雨との思い出を。

七吉クラゲ🍨

その日は雨だった。

いつものように寮を出て学校へ行き、ただ何も変わらない日々を過ごしていた。それこそが私の幸せだった。


「リゼ様、少しよろしくて?」


クラスのリーダー的存在、ユリ様。ユリ様が何故平凡な私に?そう思いながらリゼは、ユリとその取り巻きに連れられるまま学園の裏庭にたどり着いた。裏庭には屋根がある。普通にしていれば雨に濡れることはない。


「リゼ様。単刀直入に言いますわ。」


ユリは目を見開いて言った。

リゼもそんな彼女を見て固まってしまう。


「私に、あなたの婚約者であるハイト様を譲って頂けませんか!」


この世界の貴族の令嬢ならば。少なくともこの学園に通っているならば、必ず婚約者がいる。

そしてユリ様はリゼの婚約者、ハイト様を好きになってしまったのだ。


「ユリ様、申し訳にくいのですが、婚約破棄をしなくてはいけないならばそれは私の意思でどうにかなる訳ではございませんし、ユリ様の婚約者様はどうするおつもりですか?」


リゼの鋭い眼差しにユリは戸惑っていた。


「それ、は、。」


戸惑っているユリを助けるがごとく取り巻きが喋り出す。


「そんなのユリ様の地位で何とかなります。

あなたの意見が聞きたいのです。」


優しい眼差しをもつユリ様とは対象的にその取り巻き達は、一斉にリゼを睨んだ。


「私は…ハイト様に任せます。」


リゼは少々悩んだがハイト様が大切だからこそ、出した答えだった。


「!!」


そんなリゼの意見を聞いて取り巻きたちとユリは見るからに喜んだ。


「では早速ハイト様に聞いて来ますわ」


先程までオドオドしていたはずのユリは威勢よくそう言って取り巻きたちとともに教室へと戻っていった。


「私がどうこう言ってもどうしようもないよね」


リゼはハイトに対する気持ちをそっとしまい込んだ。

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