千本桜

サイキック

第1話

※この物語はフィクションです。実在する人物、団体とは関係ありません



1999年突如少年少女達に特殊な力に目覚めた。そんな特殊な力はいつしか能力と呼ばれた。そんな能力を国自体が利用するようになった。それは日本も同じだった。そしてその能力者を育成するための学園がある。そんな能力者育成学園の話である。

2020年4月

日本国立陸風能力高等軍事学校にて

「どうやら今年はNO力者がいるようだね。」

私は専属の秘書に尋ねる。

「はい。1人だけ。」

私は自分と同じNO力者がこの学校に来ると聞いてワクワクしていた。それはきっと幼い頃に両親に新しいおもちゃを買ってもらった時ぐらいにはワクワクしていた

「お手並み拝見だね。」

私は自分のスーツの上を取り袖に腕を通して体育館へとあゆみ始める。

私は何回目かも分からない廊下をあゆむ。本当に今年の新入生達には期待しかない。

そんなこんなで体育館の扉の前まで来て居た。

私は扉を開きステージに真っ直ぐに行く。どうやらもう新入生は全員来ているようだ。

「皆さんこんにちは。私はこの日本国立陸風高等軍事学校の校長の陸奥広無です。皆さんはほとんどの方が能力持ちでしょう。実は私残念な事に無能力者なんです。」

私がそう言うとざわざわと新入生達は騒ぎ始めた。一方で上級生の方を見るとまた今年もかと言うような目で私のことを見ていた。

「そうですね。私に勝てると思う能力者さんは前に出てきて貰えますか?」

私がそう言うと数名の生徒がでてきた。

「では軽いルールを説明させてもらいます。

1武器は使っても良い。ただ殺傷能力はないものを使用する。

2能力を使って良い。

3降参、気絶と言うまでやり合う。

1の殺傷能力が無い武器は今私が渡します。全員まとめてかかってきてください。」

私は簡単なルール説明をして武器を見せる。各々が自分の好きな武器を手に取った。

「さぁ始めましょう。」

この言葉を合図に新入生達は動き出す。私とやろうとしてるのは4人。

一人はパーカーにジーンズというラフな格好の少年。その子よりも少し身長の高いスーツをきっちりと来た少年。その後ろにいるのがタンクトップにミニスカという格好の少女。上下ジャージを履いた低身長の少女だった。

能力には大きくわけて3つある。

炎、水、土、風などを自由に使える属性系。

身体強化などの強化系。

それ以外の概念系。

そんな世界の常識をおさらいしている間に彼らがしかけてきた。

まず最初にパーカー少年が私に向かって炎を放ってくる。火力は高いようだが当たらなければどうということはないようなタイプの炎弾だ。私はこれを避ける。避けた先に土属性のゴーレムがいた。どうやらミニスカ少女の能力ようだ。私はこれと力比べをして少しだけ身体が浮いたところに銃弾を放った。簡単にゴーレムは倒れて行った。ミニスカ少女はぐぬぬと言っていた。

スーツ少年は何も動いてこない。味方強化の概念系だろう。

ならば問題となるのはジャージ少女だ。もしこれで彼女がめんどくさい概念系であろうならば私はもう無理だ。概念系じゃない可能性にかけるしかないな。私はそんなことを考えながらもゴーレムと炎弾を交わしていた。しかし少し炎弾を避けるのに失敗した時ジャージ少女が動き出した。すると私の後ろに周り蹴りを決めに来た。私はそれを左手で受け、軽く蹴りを入れる。ジャージ少女はぐはっといい倒れる。ジャージ少女が降参と言った。これ以上私とやるのは分が悪いと考えたようだ。

