第20話 指名依頼
「はい、指名依頼でございます」
「す、すみません。一応、指名依頼についての説明をもらっても良いですかね?」
「はい、かしこまりました。指名依頼というのは、その人個人に宛てられた依頼、というものになりますね。基本的には物凄い実力を持っている方などに多いですが、例外として薬草をたくさん納品してくださった方にも稀にくることがありますね」
……つまり、俺には実力はなく、薬草をたくさん納品したから指名依頼が来たんだよ、ってこの受付の人は言いたんだろうな。
うっセー、そんくらい分かってるわ! つい最近、ギルドに登録したばかりの俺が戦闘に関して実力を認められるわけはないだろ!
って、俺は誰に向かって吠えているのだろうか。目の前の受付の人に吠える必要も勇気もないくせに、誰に吠えているのだろうか。
よし、切り替えよう。まずはこれだけサボって引き困っていた俺に仕事があることに感謝しよう。これで俺はニートではない。
「すみません、その依頼を受けたいのですが……」
「指名依頼を受けてくださるのですか? かしこまりました。では、依頼票を持って参りますね」
ん? なんか思ってた反応と少し違ったな。別に指名依頼って受けられてもギルド的にはそこまで旨みがないように思えるんだが……?
っと、受付の人が戻ってきたな。やばい、顔は満面の笑みなんだけど、なぜかそこに怖さを感じる。どうしてだろう、普通、笑顔って綺麗なもののはずなのに。
「いやータロウ様ありがとうございます! この指名依頼の依頼主様はギルドも少しお世話になっておりましてね、この依頼を無下にすることはできないのですが、少しばかりそのなんといいますか、そのー」
ん、どうした急に歯切れ悪いぞ? さっきまで俺が聞きたそうなこと全部喋ってくれそうだったのにな? もしかして、その依頼主が関係しているのか?
「と、とにかく、この依頼票を見てください! 話はそれからです!」
急に意を決したようにそう言われ、俺は見せられるがままにその依頼票を見た。そして、そこに書いてある内容に驚愕した。
「や、薬草千本の納品!!??」
「は、はいそうなんです……このギルドもお世話になっている方が錬金術師の方でして、とにかく薬草が必要だからと、それの一点張りで、薬草を見つけることができる冒険者にはこの依頼を出しているのですが、タロウ様が初めての依頼を受けた人になります」
まじかよ、俺の実力云々とか以前にただ薬草を見つけられたから指名されただけなのかよ。それに今までもたくさん指名されてきたらしい。なんだよ、特別感台無しじゃねーかよ。
「すいません、他に薬草採取の依頼ってないですかね……?」
「すみません、以前タロウ様が多く納品してくださったので、最近は全くありませんね……」
く、くそー。こうなったら薬草千本採取、受けるしかねーじゃんんか!
だ、だって俺、野宿だけは絶対にしたくないもん。
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