第7話 婚約破棄の真実
私は、エルクル様の反応に違和感を覚えていた。
婚約を申し込んできたのが、とても早かったのには、何か事情がありそうなのだ。
「何か事情があるのですか?」
「えっと……恥ずかしながら、僕がとても早く情報を掴んだのは、ザゼンドを監視していたからなのです」
「え? 監視ですか?」
私の質問に、エルクル様は意外にも簡単に答えてくれた。
どうやら、彼はザゼンド様を監視していたようである。
しかし、公爵家の令息を、第四王子が監視する意味がわからない。ザゼンド様は、何か悪いことでもしていたのだろうか。
「その……僕は、あなたに幸せになって欲しいと思っています」
「え? なんですか? 急に?」
「つまりですね。そのために、ザゼンドがどのような人物なのか、調べていたのです。彼に何か問題でもあったら、嫌だと思ったからです」
「なるほど、そういうことですか……」
エルクル様の説明に、私は理解した。
彼は、とても個人的な理由で、ザゼンド様を監視していたのである。
まさか、私のためにそこまでやっているとは驚きだ。それだけ、私に対する思いが強いということなのだろう。
「もちろん、別に略奪愛とか、そういうことを望んでいた訳ではありませんでした。ただ、あなたが幸せになれる確信が欲しかっただけです。結果的に、その期待は裏切られてしまいましたが、今はそれも問題ではありません」
「……少し待って下さい。裏切られたとは、どういうことですか?」
「え? あっ……ああ、まあ、仕方ありませんか」
私は、エルクル様の言葉に少し引っかかっていた。
彼は、私が幸せになれるという確信が欲しかった。しかし、結果的にそれが裏切られたようだ。
ということは、ザゼンド様には、私を幸せにできない理由があったということである。それは、とても気になることだ。
「あなたに言うべきか迷っていましたが、彼はあなた以外の女性と関係を持っています。端的に言えば、浮気していたということです」
「そうだったのですか?」
「ええ、その証拠を色々と集めようとしていた矢先に、婚約破棄があったため、恐らく、彼も何かに感づいて、あなたとの関係を断ち切ったのでしょうね……」
エルクル様が告げられたのは、驚くべき事実だった。
ザゼンド様が浮気していた。それは、とても許せないことである。
彼は、婚約破棄する際、私を散々罵ってきた。しかし、その裏で自分は浮気していたというのは、かなりひどいことではないだろうか。
こうして、私はエルクル様から驚くべき事実を知らされるのだった。
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