第8話 令嬢×戦い


 私の名前はフィン・マウル・ルミエールである。とある事情で、貴族の子供になったが、私は転生者である。


 更には、物語の主人公なのだ。

当然神童と呼ばれて、有名になるものだと思っていたのだが...


 なぜだろう。一部の教師連中からの、評判がよろしくない。


 一度じっくり、話をしなければならない。

何がいけないのかについて...


 かなり、努力はしてるつもりである。

好きな事をだがな! 


 そう! 私は頑張っていると言いながら、いずれ追放される為に、戦闘力をあげる事にばかり、熱心であったのだ。


 魔法使いの教師を募集したいです。

父ペルギウスに、お願いはしている。


 所詮はいつの世も、弱肉強食である。

私の長所は魔法! ならば魔法と拳を鍛えるのが男道!! この左ジャブなら世界を...


 もちろん、歴史より地理を好んだ。

なんせ、うさぎとモフモフパラダイスをしなければならない為に、最終目標地域を、探さないといけないからだ。


 今日もまた授業だ。今日は苦手な、礼儀作法の授業まである。あの教師はケチばかりつけやがる。オナラを出させる魔法があったら、かけまくってやるのに...


「かなり憂鬱だ。つまらない! 冒険に出たい」


 貴族は自由がない事が、不満だった。

うさぎ仙人! もう一回、設定やり直し希望! ーー駄目か...


 まぁまだ、致命的なミスはしてない筈だ。

もう少しだけ、大人しくしておくとする。

 私は八歳になった。

本日はまた晩餐会がある。

貴族はどうして、パーティばかりするのか


 それは、パーティで情報交換や外交、法律さえ決まったりする、大事な場であるからだ。


 しかし、私にとっては、ボロを出さないかヒヤヒヤする場でしかない。まぁデビューするのは、最低十二歳以降であり、ただのお飾りだから、気はまだ楽ではある。


 だが誕生日以外、一度も楽しめた試しがない。

なるべく、誰とも関わらないようにしている。


 しかし、奴が現れた。

パンツ女だ!! 名前はミルキーらしい。


 甘そうな名前の癖に、全然甘くない。

なぜなら前回、この私にざまぁを、決めたからな! 


 私は、マジで逃げ出す五秒前である。

しかし、ミルキーは私を見つけると、悪い笑みを浮かべる。


 怖いんだが! なんだその笑顔は? 

私は警戒心マックスで、そろりそろりと後ずさる。


 ミルキーも、そろりそろりと忍び寄る。

この世界の女性とは、逃げる相手を追いかけるのが、趣味なのであろうか? 


「私からどこまでお逃げになれるかしら?」


「ーーお許しください」


 いつの間にか、庭に出てしまう。

追い詰められた、ネズミの気分である。


 もしここが闘技場なら、こんな惨めな思いを、しなくて良い! 余裕で勝てる自信がある。


 だがここはパーティ会場である。

社交力は、余裕で負ける自信があった。


 私を壁まで追い詰めたミルキーは、

まさかの壁ドンをして来た。

いやいやいや! 普通、逆じゃないかと言いたい。


「貴方も恥ずかしめを受けるがいいわ! おっほっほっほ〜」


 そう言うと、私のズボンをずりおろして、

ケタケタ笑いながら去って行った。


 どんだけパンツの恨みが深いねん! 

私はなんとも言えない、敗北感を味わった。


 ミルキーの父親に、貴方の娘への教育はどうなっているのか、小一時間くらいかけて、問い詰めたくなった。


 こんな仕打ちは、前世でも受けた事がない。これは完全に舐められている。

ギャフンと言わせなければ、ならないだろう。


 ズボンをしっかりと履いてから、作戦を練る。さぁて、ミルキーギャフン計画の始まりだ。いや、第二次ミルキー大戦の始まりである。


 男には引けない戦いがある! そうそれは今だ! 小娘程度に負けて、貴族などやっていられるか〜


 私はミルキーの肩を掴み、こちらに振り向かせる


「悪い事をする貴方に、私の怖さを教えてあげよう」


 私はシャンパンを口に含むと、ミルキーに口移しで注ぎこんだ。


 すると、ミルキーは顔を真っ赤にして、酔いだしたのだ。


 私はすぐに、ミルキーの父親の元に向かい、こう告げる。


「あのすみません。ミルキーお嬢様は、未成年なのに、お酒を飲まれて、絡んできます。注意してください。私はズボンまでずり落とされました」


 一筋の涙を浮かべて、演技もバッチリである。


 そして、何食わぬ顔で逃げ出した。

後はざまぁ返しを受けないように、物置部屋で、隠れてやり過ごす...



 一時間後、案の上叱られたであろうミルキーは、私を探し回っていた。


「フハハハハ! シャンパンぶち込んでやったから、そう簡単に探せまいよ!」


 私は一人で、勝利の余韻に浸っていた。

しかし、父ペルギウスもまた、私を探していた。


「父様! 助けてください。酔った女性に絡まれて、ズボンをずり下ろされました」


「それはミルキーお嬢様の事かい? 彼女は公爵令嬢じゃないか! 寧ろ光栄な事だよ」


 父ベルギウスは、微笑ましく思っているらしい。しっかりエスコートするように、とまで言われてしまった。


 味方がいない! 打つ手札を探す。

そうだ! 祖父ジョセフの側にいよう。


 頼りになるからな! 私は祖父ジョセフを探す。運が良いのか悪いのか、祖父ジョセフは、ミルキーの父と話している。


 ええ〜いままよ! 私は祖父ジョセフの背中に張り付いた。


 よし! これで打てる手は打ち尽くした。

後はミルキーがどう出るかだ。


 すると案の定、ミルキーはやって来たのだった。


「ルミエール伯爵ご機嫌麗しうございます」


「おーミルキーお嬢様! お懐かしうございます。ほらフィンも挨拶しなさい」


 えっ? 祖父よ! このお転婆娘と面識あるの? 


「フィン・マウル・ルミエールです。よろしくお願い致します」


「実はルミエール伯爵! フィンと遊んでいたら、見失なってしまったのです」


「おーそうでしたか! フィン! 遊んできなさい」


 く! 万事休すである。


 私はミルキーに腕を掴まれると、別室に連れて行かれた。


「よくもやってくれたわね! 私は公爵令嬢なのよ! 二度も私に恥をかかせるなんて、覚悟できてるんでしょうね」


 こうなればやぶれかぶれだ! 


「ミルキーお嬢様! ここは貴族の社交場です。お上品になさってくださいませ! はしたないですよ」


 まずは礼儀作法の先生を真似て、挑発をしてみた。絶対にミルキーも、同じ事を言われているはずだ! さぁどうする? ミルキー


「失礼致しました。しかし、殿方から接吻を受けて、更には、お酒まで呑まされたとあっては、女として問いただしに行くのが、礼儀というものでございます」


 くそ〜口で叶わなさそうな感じが、ヒシヒシとして来た。ならば...


「ふん! 接吻の一つや二つで動揺するなど、お子ちゃまにはまだ、早かったみたいだな! ガキとの恋など胸焼けしそうだぜ!」


 今度は、ハードボイルドで言い返す。


「誰が好きなんて言いましたか? そのふざけた態度、万死に値します」


 すると、ミルキーは隠し持っていたシャンパンを私の口にツッコミ、どんどん流し込んでいく...


 ーー私は意識を失ったのであった。



 私は気がつくと、素っ裸で、部屋の柱に括り付けられて、あそこにチャイルドソードと落書きをされていた。


「あのクソ女〜!!」


 またしても私は、ざまぁをされてしまったのであった。

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