それ以外の子達もジャージ少女の降参をきに次々降参して言った。

「あのー俺は一体一で陸奥校長とやり合いたいんですが?」

そこに居たのは今年の新入生無能力者の風早鎧亜だった。

「実は俺も無能力者なんですけどいいですかね?」

鎧亜の言葉に周囲の新入生達がまたもざわつく。

「良いですよ。ですが一人で大丈夫ですか?」

私は笑顔で鎧亜に問う。彼はその言葉を聞いて笑顔を浮かべながらこう言った。

「大丈夫です。能力者さん達は俺らの事を嫌っているようですからね。」

彼の指す俺らの中には私も入っているのだろう。

「仕方ありませんね。さっきと同じルールでいいですね?」

鎧亜は頷く。この頷きで戦闘が始まった。先に動いたのは鎧亜だった。

鎧亜は一気に私との距離を詰め飛びながら回し蹴りを繰り出す。それを私はらくらく交わし顔目掛けてグーパンを放つ。これを鎧亜は交わす。しかし鎧亜は空中で私のグーパンを交わしたことによって着地に失敗した。そこに生じた一瞬の隙を逃さず蹴りを入れる。だがこれも交わされる。分が悪いと鎧亜判断したのか距離をとる。無能力者が距離をとって出来ることは特にない。正直無意味な行動だ。先程この少年は武器をとっていない。これが遠距離武器を持っていたのならばこの距離のとり方はいい行動なのだがな。そんな事を私が思考していると彼は私に銃弾を放ってきた。どうやら彼は銃を隠し持っていたようだ。銃弾を交わしてこう言う。

「それは殺傷能力はないんですよね?」

彼は少しニヤッと笑って

「俺の殺意によって変わるので俺は知らないですね。今の火力は。安心してください。弾は6発しかないので。」

彼は化け物級の武器を持ち出していたよだ。会話をしながらも銃を2発撃っていた。これで3発だ。1発目を交わす。2発目が死角から飛んで来る。これもなんとか交わす。残り3発。彼はここで距離を詰めてくる。彼は飛び蹴りをする。私はこれを回避する。回避して安心した所に彼は銃弾を放ってくる。これもなんとか交わす。銃弾は4発放っているから残り2発だ。私は剣を抜く。

「私も武器を使わせてもらいますよ。」

先程の子達には見せなかった私の愛武器。私が学生の頃から使い込んでいた手になじんだ武器である。私はそう言うと彼との距離を詰める。そこで私は上段から下段目掛けて剣を振り下ろす。彼はこれを銃で受け止めた。距離を詰めた私に彼は銃弾を2発連続で放った。1発を何とか受け止めるがもう1発をくらってしまった。彼に敵意は少ししかなかったので私の傷は浅かった。

「君はもう銃弾を全て使った降参したらどうだい?」

「あなたも分かるでしょう。俺ら無能力者は諦めが悪いことぐらい。」

確かにそうだ。私もその諦めの悪さでここまで登り詰めたのだ。

「そうだね。」

私がそう言うと彼は右ジャブからの左ストレートを狙ってくる。私はそれを受け止める。直ぐに彼は次の攻撃を繰り出す。ジャブ3発からのアッパーだ。私はこれを交わす。私は交わしたあと少し体勢が崩れた。彼はそこを見逃さず銃弾を撃ってくる。

どうやら彼の最初の6発というのはブラフのようだ。私はその弾もなんとかかわし彼の首めがけ手刀を繰り出す。これを彼は手で受け止めるが無理な体勢をとってしまう。そこに生じた隙に私は一気に攻める。剣を右左左右と連続で突き出す。私のスピードについてこられなくなった彼は後ろに交代するも体勢を崩しこけた。私は転けた彼に馬乗りになり心臓に剣を当てこう言った。

「降参するかい?」

「ここまでやったのになー。降参です。」

彼の降参でこの戦いの幕は閉じた。彼は私の期待を裏切らなかった。1年生にして私に剣を抜かせた、それ自体がすごいことなのである。それを知っている上級生達の間ではざわめきが起きていた。

体育館での入学式が終わり俺達新入生は各々の教室に連れていかれた。

教室に入った生徒全員が席に着いたら黒板側のドアが開いた。そこから入ってきたのはスーツを着た男性だった。その男性はスーツの上からでもわかるほどに筋肉が引き締まっており、見た目からしても強そうである。

