アレイグル始動!

 ある一室の扉からノック音が聞こえる。

 丁寧なノックだった。



 「入れ」

 「失礼します」



 部屋を訪ねたのはリーファだった。

 アレイグルはリーファを嘗め回すような下品な目で見ている。

 杖を突いた年季の入った胡散臭い老人だ。



 「リーファ何の用だ?」

 「何故アクアラプラスのパーティーの加入を認めて下さらないのですか?」

 「あんな低俗なパーティーに国の希望の星のお前を預ける訳には行かん」

 「ホーリーナイトなら大丈夫だと?」



 アレイグルは椅子に深く腰掛けると、嫌な笑みを浮かべた。



 「ホーリーナイトはこの国トップのパーティーだ。有象無象とは訳が違う」

 「お言葉ですがホーリーナイトに加入して数日メンバーの実力を拝見させて貰いましたが、とても私と釣り合うとは思えません」

 「そんな馬鹿な話があるか! あれは国のトップだぞ」

 


 アレイグルは激昂して自身の目の前にある机を強く叩く。

 リーファは眉一つ動かさなかった。



 「アクアラプラスにはラプラスの悪魔を持つライルさんと、剣聖のアーニャさんがいます。ホーリーナイトより確実に実力は上かと」

 「無駄話をしに来たなら帰れ! アクアラプラスなど所詮雑魚にすぎぬ。もうじき死体と成り果てるわ」

 「それはどういう事ですか!?」

 「お前は知らなくていい。大人しく儂に従っていろ!」



 アレイグルは怒鳴りリーファを部屋から追い出した。



 「全く我儘なガキだ。国王からは多額の賄賂を貰っているんだ。今更撤回など出来るか」



 国王は【ホーリーナイト】を自分の為にもっと強化するべく強力な魔導士をパーティー加入させることを希望した。

 その希望を叶えるために国王はアレイグルへと多額の賄賂を支払い教会の目玉商品であるリーファを【ホーリーナイト】へ加入させた。



 「これからも儂の利益の為にリーファにはボロ雑巾のように働いてもらうぞ。はははっ!」



 アレイグルの目的は私利私欲だ。リーファを利用して自身が有名になると言う俗物的考えの持ち主である。



 「邪魔はさせんぞアクアラプラス。あんなゴミ共に儂の人生設計を狂わせては困る」


 アレイグルはライルとアーニャが戦死する事を心から望んでいた。


 ◇


 「はあーっ。アレイグルさんにはやはり何を言っても通用しませんか」



 リーファはアレイグルの賄賂の事は知らないが、表面だけはいい爺だと理解はしていた。

 裏の顔は醜いことも。



 「ではやはりアクアラプラスが実績でホーリーナイトを超えないと駄目ですね」



 リーファは自室のベッドの上で仰向けになってライルとアーニャを思う。



 「まあライルさんとアーニャさんなら余裕ですが」



 リーファはライルとアーニャの実力を正当に評価していた。

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