第24話 みみみみコンサート

「すごいところですね。こんなところがあったなんて、私知りませんでした。かわいい……」

 いや、キューピッドもか。

 彼女がうっとりと見つめている先にいるのは、猫耳としっぽをはやしているメイドさんだ。

 キューピッドは見た目は物静かで大人な雰囲気のお姉さんっぽいのに、中身はルドルフやダッシャーとそう変わらないのかもしれない。


 メニューが運ばれてくると三人のテンションはさらにあがった。

 ぴよぴよなんちゃらがオムライスで、ふわふわなんとかが犬の形をしたホットケーキで、にゃんにゃんにゃにゃーん、にゃんにゃんにゃにゃーん、なーいてばかりいる子猫ちゃん♪ 

 犬のおまわりさんが駆けつけそうな名前の代物は、ネコの顔を模したバニラのパフェだった。

 あ、俺のは普通の、どこに魔女要素あったの? 

 ってくらい普通のブラックコーヒーが運ばれてきた。


 ちなみに、これらを運んできてくれたのはキューピッドがガン見してた猫耳のメイドさんだった。

 全ての注文品をテーブルに置き「萌え萌えなんとか」とか、「ぴよぴよぴっぴ」だとか、「にゃんにゃんにゃー」とか、謎の呪文を降りかけたりケチャップやチョコソースでお絵かきして、笑顔で立ち去ろうとしたメイドさんをキューピッドが引き留めた。

「あ、あ、あの、お願いが、あるのですが……」

「はい。なんでしょう?」

 キューピッドのお願いとはこれいかに? 

 コーヒーを啜りながら続きの言葉を待っていると、、突然ピコピコした電子音が流れ始めた。

「おかえりなさいませ! ご主人様、お嬢様! 『みみみみコンサート』はっじまるよぉ~~~~~~!」

 店内が薄暗くなり、代わりにライトが灯ったのは店の奥に設置されていたステージだった。

 かけ声と共にぞろぞろと現れたのは五人のメイドさん達だ。

 お客さんから歓声があがり、そのまま一曲目がはじまる。

 猫耳、犬耳、うさ耳、羊耳。なるほど耳だらけだから、みみみみなのか。

 そして、あれはまさしく――――――。


「ダンサー!!!」


 特徴的な角と耳。

 まさしく、トナカイメイドさん。


 ルドルフとダッシャーとキューピッド、三人が立ち上がる。

 あ、やっぱり、あの子がそうなの? っていうか君達今の今までメイド喫茶の雰囲気に呑まれて、本来の目的忘れてたよね。

 俺はコーヒーを啜りながら、ステージ上で歌って踊る四人目のトナカイを見つめた。


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