第32話 胡散臭さ
「はい、ここが依頼主様のご自宅になります! ここからは私は同行できないので頑張ってくださいね! では」
え、ここ? 本当にここなのか? 物凄く家がでかいのだが。それと、頑張ってくださいってどういうことだ? やっぱりそれだけ面倒臭いことが待ち受けてるのか?
そういうことだよな、絶対そうだよな?
ガチャ
「あ、」
「やあ、そろそろかと思ってドアを開けてみたらまさかもう着いていたとはね。君がボクの依頼を受けてくれたタロウ君だろ? ささ、中にお入り」
俺が躊躇していると、まさかの内側からドアが開いた。そこから現れた男性は長身長髪の男だった。髪は茶髪で、どこか貴族然としている気がするが、そうじゃない気もする。
まあ、貴族なんて地球ではみたこともないし、漫画やアニメの世界でしかないがな。
「お邪魔しまーす」
俺は恐る恐る部屋に入ると、そこは外側から見た印象となんら変わりない内装が広がっていた。豪華なカーペットにソファ、なんなら使用人までいる始末だ。
部屋の数なんてぱっと見じゃ数え切れないほどあるし、照明は今までみた中で一番煌びやかなものだった。
「ささ、ここに座ってくれ」
そして、応接間のような場所に通され、俺はフッカフカのソファに沈むように座らされた。
「そんなに緊張しなくてもいいんだよ? 別に今から君をとって食べちゃおうなんて考えていないんだから」
目の前の男は俺にそう言った。その顔はとても嘘をついているようには見えない優しげな笑顔で、全身からは善い人オーラがふんだんに溢れ出ている。
……だからこそ怪しいのだ。
俺が元いた世界は、治安こそ良かったものの、そういう表面的な空中戦はハイレベルなものが乱発してたからな。
特に前職ではそれが顕著だった。
そんな俺のセンサーがビンビンに反応してるんだ。何かある、絶対に。
「今日、君を呼んだのは他でもない、お礼がしたかったんだ」
「お、お礼?」
なんか思ってたのと違うな。一体何が狙いなんだ?
「あぁ、そうお礼だ。普通の依頼をこなしてくれただけでなく、最低でも二週間はかかる指名依頼を一週間足らずで仕上げてくれた。しかも全て高品質でね。そんな君に細やかながらお礼ができないかなと思って呼んだのさ」
「なるほど、それで貴方の目的はなんですか? これからも俺に依頼を受けろっていうことですか?」
「ふふふふふ、君は仕事ができるだけじゃなくて頭も切れるようだ」
いや、頭が切れると仕事ができるってほぼ同義なのでは? と思ったが口には出さない。
「そこまでお見通しなら仕方あるまい。そう、ボクは君にボク専属の冒険者になってほしいと思っているんだ」
専属の冒険者??
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