第5話 キラキラ

翌日、無我夢中で空港に行き、東京行きの飛行機に乗った。宿泊先なんて決めずに、本当に思いつきで行動した。ただ、DADA RATに会いたい一心で渋谷に移動した。莉沙が自慢してたオレンジ色のコートを羽織って。



開演前。トイレでメイク直しをする。鏡の中には莉沙に瓜二つの私。思わず鏡に水をかける。濡れて、歪んで映る私の顔。

「莉沙はもう居ない。」



DADA RATがステージに登場した。会場の壁全体に、音楽に合わせてアーティスティックな映像が映し出される。ミラーボールがキラキラと光を放ち、回る。私は夢の世界に酔いしれた。体を揺らして、ステップを踏んで。ここでは誰も何も気にしてない。自分が何なのかなんて考える必要も無い。痺れるほど響くシンセ音。キーボードを演奏するDADA RATはテクノカットが乱れるくらいにリズムに乗って、額から汗を流していた。身体が熱くなる。赤、黄色、青、緑、紫と会場の色がパパパッと変わっていく。どんどん、どんどん、世界が変わる。そして私はその世界にずずずと入り込んでいく。



ここから抜け出したくなかった。

ねえ、抜け出したくないよ。

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