手に入らない愛だからこそ
仲仁へび(旧:離久)
第1話
愛してほしい。
愛してほしい。
こっちを見て、私に愛をささやいてほしい。
けれど、望遠鏡越しの貴方はいつも、私ではない何かを見て、誰かを見ている。
片思い、恋焦がれ。
焦がれすぎたから、心が焦げついていく。
けれど焦げついた分だけ、思いは強くなる。
育った愛の大きさに私は涙を流し、歓喜する。
遠くから思うからかこそ、手に入らなかった時間が長いからこそ、ここまで愛情が育った。
愛は洗練される。
想いは膨れ、進化し、気品を孕み、尊さを身に着ける。
私にとっての愛は絶対。
唯一無二。
正義。
神。
私は望遠鏡から視線を外して、貴方の元へ駆け出していく。
だって、部屋のテレビが愛をつぶやいたんだもの。
愛をもって伝えられたのなら、私もそれに愛でこたえなくちゃ。
「部屋にひきこもっていないで、若者はもっと外に出るべきなのです。それが――の愛情」
そうね。
馬鹿らしい。
「伝えたい事は言葉にしないと伝わりません。貴方の気持ちをメッセージカードに記しましょう。――へ愛を込めたサプライズに」
ええ、その通り。
「――への愛は、触れ合う事で親近感を抱いてくれるかもしれません。これが恋のテクニックです!」
やっぱり、こんな風に遠くから見つめるんじゃなくて、現実で触れ合って、言葉を交わすべき。
私を見て。
私を愛して。
この私だけを。
貴方は私を見て驚いた。
「やめろ、来るな! 次に俺の前に出てきたら警察呼ぶっていっただろ!」
手に入らない愛だからこそ 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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