カモフラージュの恋人

ゆめみつきまいむ

第1話 失恋は桜の木の下で

「純ちゃん、貴女の好きとわたしの好きは違うみたい…。」

 大泉さんは、困ったような顔をしながらそう言って、うちを見た。長い黒髪に、切れ長の瞳。学校では、クールビューティーと呼ばれているくらい綺麗な女の子や。

 うちは中学生の頃から、ずっと彼女が好きやった。同じ高校を受験する事を知り、頑張って勉強した。合格した時は、抱き合って喜んで、どれだけドキドキした事か。彼女と同じクラスにはなれなかったけど、近くにいられるというだけで、嬉しかった。これから始まる高校生活が楽しみだった。でもうちは、その気持ちを隠して、今日まで過ごしてきた。女の子が女の子を好きなんて、きっと受付ないと思ったから。

 他の女の子達と同じのりで、さり気なく好きと言ったつもりだったのに。どうしよう…。もしかして、うちの本当の気持ちが、ばれたのかな。

 「いや、うちは別に、変な意味で、好きと言ったんじゃないで。」

 うちは誤魔化そうとして、必死に話しだす。

 だけど大泉さんは、なにもかも見透かしているように、そのクールな瞳をそっと細めて言った。

 「悪いけれど、ごめんね。」

 降りしきる桜吹雪の中に、彼女の姿が、遠ざかる。うちは追いかける事もできずに、その後姿を見ていた。こんな素敵な春の日に、気持ちがバレて振られるなんて。同じクラスになれなくて、がっかりしてたけれど、よかったかもしれない…いろんな想いが交差し、涙が溢れ出して止まらない。その時、後ろからガサッと物音がしたから慌てて振り向いた。

 「えっと…。ごめん!!いまの話、偶然聞いてもうたっ!!」

 そこにいたのは、丸い瞳を大きく見開いた男子。同じ学校で、クラスメイトになったばかりの松山憲武君だった。

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