第43話 後悔と葛藤
「ふぅー」
俺は安心安全な宿に戻り一息ついた。全く、いきなりギルドマスターの相手は流石に骨が折れるぜ。
だが、どうしたもんかな、ギルドマスターとは良好な関係を築いておきたかったのに、結果的に煽ったようになってしまったからな。
それに、ギルドマスターを敵に回すということはギルドを敵に回すということと同義だ。もしそうなってしまえば依頼を受けれずに生きていくことが不可能になる。
この異世界も悪くはない、というのはこの宿に泊まれるからであって、野宿するのならば話は変わってくる。くそ、どうしたもんかな……
「よし、」
とりあえずは寝よう。マラルルスの狩猟依頼の報酬金は結構貰えたからまだあとかなりの日数ここに滞在できる。その間にこれからの方針を考えるとしよう。
あーあー面倒臭いことになったなー。そもそもあのクソジジイがこんなヘンテコなスキルじゃなくてちょっとした攻撃スキルの一つでもくれたらこんなことにはならなかったのにぃー。
まあ、文句を言っても無駄だから、不貞寝して忘れよう。
❇︎
そう言って不貞寝をしたあの日から約一ヶ月が経とうとしていた。俺は意外と多く報酬金をもらっていたことに驚きつつも、過去の俺から送られてきた問題に頭を悩ませていた。
具体的にはこの街に残って引き続き依頼を受けるか、それともこの街を出て新たな街を探しそこを新たな拠点にするか、という二択だ。
ん、待てよ? この街を出るって実際どこに行くんだ? よくよく考えたらこの街を出たっきり集落を見つけられずに野垂れ死ぬ、なんてことも全然あり得るよな? 現代日本の感覚でいたのだが、ここは異世界なのだ、常識は通用しない、か。
ならば俺の取る選択肢は一つしかない、引き続きあのギルドに行くってことだな。
にしてもそれはそれで気まずいな。なんか日本人が人の目を気にするようになったのもわかる気がする。だって、集落から見放されたら終わりなんだもんな、そりゃ強い奴にゴマするし同調圧力に乗っかる訳だ。
俺がいた日本では逃げるっていう選択肢もあったが、それがないんだもんな。致し方ない部分もあるのだろう。
はあ、どれもこれも俺がギルドマスターを煽らなければよかっただけのことだ。自分に非があるだけに面倒臭いな。
俺は意を決して宿から出て何食わぬ顔をしてギルドに入り、何食わぬ顔をして薬草採取依頼を受注し、冷や汗をかきながら退出した。ふぅ、メンタルは強い方ではないと思うのだが、会社員時代に築き上げられた鉄仮面は今も健在のようだ。
何とか依頼をゲットすることができた俺は、いつものように森へと赴いた。もう薬草採取などお手のものだ。特に何も考えずとも採取できるほどにまで俺は成長した。
ただの機械のように選別して収穫しているのを俯瞰的に見ると人間からロボットへと退化したようにすら思えるが。
そんな俺のセンサーに一つの遺物が検出された。最初はスルーしようと思ったのだが、よく見る異物でもなかったため、意識を奪われ、結果的に改めて鑑定してみる事にした。すると。
▪︎赤竜の紅玉:赤竜の体内で生成される貴重な玉石。火属性の威力を爆発的に上げる触媒として使われる。宝石としての価値も認められているため非常に高値で売買される。
「え、紅玉?」
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