「この1年A組の担任の坂田冬夜だ。能力は身体強化だ。さぁ自己紹介を出席番号1番から名乗ってもらおうかな。名前と能力の公開。では1番」

坂田先生がそう言うと1番のやつが元気よく返事をした。

「名前は天谷聖菜。能力は光の属性系です。あんまり強くは無いのでよろしくお願いします。」

そこに立っていたのは金髪のショートヘアーの少女だった。光属性か。確か暗闇を照らせる。後は使い魔の一層だったか。光属性は対闇性能が高いがそれ以外は特にないというのが俺の印象だった。少し聖菜さんが光属性をどのように使うのか少し興味が沸いた。

「碇透。能力は水属性。そこそこ強いと思いたい。」

少し目が隠れるくらいの青髪が伸びている少年だった。2連続で属性系のようだ。次は結構な王道の属性が来たなと俺は思った。あと透君の『思いたい。』という言葉に少し違和感を感じた。

「狗時。時間を操る能力。漫画とかではそこそこ強いけど僕は強くない。」

時くんは透くんとは正反対の髪がさっぱりとした坊主の少年だった。ここで概念系か。確かに漫画などでは時間操作系の能力は強い。しかし彼が弱いということはまだ能力が未発達ということだろうか。1度でいいからやってみたいなと俺は思った。

「織田花梨。能力は植物を扱う能力。拘束とかできるから気をつけてね。」

花梨さんは黒髪ロングの少女だった。花梨さんは笑いながら言った。正直僕は今彼女に少し恐怖を覚えた。

「斎藤龍星。身体能力。なんかこのクラスだと珍しい感じ?5人目でやっと身体能力系が出てくるのだから。」

龍星くんはそこまで髪は長くはない。意外と高身長の男子だ。能力に関しては龍星くんが言ってる通りだ。

「酒井真美。風の属性系。弱い。」

真美さんは少し身長の低い少女だ。風能力か。弱いのかな。

「終界影狼。狼化。神話級ですよろしくお願いします。」

少し銀髪が混じったし高身長の少年だ。そして彼は神話級と言った。確か概念系の中で神話の神や悪魔などの能力のこと。強い。ただそれか言いようがない。

「新海智樹。透明化。複数人の透明化が可能。」

少し平均身長より小さな少年だ。そして透明化ってのはそこそこ強い気がする。

「滝川菜奈。銃の軌道を変えられる。」

筋肉の着いた少し大きめの少女だ。そして俺は銃の起動を変えられるという言葉に少し引っかかった。

「田辺炎舞。炎の属性系。」

炎舞くんは赤髪の低身長の少年だ。炎の属性系か。結構多い能力だったな。

「富山麻耶。空間作成能力。」

麻耶さんは少し茶髪の入った少女だ。空間作成か。概念系の中でも空間系は珍しい能力だったよな。

「七原進太郎。空間と空間を繋げる能力。ワープだと思ってくれればいい。」

少し短めの髪の高身長の少年だ。空間系か。珍しいはずだよな。

「二宮春。蝶を操る能力。実践向きではない。でも伝達とかは任せて欲しい。」

春さんはピンク髪ロングの平均身長よりかは少し高い少女だ。蝶を操るか。戦いに役立てる方法は中々思いつかないな。

どうやら俺の番が来たようだ。

「早風鎧亜。無能力者なので優しくしてください。」

俺の無能力者という言葉にみんな反応したようだ。『無能かよ。』とか『雑魚か。』とか聞こえてきた。こっわ。能力者怖。なんかもう襲いかかってきそうなんだが。

「不動剣。8つの属性付与された武器を扱える能力。」

剣くんは黒髪の高身長の少年だ。8つの属性付与武器は普通に強いと思う。多分規格外の強さ。基本的に自分のあった属性しか扱えない。けど剣くんは8属性を操れると言っていた。

