第16話
「ほ、ほぼ生まれたまんまの姿で家の中、ウロチョロすんな...!」
「え、いいじゃん。
今、家には私とシンジしかいないんだし...!」
「もし、弟が急に帰って来たら、
ダメだろ...!友達とか連れてきたら、
ビックリしちゃうだろ...!」
「そうなったらそーなったときで、
何か羽織るもん!キャミの上に何か着るもん..!」
「とりま、お風呂入ったし、
シンジの部屋行くからイチャイチャしよ?」
「いや、俺はそんな気分じゃないっつーか...!」
「なんでー?私はもうやる気満々なのに!」
強引に。俺の部屋に入ってきて。
ベッドに誘導しようとするユーコ
にたじたじだった。
「俺の部屋から出てけよっ!」
陰キャの俺に。
やたらぐいぐいくる義妹な彼女ができ。
この五年後。
俺もユーコも成人式を終えた頃か。
籍を入れたんだが。
実は更にユーコに関しての凄いことがあって。
林ユーコは抜群の美貌と、
運動神経で。
アイドルのオーディションに17歳のときに1発合格しちまって。
その動機が。
俺のお母さんに養子として迎えてもらったことが嬉し過ぎて。
お金を滅茶苦茶稼いで、
俺の母さんに恩返ししたいんだと。
彼女がトップアイドルグループのセンターポジの女になって。
暫くした頃か。
林ユーコの
ほんとの親が、
俺の家に別々に訪ねて来て。
ふざけんなってセリフを吐いた。
「私がお腹を痛めて産んだ子なの。
返してほしい...」
この時は母さんが、
「だー、れが返すもんですか...!」
って言ってやって。
ユーコもそばにいたけど、一切、
ほんとの母親と目を合わせなかった。
更に、ほんとの父親が来たときには。
「ユーコ、あの時はすまなかった。
俺はお前を離れて暮らしてても娘だと思っている...父さんと一緒に住まないか...?」
二人して。
金に困ってるみたいで。
見なりは悪かった。
噂だと、ほんとの父親は会社をリストラされ、
無職で酒とギャンブルに塗れているみたいで。母親の方は、再婚で一緒になった男が何千万って借金をかかえていたんだと。
掌返ししたのは。
ぜってー、ユーコの稼ぐ金目当てだと思った。
ユーコは全くと言っていいほど相手にしなかった。
一切口を聞くことなく。
玄関先でドアを閉めた。
「今更、何よ、私の親は、シンジの
お母さんだけなんだからね..!」
そんなセリフをドアによりかかりながら小さく吐いて。
俺に向かって和やかに微笑み。
「さーて、夕飯の支度しよっ!」
と何事もなかったかのように。
涼しげな顔して、
台所に向かったのでした。
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