第7話 片鱗×授業
私の祖父ジョセフは、以前にも話したが、副外務卿であり、家を空ける事が多い。
しかし、我が伯爵家は土地持ちである。
転生前は、貴族とは、暇でただ金持ちなのだと、思ってた。
私は、大きな誤解をしていたようだ。
都市計画、水の利権、治安問題、衛生問題、外交、子息の縁談など、多数ある。
つまり、現代日本で言うと、領地内の司法、立法、行政、外交などの、全てのトップとして、決断をしなければならない事になる。
当然、祖父ジョセフ一人だと、無理である。その為に、父ベルギウスも忙しい。
因みに、父ベルギウスには、弟や姉妹が沢山居たが、後継問題が起こると厄介だからと、祖父ジョセフが、ベルギウスの他に、一人の弟を残して、別の道を歩ませた。
その残ったのが、叔父ラウールだ。
叔父ラウールは、次期当主である父ベルギウスの身に、何かあった時の為の、予備である。
現在、叔父ラウールと父ベルギウスは、執務室で仕事をしている。
どうやら、他国との領土問題らしい。
我がルミエール伯爵領は、ベアー王国の最西端にあり、その隣には、タイガー獣王国という、獣人の国がある。
境界線は、森林であった。住民や冒険者が、狩りをしている時に、間違って、森林に入ってしまう事があるらしい。
その度に、諍いが絶えない。
過去に、何度か戦争をした事があるからである。
叔父ラウールと父ベルギウスは、文官から上がってくる資料に、眉を顰める。
「一ヶ月で、百五十件は多過ぎだろ?」
「何か、良い案がないだろうか?」
私は紙に対応策を書いて、ドア下から滑らせた。
「ん? 何だあの紙は?」
どうやら、父ベルギウスが、気づいたらしい。
「石垣を張り巡らして、真ん中に関所を建てれば、良いのではないでしょうか。メリットは、戦場で防衛し易くなる。デメリットは、交流の場が減る。」
父ベルギウスは、メリットとデメリットが入った、立派な案に、関心した。
父ベルギウスはドアを開けたが、誰も居なかった。だが、筆跡から、長男フィンであるとわかった。
「長男フィンは、魔法使いだし、頭も良いなぁ〜政務を一部任せたいくらいだよ」
父ベルギウスは、私に片鱗を、感じたらしい。
実はこの春、父ベルギウスには、新たに子供が産まれた。次男ペーターである。
次男ペーターはまだ赤子の為に、母アリアが、育児に専念していた。
あまり泣かなかった私と違い、夜泣きが酷い。それで、たまに夜起こされるのだ。
我慢しろ!! 男だろ!! と伝えたい。
話は脱線したが、私の案で工事を進めるらしい。
いずれではなく、出来る時に、親孝行はしよう。何故なら、私はいずれ...
私もこの歳になると、教育をさせられる。
立派な貴族になる為である。
科目は、礼儀作法、歴史、話術、教養、剣の稽古にダンスなど他にもある。
一つ一つに、教師がやって来て、授業を受ける。
礼儀作法...メンチをきる事が、男の勲章だった前世の癖は、直さなくてはならない。
歴史ってなんだよ! 過去を振り帰るな! 未来を見ろよ! と言ってやりたい。
話術は得意である。前世、接客業をしていたからな。とりあえず、消し炭にすれば良い。
教養は問題ない筈だ。何せ、転生者だからな! 前世の小学校の範囲までなら、なんとかなる。
剣の稽古は、なかなか上達しなかった。
私は魔法使いを選んだ為に、素質がないのだ。
しかし、同年代の奴に、舐められてはいけない為に、努力はしている。
ダンスは大丈夫だ。得意のパラパラを披露したら、教師に怒られた。しかし、リズム感はある方だと思っている。
私は、あまりの順調さにびっくりした。
だって、大好きな祖父ジョセフの様に、振る舞えば良いのだからな! 貴様暗殺者だな? を習得済みである。
私の華麗なる一幕を、お見せしよう。
ある日私は、心配そうに、教養の教師に聞いた。
「先生、何もしてない人のことを、叱ったりすること、ありますか?」
「そんな理不尽なこと、するわけないでしょ」
「良かったー。先生、僕、宿・題・し・て・ま・せ・ん・」
案の定、叱られたのだった。
私は教師に、貴・様・暗・殺・者・だ・な・! と言ったら首を傾げられた。
どうやら、万能の言葉ではなかったらしい。
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