第33話 空中の駆け引き
「専属の冒険者、ですか?」
「うん、そうだよ。もうちょっと簡単に詳しく説明すると、ボクの依頼を何よりも優先して受けて欲しいってことだ。専属の冒険者になったら、その主の依頼を絶対にこなさないといけない代わりに、報酬金が弾むし、身分もその人が保証するから、格も上がるってわけだ」
「な、なるほど」
格云々はどうでもいいが、報酬が増えるのは大きいな。同じ仕事をしてその分報酬が増えるのならば良いに越したことはない。
ただ、デメリットとして、その人の依頼に振り回される、と言うのが考えられる。その専属の依頼に対してどのくらいの優先度で取り組まねばならないのかも気になる。もし、専属だからといって猶予がその日中だとか、三日以内、とか言われると少しいやだよな。
しかもどのくらい依頼を連発されるか分からないし。
「いくつか質問をいいですか?」
「もちろん」
「では、その専属依頼というのはどのくらいの頻度で出すおつもりですか? 流石に毎日は有り得ませんし、三日に一回であっても私はきついと感じてしまいますから、それも話し合いで決めていただけるのでしょうか?」
その質問を投げかけると、相手の雰囲気が、態度が、少し変わったように見えた。気のせいかもしれないが、若干嫌そうだったのだ。
「そうだね、では話し合って決めることにしよう」
「分かりました、ありがとうございます。そして次の質問なんですが、もし私が専属冒険者を辞めたいと思った時にはすぐに辞められるものなんでしょうか? 複雑な手続きや最低勤務日数のようなものはありますでしょうか?」
今度は相手の様子に変化は見受けられなかった。
「それに就いてはまとめて説明できそうだ。まず、契約の仕方としてこの期間の間専属でよろしくお願いします、と言う形で契約するんだ。そしてその期間が終了すれば再度集まって継続するかやめるかの選択ができる。だから最低勤務日数も自分で決めていいし、複雑な手順はないと思って大丈夫だ」
んーでもなんか裏がありそうなんだよなー、この人。俺の本能が専属になるなと言っている。
「最後の質問です、依頼内容は完全に貴方の一任で決定なされる、と言うことで間違い無いですね?」
「ああ、そうだ」
「分かりました、では、今回の話はなしということで。恐らく私は他人の指示に従って働くと言うのがどうも苦手なようで、専属になったところで貴方の満足のいく結果は得られないと思います」
「そ、そうですか、非常に残念です。貴方の薬草を見つける才はとても優れています。だからこそ私の元に来て欲しかったのですが……嫌というなら仕方ありませんね。これからも私の依頼を受けてくださることを願っておりますよ」
男はそう言って俺ににっこりと笑みを浮かべた。
あ、こいつ指名依頼をバンバンするつもりだな。
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