アシュタルテと地底の迷宮
ヤマモト マルタ
序章
序章 (1)
百人に満たない行列が、ぞろぞろと
「もうすぐ出口でしょうか?」
行列の先頭では守護兵のティンが
「ああ……この先でガルアンの谷に通じている」
ティンの後ろにいるラヴァ国の王太子スーリャが、沈んだ声で答えた。
スーリャは背の高い二十歳の青年で、大きな瞳の整った顔を肩まである
常であれば王子が危険な先頭に立つことはあり得ない。だが王城の地下に拡がる迷路の抜け方を知っているのは、王太子である彼だけだった。入り組んだ石畳の通路を抜け、ようやく出口に繋がる天然の洞窟に辿り着いていた。深夜の奇襲から、おそらく今はもう夜が明けているはずだ。
王子の両脇に守護兵、後ろには侍女のマニーがいた。
彼らの斜め後ろ、行列から少し離れて、王子専属の護衛アシュタルテは周囲を見回した。磨いた銅のようなツヤのある
「離れるな、アシュタルテ」
振り向いたスーリャ王子の顔も白い。ラヴァは大陸の南東にある熱帯の小国で、その住民のほとんどは褐色の肌をしている。ただ王族だけが、青みのある白い肌をしていた。
「そばにいてくれないと不安になる」
普段一切弱音を吐くことのない王子の意外な言葉に、
「守りやすい位置に下がっただけだ。私はおまえを守る。そういう契約だ」
答えるアシュタルテの声は、低く落ち着いていた。
何かに気付いたのか、先頭のティンが立ち止まる。
「伏せろ、ティン!」
アシュタルテが鋭い声を発して前方に跳ねた。
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