新たな狩猟者像 プロハンター ~ニュージーランド編~

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第1章 渡航 第1話

 専門的捕獲従事者(サーパスハンター)を目指した4人は、新たな活動の場所を得て、各々がその道を歩み始めた。とはいえ、4人にはまだまだこれというプロフィールがない。


 インターンからレジデントとして、一応の基礎課程までは修了することはできたが、ここからはフェローとしての専門性が求められるのだ。


 四人の中で、一番早く方向性を見いだしたのは、松山だ。入学前にニュージーランドでハンティングツアーガイドとしてのワーホリを計画していたこともあり、その夢を実現しようと動き始め、在学中から英会話の学習を開始していた。


 幸いなことに、ワイルドライフマネージメント社とニュージーランドのプロハンターとの間に仕事上のつながりがあり、せっかくなので商業的な狩猟を行うハンティングツアーガイドよりも、ニュージーランド政府の仕事を請け負うこともあるそのプロハンターのもとで研修を継続するという進路を早々と決めることができた。


 ワイルドライフマネージメント社とそのプロハンターは探索犬事業でのつながりがあり、松山はそこで犬の訓練についても専門的に学ぶこととなったのだ。


 専門学校の実習先での夜、 コソコソと携帯でメールのやり取りをしている松山の姿に気づいたのは、引率していた坂爪だった。


「おい、松山。コソコソ何やってるんだ」

と、ほぼ彼女に連絡をしているということを見透かしたうえで、坂爪が声をかけた。


「別に、なんでもありません」

 と慌てる松山が後手に隠した携帯を、連携プレーのように後田が奪い取った。


「やめろ!返せ!」

という松山の言葉が届く前に、すでに携帯の画面は後田にチェックされていた。


「えっ!英語かよ」

その声に柴山が釣り込まれるように、横から覗きこんだ。


「やめろって、返せよ!」


「松山、Risaって誰?」

目聡く相手の名前を確認したし柴山が聞いた。


「誰でもいいじゃんか」

と言ってみたものの、柴山にも後田にも彼女がいないことを知っていた松山は、その優越感から次の後田の質問のあとで宣言した。


「Risaだって?誰だよ、それ」


「彼女だよ!」


「えっ!お前いつ彼女できたんだよ」


「英会話教室で知り合った、ニュージーランドからの留学生で、俺がニュージーにワーホリで行くって知って、話かけてくれたんだよ。今は、俺が日本語を彼女が俺に英語を教えてるっていうわけだ」


「え~、じゃニュージーランド人ってことだろう」


「すげぇ、外国人の彼女かよ」


「情けねぇ・・・。俺たちには日本人の彼女もいないのに・・・」


「外国人の彼女なんか作りやがって、何が日本人の彼女はいないだ。そんな両方いたら、確実に許せん!」


 二十歳代前半の若者らしい感覚で、柴山と後田は松山のことを羨ましがり、松山は松山でその優越感を味わっていた。


「なぁ、写真あるんだろう。見せろよ」


「じゃ、ちょっとだけな」

というと、携帯を操作して、画面上に松山とRisaのツーショット写真を表示した。


「左側のムサイ奴は余分だ!Risa単独の画像はないのか」


「あるよ」

カーソールを操作すると、Risa一人が写った画像が表示された。


「貸せ!良く見せろ」

と追いすがる後田を足で牽制しつつ、


「しっし!近寄るな」

と携帯を奪われないように微妙な距離を保っている。


「いいなぁ・・・」

しみじみと言ったのは、柴山だった。


 彼女いない歴、四年目の柴山は、心底うらやましそうに言った。


「なかなかこの世界だと出会いってないよなぁ・・・」


 確かに、現場となる農村に若い女性はいない。

 可愛がってくれるおばちゃんやおばあちゃんにはたくさん出会ってきたが、携帯のアドレスを教えてという対象者は皆無だった。


「異性との出会いは少ないぞ」

と最初の実習の時に、言われたけれど、ここまで出会いがない世界も珍しいだろう。

 

 出会う若い異性とすれば、シカのメスくらいのもんだ。

 瀬名のような存在は、極めて稀なのである。

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