「穂坂莉々。身体能力。」

莉々さんは銀髪のショートの少女だ。

「万燈紬。風の属性系。」

紬さんは黒髪で少し長めの髪の少女だ。風の属性系は2人目だな。まぁ属性系が被るのは仕方ないか。

「桃山力哉。身体能力。」

力哉くんは坊主の低身長の少年だ。

「山田葵。能力は物質に生命を与える能力。」

葵さんは翡翠色の髪のロングの少女だ。

「龍宮俊介。土の属性系。」

俊介くんは少し太った少年だ。

これで全員の自己紹介が終わった。すると坂田先生が口を開いた。

「この後は全員の模擬戦だ。1Aの体育館は開ける。そこで各々気になった相手と戦ってくれ。」

坂田先生の言葉にみんなが『はい』と返事をする。

そして俺達は体育館に向かった。この学校は空間系の能力で体育館が幾つもある。基本的には1クラスに1つの体育館が与えられる。

もう体育館に着いたようだ。意外と教室と近いところにあるんだなと俺は思った。

俺が体育館に入ると

「おい無能。俺とやりあえ。」

と炎舞くんに声をかけられた。どうやら俺の事を見下しているようだ。俺は少し弱気に

「いいよ」

と答えた。皆は俺の返事に笑っていた。ほんと無能力者だからといってこの扱いは酷いと思う。でも仕方ないのかな。多分みんな俺よりは強いのだし。

「俺が審判をやろう。」

いつから居たのか分からない坂田先生がそう言う。さてはこの人後ろ取るの得意だなと俺は思いながら

「お願いします。」

と答えた。

「では初め。」

坂田先生の言葉で俺と炎舞くんは一緒に動き出した。俺は彼との距離を詰めようする。詰めている間に彼が炎弾を打ってくる。これを俺はかわす。俺のリーチに入ったからジャブを3発これを彼は軽くかわす。反撃と言わんばかりに炎弾を放ってくる。俺は右足に軸足にし、回転する。回転する勢いで左足で回し蹴りを繰り出す。彼の顔面を捉えたかと思ったがこれを彼は剣で受け止めた。武器使うんだ。これ俺も使っていいよね。まぁいいや。とりあえずここは体術だけで何とかしよう。

「宿れ」

彼はそう言うと剣で斬りかかってくる。上段から中段へ剣を振り下ろす。俺はバックステップでこれを交わす。続いて彼は中段から上段へ切り上げる。これもバックステップでかわす。少し距離が空いたので彼が距離を詰めてくる。剣を横で持ちながらこちらに走ってくる。俺の横を通り過ぎようとした時に彼は剣を半回転させ俺に攻撃してくる。俺はこれをしゃがんでかわす。

「熱っ!」

思わず声が漏れてしまった。どうやら属性を剣に付与しているようだ。少しだけリーチが長くなるのか気をつけないとな。まぁいい。俺は彼の背中を取っているようだ。俺は背中を1発、2発、3発と殴る。

「そこまで。」

坂田先生の試合終了の合図だ。

「無能が俺に…。いや先生まだ続けないと。」

炎舞くんが先生に抗議する。しかし先生は

「駄目だ。お前はこいつに負けた。」

と言った。他の生徒がざわついてるのが聞こえた。ここまで騒ぎになるとは思わなかったんだがな。仕方ないのかな。多分炎舞くんはこのクラスでもそこそこ強い方にいる能力者だ。そんな能力者を無能力者が倒したのだから。なんて俺が考えていたら誰かが

「鎧亜くん。僕ともやってよ。」

と発していた。俺は声の主の方をむく。そこに居たのは影狼くんだった。ちょっと待って君確か神話級だよね。なんで俺なんかとやり合おうとしてるの?俺が戸惑っていると影狼くんが

