第5話 告白されて
私は、エルクル様から告白されていた。
突然の告白に、私は大いに動揺している。恐らく、表情はほとんど変わっていないと思うが、それを彼は察知しているだろう。
「驚いていますよね? わかっています」
「はい……とても、驚いています」
「ええ、そうですね……とりあえず、落ち着くまで待ちます」
「はい……」
私は、一度深呼吸をして、心を落ち着かせる。
とりあえず、一度この体の熱を冷まさなければならない。ここまで動揺するのは、かなり久し振りである。もしかしたら、私の表情に少しくらい変化があるのではないだろうか。
「……」
そう思って、部屋の窓に映る自分を見てみたが、表情にまったく変化はなかった。
どうやら、私の鉄仮面は健在のようだ。
ただ、その鉄仮面越しでも、エルクル様は私の表情がわかるということである。それは、かなりすごいことなのではないだろうか。
「落ち着きましたか?」
「ええ、少し落ち着いてきました」
「そうですか。それは、よかった」
エルクル様は、私が落ち着いた時に、丁度声をかけてきた。
これも、表情でも見ていなければ、わからないことである。やはり、彼は私の表情がわかるのだ。私でもわからない表情の違いを、是非教えて欲しいものである。
「えっと……私は、どうすればいいのでしょうか?」
「そうですね……別に、告白の答えが聞きたいとか、そういうことは思っていませんよ。ただ、事実として受け止めて頂ければいいと思っています」
「そうですか……」
落ち着いた私は、どうすればいいのか悩むことになった。
エルクル様の告白に対して、答えを今すぐに出すことはできない。
そもそも、私とエルクル様は婚約している。答えに関わらず、何れは結婚するのだ。そのため、答えても答えなくても結果は変わらないのである。
ただ、答えを出さないという訳にはいかないだろう。それは、彼に対して、不誠実というものだ。結果が変わらなくても、きちんと答えは出すべきだろう。
「とりあえず……今、思っていることだけを言わせてもらってもいいですか?」
「え? はい、どうぞ」
とりあえず、私は今思っていることを言っておくことにした。
今の私が、エルクル様をどう思っているか。それを告げておくことに、意味がない訳ではないはずだ。
こうして、私はエルクル様に思っていることを言うことにしたのだった。
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