救済勇者の活動計画

花道優曇華

第1章「巨大な鯨の鳴き声」

第1話「国王勇者」

グランディア連邦国の現在の王は人間で既に90歳近く生きている。

今は寝たきりで死の一歩手前でレイチェル・ハートを呼び出した。


「お前を…次の国王に任命する」


それが国王の死ぬ前、最後の言葉…遺言になった。

国王の葬儀。


「あの子が新たな勇者か。なんだか可愛らしいな」

「そうね、可愛いというか私は凛としている感じがするわ」


国民たちの小声の話は耳に入っている。顔には出さないがレイチェルは

照れていた。国王に仕えていたダンピーラの男は葬儀の片付けも率先して

行っていた。


「あの、私にも手伝えることないかな?」

「大丈夫です。レイチェル様はどうぞ、ごゆっくりしていてください」


丁重に断られてしまった。運ぶものが多いようで男衆が片付けに参加している。


「レイチェル様、こちらに」

「シュカちゃん」


桃色の髪をした鬼人の少女シュカに案内されて別室に来た。そこには既にお茶と

茶菓子が用意されていた。


「スカーレットは貴方の事を思っているからこそ、あんな言葉を掛けたのです」

「スカーレットって言うんだね。なんだかピッタリな名前、それって紅色の事を

意味するんだよ」

「はい。国王様もそう言っておられました」


シュカはそう答える。小国だった人間の国がグランディアの前身。そこに自然と

魔物たちも集まって今に至っているのだという。そんな歴史があったのか…。

勇者と魔王、そこには因果関係があるらしい。何かしらの繋がり、という風に考えてくれると分かりやすいかもしれない。


「レイチェル様にも今は分かりませんが、強いつながりのある魔王様がいるかも

しれませんね」

「うん、その魔王とも仲良くなれればいいなぁ…だって戦うことが全てじゃない

でしょ?魔王だって、全員が根っからの悪人だとは思えないし」


仲良く話していると一つの咳払いが聞こえた。扉の前に立っていたのは

スカーレットだ。赤紫色の眼はジッとレイチェルの瞳を見据えていた。

威嚇ではない。彼は既にレイチェルを自身の主であると認めている。

ただ一言、彼はレイチェルについてきてくださいと告げた。

彼の後ろを歩き、十分ほどで大きな屋敷に辿り着いた。ここの国王、いい意味で

欲が薄いので城でなくてこういった屋敷で充分だと言っていたらしい。


「このようになっておりますが、如何ですか」

「す…凄いっ!!」


レイチェルの自室には水色の壁紙が張られ青いカーテンがある。自分から青色が好きだと言った覚えは無いが彼が考えてこの色合いを選んだらしい。究極に仕事が出来る

使用人だと思った。

別室は白いテーブルクロスが敷かれたテーブルがあり、そこで全員で食事がとれる。

会議もできるだろう。


「じゃあこれからここに住むことになるんだね。迷惑を掛けるだろうけど

よろしくね」

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