「やるの?やらないの?もしかして僕が神話級だからビビってるとかないよね。まぁ無能力者だもんね。勝てない相手とは戦わないのか。」

なんて言ってきた。煽られてるのか。これは。そこまで言われたら流石に引けないよな。

「いいよ。やろう。影狼くん。」

俺がそう言うと坂田先生が

「それでは始め。」

彼の能力は狼化だからここで距離を詰めるのはなしだ。俺は銃を取出す。そして少しズラして彼に向かって1発発砲する。彼はこの銃弾をその場で交わした。そして彼は俺との距離を詰めてきた。俺に向かって蹴りをする。

体術は俺の方が上だ。しかし彼がまだ能力を発動していないのが少し気になる。

詰められてしまったので俺も体術で交戦する。彼のみぞおちあたりを殴る。しかし俺の拳は空を切った。かわされたようだ。これは少し後ろに下がっているため俺の攻撃は当たらない。だが彼の攻撃もあたらないような距離だ。多分詰めてくるだろう。俺の予想通り彼は詰めてきた。しかも人間には出せないようなスピードでだ。彼は俺を殴ってくるが俺はこれをかわす。前方に居たはずの彼はどこかに行っていた。

「そこまで」

坂田先生がそう言った。彼はどこに行った。なぜ終了の合図だ?俺は辺りを見回す。彼は俺の後ろにいた。

「いつそこに?」

俺は彼に聞いた。

「さっき。僕が君を殴ったと見せかけた時。」

彼の言葉に俺は引っかかった。見せかけたというのはどういうことなんだろうか。

「いい勝負だったよ。ありがとう。」

「こちらこそ。」

俺は彼にそう言った。その日は結局他の生徒達と一対一の戦闘をさせられた。。今日負けたのは影狼くん含め3人だ。残り2人は剣くんと坂田先生だ。なんで先生ともやったかと言うと先生が全員の力を知っておかないと言うからやった。負けたよ。先生の身体能力は以上だよ。寮に行った。この学校は寮がある。寮と自宅はどちらでもいいのだが俺は寮を選んだ。

寮の部屋に行くと見知った顔がいた。

「最後の同居人は君か。」

「嫌かい?影狼くん。」

俺は彼にそう言う。影狼くんの隣には剣くんがいた。俺の同居人は彼らのようだ。正直俺を負かせた2人と同居は少し気まずいな。そんな俺の心を悟ったのか剣くんが口を開いた。

「リラックスしていいよ。君も普通に強いから。」

そうなのかな。確かに3人にしか負けていないが彼らに負けたのは事実だから。リラックスしていいと言われたし普段の生活をさせてもらおうかな。

「君はなんであんな物騒な武器使ってるの?」

剣くんの言う物騒な武器というのは多分あの拳銃だ。これについて話すと俺の過去の話をしないといけない。自分の過去の話をするのはいやだ。あんなみっともない過去知られたくない。

