ベースキャンプしか作れない無能と言われた生産職、伝説のSランクダンジョンに潜って最強になり元パーティーメンバーにざまぁする
竜頭蛇
第1話 魔女
「あんたには死んでもらうわ、ユウタ」
パーティーリーダーのアゲハの言葉を皮切りに、今まで所属していたパーティーメンバーと目があった。
彼らは軽蔑するような眼差しで僕を見続けている。
完全な敵対だ。
だが僕はそれでもいいと思った。
ことがことに至る経緯には神出鬼没のSランク迷宮である『神域』の調査依頼の帰り、リーダーのアゲハが断崖の際で深手を負って倒れている女性を発見したことが一因にある。
その人は魔女と呼ばれるエネミオス王国の女性だった。
彼女らは子供の頃から莫大な魔力を秘めた角を持ち、13歳の時に行われる選定の儀の際には女神から魔術師系統のスキルを授けられることが多い。
それゆえに魔女の代名詞として名高く、彼女らを魔女たらしめる魔力塊である角は裏の世界で高額で取引されることで有名だ。
発見しただけ。
そこまでは問題はなかった。だが、しかしアゲハの次の言動で問題が生じた。
彼女は夕闇の中で淡く光る魔女の角を見て、俺に向けて命令を出したのだ。
「ユウタ、こいつにとどめを刺して角を剥ぎとってちょうだい」
それは死罪に問われるような大罪だった。
だがこれは生産職を愚、戦闘職を優とする戦闘職至上主義の僕の国でその頂きに位置する剣聖アゲハの命令だった。
この命令は王族以外のすべての者が聞かなければならない最上位命令だ。
モンスターを倒せない故にレベルも上がらない、従属スキルを生じさせることも出来ない生産職は僕の国では人権が無く、その中でも最低のスキル「ベースキャンプ作成」しか持っていない僕は言わずもがなこの命令には従わなければならない。
たとえ女神からスキルを頂く選定の日まで幼馴染として懇意にしていたとはいえ免除されることはない。
それがたとえ死罪となる大罪を犯すことだとしても。
戦闘職に生産職が逆らうということは僕が住んでいる国アリアンハルデ帝国を愚弄することになるのだから。
僕が採取用に腰にぶら下げていたナイフに手を伸ばすと、これから品質を保つ為にその人の命を奪い、盗むことを意識せざるを得なかった。
するとふと両親との約束が思い出された。
『絶対にどんなことがあっても他人から奪うことはしない』
僕が両親たちとした唯一守れている教えだった。
『魔女から角を奪う』という行為は本当に死罪に問われてまで価値のある事なのか?
僕はそうアリアンハルデ帝国民なら思わなくてもいいことを考えてしまった。
戦闘職が考えることに生産職が疑問を持つことなど許されない。
だがただ一つの疑問から僕に巻き付いたアリアンハルデ帝国民という枷に罅が入っていた。
品質を維持する為に命を奪って、魔女の角を剥ぐという大罪を犯して、両親との約束を破って……。
それでも生きる意味がどこにあるというのだろうか?
いや、あるわけがない。
僕は瀕死の魔女の下に向かい、パーティーメンバーと対峙する形で彼らの方に振り返った。
「あなたの言うことは聞けません!」
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