実です。
ウィルブラハム公爵家の分家であるブートル伯爵家が、家族で領地を捨てて逃げ出したら、必ずその領地はウィルブラハム公爵家に併合されることになります。
最初からその心算でコリンヌやソマーレッドは動いていたはずです。
父上と母上が守ってきた領民が、街道で乞食をしていた人達や、奴隷として売春を強要されていた人達のようになるのです。
いえ、彼らの話では、私達が助けた人数の十倍近い人が餓死したというのです。
それを聞いて何も感じない人間などいません。
少なくとも父上と母上、私は全力で動く事にしました。
ブートル伯爵家は、家臣領民の全員がこの国を捨てて逃げるのです。
「ではできるだけ早く逃げる準備を終えてくれ。
今はまだ追手の気配はないが、王家や本家がこのまま見逃しえくれるとは思えん。
誰一人犠牲を出さないためには、早さが勝負になる」
「ご安心ください伯爵閣下。
近隣から買える限りの乗馬と輓馬に益牛、馬車に荷車、食糧に物資、セシリアお嬢様のご指示通り購入しております。
家臣領民の準備も整っております。
今直ぐにでも出発できますぞ」
やりますね、城代家老。
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