「なぁ、俺、冒険者ギルドに戻りたいんだが、これ、どっちに行けばいいんだ？」

「え、僕に聞かないでくださいよ、そんなの知りませんよ」

「え、お前冒険者ギルド知らないの？」

「え、冒険者ギルドくらい知ってますよ？　冒険者が登録して仕事とかを回してもらう場所ですよね？」

「え、そこまで知ってるのに、なんで方向わかんねーの？」

「え、い、いや、別にただ冒険者ギルドを知識として知っているというわけで実際に行ったことはないですし、そもそもエルフは基本的にギルドには登録しませんよ？」

「え、もしかしてお前方向音痴？」

「はぁ？　違いますよ！　行ったことないからわかんないだけですよ！　エルフは確かに方向感覚に優れている人が多いですけど、かと言って全員が全員そうってわけじゃないですからね！　そもそも方向音痴っていうのは……」

「ん、ってことはお前方向音痴ってことなんだな」

「そ、そうでs……じゃない！　別に僕は方向音痴じゃない！　それだけは断じて認めませんっ！」

　方向音痴に関して何か相当なトラウマでもあったのだろうか？　この少年は頑なに自分が方向音痴であることを認めない。

　もし仮に、本当に過去に何か嫌な思い出があって、彼を傷つることがあっては面倒臭いことになりかねないから、いじるのはここまでにしておこう。

「まあいいや、とにかく俺は冒険者ギルドがあるところに帰りたいんだ。誰か道案内できる人を呼んでくれないか？　最悪方向だけでも教えてもらえればいいから」

「はぁ？　いーやーでーすー！　私を方向音痴と罵った罪は重いですからね！　もう知りません、一人で帰って、そこらへんでのたれ死ねばいいのです！」

　おいおい、酷い仕打ちだな。さっきのがそこまでのことだったか？　まあ、傷ついた側が判断することだろうから別に何も言えないが、流石に、なあ？

「あぁ、そうか分かった。じゃあ、達者でな。またどこかで会う時があればそん時はよろしく。じゃ」

「はいはい、さようなら！　って、え！？　本当に一人で帰るんですか？」

「あぁそうだぞ？　そうするほか無いだろ？　最悪歩いていればどこかには着くだろ」

「いや、まあそうですけど……ここって強力なモンスターがうじゃうじゃいるんですよ？　それでもですか？」

「あぁ、だってそれしか方法がないだろう？」

「はぁ、僕に頼ろうとはならなかったのですか？」

「いや、お前自分で道知らないって言ってたじゃん。それに方向音痴そうだし」

「はぁ？　もういいです！　一人で帰ってください！　そして野垂れ死んで犬の糞にでもなればいいんですよ！　ふーんだ！」

　いや、なら最初から引き止めずに行かせてくれよ。それになぜか罵詈雑言が増えてるし。

　まあ、いいか。よし、帰ろう。

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