「形見かな。一応」

軽く嘘を言って誤魔化す。

「形見かぁ。ごめん悪いこと聞いたね。」

剣くんが謝ってくる。謝るのはこっちだけどね。嘘で騙したのだから。

「嘘だね。今鎧亜くんは人間が嘘をつく時の典型的な動きをした。」

影狼くんがそう言う。俺はここで察した。こいつの前で嘘をつくのは無理と。

「いいよ。僕にも話したくない過去があるからね。」

彼は言う。そんなんなら俺の嘘に触れなければ良かったのにと思う。多分影狼くんは嘘というものが嫌いなのだろう。なんとなくだがそんなに気がした。

「やぁやぁこんにちは。」

俺の目の前にモヤがかかった何かがそこにいた。シルエットの形からかろうじて人間だと理解した俺はそいつに挨拶を返す。

「こんにちは。誰だお前?」

彼は俺の問いに悩むような仕草をする。彼が少し悩んで

「私は君の、いや世界の運命を……」

俺はそこで目が覚める。正直どんな夢を見ていたか覚えていない。ただわかるのは俺が大量の汗をかく程の夢だったのだと。

「おはよう。凄い汗だね。」

先に起きていた剣くんがそう言ってくる。とりあえず「おはよう」とだけ返して辺りを見回す。どうやら影狼くんは寝ているようだ。

俺らは学校に行く準備をする。準備が一通り終わった俺らは影狼くんを叩き起す。

「起きろー。朝だぞ。」

なかなか起きない。彼から布団を取り上げる。やっと影狼くんは目を覚ました。

「おはよう。今何時だ?」

俺らは口を揃えて言う。

「「5時!」」

影狼くんは少しキレ気味に

「いやはえーよ!」

と突っ込んだ。俺らは4時に起きていたのだ。俺は朝に鍛錬をするためにこの時間にいつも起きるのだ。それはきっと剣くんも一緒だろう。彼は8つの武器をそれぞれ扱うために多くの鍛錬を積んでいるだろう。

「で何するの。流石に考え無しにお前らこんな時間に起きたわけじゃないよな。」

何を言っているのだ。こいつは。

「「鍛錬に決まってるじゃないか。」」

またも剣くんとハモる。もしかして気が合うのか。

「鍛錬な。ちょっと準備をする。」

ちょっと準備をするといってジャージを着て出てきた。そして俺達は中庭に出ていく。

「とりあえず俺ら対影狼くんでいい?」

俺は影狼くんに聞く。彼は「はっ?」と声を出していたがもう俺らは戦闘態勢に入っていた。彼は呆れながらも構えてくれる。

とりあえず俺は彼に怒涛の連撃を繰り出す。彼はこれら難なく交わすが交わした所に的を絞っていた剣くんが弓を放つ。これを無理にかわそうとして体制を崩した所を俺が殴り掛かる。今回は前回の試合とは別に俺の拳は彼の体に当たった。

「ほんとお前ら息合いすぎて怖いんだが」

彼がそんな事を呟くのだった。

そんなこんなで朝の鍛錬が終わり俺らは登校した。

「来週に体育祭がある。体育祭と言ってもクラス対クラスの模擬戦だ。これのルールはこのルールブックを見てほしい。」

坂田先生は山積みになった本を指さす。見るからにそこそこ分厚い本だった。

ルールブックの内容をまとめるとこうだ。

1能力の使用は可

2会場は校内の特別な空間を使う

3その空間内では死なない。

4武器の持参

5戦闘の映像は公開する。

6トーナメント制で敗者復活トーナメントがある。敗者復活は2クラス。

7制限時間は1時間。勝利条件は相手クラスの全滅もしくはタイムアップ時に敵クラスより多くの人が生き残っている。

8計5日で全てのトーナメントを終了する。

これ以外は特に重要なルールはなかった。何故あれだけ分厚かったかと言うと前半ほとんどは謎の物語だった。この物語を要約すると俺らの能力は彼らに勝つために悪魔と契約して得たものだという。

「先生この謎の物語はなんですか。」

瀧川さんが先生に問いかける。先生は少し困った顔して

「実はそれ校長の好きな物語らしい。毎年毎年その物語が冒頭に入るんだ。 」

うーん。あの校長が毎年しかも全校生徒の目に入るところに無駄なものを入れる理由なんてないと思うんだがな。まぁ本当に自分の好きな物語を俺らに勧めてるのかもな。俺がそんな事を考えているとあっという間にホームルームが終わった。

そして何故か俺の悪口が聞こえる。しかも俺に聞こえる声で。まぁ基本的には無能がとかイキりやがってとかなのだが中には昨日の試合は剣くんと影狼くんの手を使ったイカサマなんてのも聞こえた。なるほどほぼ初対面の奴らが意気投合してる。俺の悪口で。まぁなら団結力を高めてもらうか。俺は影狼くんにメールを入れる。

鎧亜くんからメールが来る。僕はそれを確認する。内容は体育祭を仕切って欲しい。しかし裏で彼が指示を出すとの事。学校では鎧亜くんの悪口を言って欲しいとの事だ。まぁ僕も鈍感では無いので気づいてはいた。このクラスの皆が鎧亜くんの悪口で意気投合してるという事は。多分体育祭までだし大丈夫だろう。そして僕は彼に了承のメールを送るのだった。

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