第56話 脅威では?

 殿下の従魔は、シルバータイガーですか。

 それは……少し見てみたいかも……。


「あぁ、このルクスよりはデカイがね?」


 ルクスの頭をなで無がらそう答える。


「そうですのね?殿下が可愛がって居るなら従魔も、今はお寂しい思いをされてますわね?」

「そうかな?案外城で好き勝手してそうだがな。ククク」

「それは……分かりませんわね?ですが寂しがってますわよ?ね?ルト…」


 側に居たルトの頭を指で撫でながら思った事を口にする。


「……そうだねぇ。まっ、考えるよ。といってもパトリシア嬢が連れている、縦魔の様に影に入れられる訳ではないからなぁ……。連れ歩くのは難儀そうだねぇ」

「……連れ歩く何処をですの。ご自分のお国で、ですわよね?」

「い、嫌……まぁ。そうだね!良い機会だ話しておこうかな?」

「はぁ?なにをですの?」

「っと、その前に……ロミノ!お前は自国に戻る用意を!」

「え?それは殿下……お許し下さいませ。先程の事は心からお詫びを」

「私に謝っても仕方ないだろ?お前が、私の顔に泥を塗ったのには違いないしな。そんな者は私には必要ないな。未だ側近達の方が、私の役には立ってるよ。あっそうそう!お前の小飼の兵士……あの二人も要らんよ。あの者達とすぐに出ていけ。父上には連絡をして置く。喜べよ?」

「っ!」


 私は、ここに居て良いのかしら?

 なんだかとっても居ずらい。


「早く出ていけよ?私は此れからパトリシア嬢と、大切な話しがあるんからな」

「そ、そんな……」

「ほら?なんでそこに居る?ほら、出ていけ!」


 と一喝する。


「ヒッ!し、失礼致します」


 焦ったように後ろに後退り、そしてすぐに城へと走り去って行ったわ……。

 あら~お気の毒だこと……でも私はどうすれば良いのかしら?


 そして……グレンが新しいお茶をメイドと共に持ってやってくる。


「お嬢様お待たせ……致しました。新しいお茶と、お茶請けになります。それにしてもどうかしましたか?先程ロミノ様とすれ違いましたが?」

「グレン。お茶有り難う。少し下がってて良いわよ?後で呼ぶから」

「……それは……」

「ね?グレンお願い(今は、良いわ)」


 ニコリと笑って暫くね?と念を押す。


「承知致しました。では彼方で控えて居りますので。ご用があればお呼びください」


 それだけ言うと、グレンが頭を軽く下げて東屋から距離を取って離れてくれた。


「パトリシア嬢。すまないね………なんだか君には謝る事が多い。困ったな……」

「それは……仕方ありませんわ。殿下の所為ではないですし、人の心は分かりませんもの……」


 本当、分かれば苦労はしませんわねぇ~。


「……まぁ…そうかな。さて、話しだったね?パトリシア嬢。私が君に、結婚を申込んでいるのは聞いてるかい?」

「ええ、お父様から伺って居りますわ」

「はぁ~、それは耳にしてるのだね?認識はあるのだね?」

「ま、まぁそうですわね。色々と考えては居りますわよ?それでなければ、殿下の願出も受けませんし。二人で、話しをする場も儲けませんわよ?」


 っと、謂うか……真意が分からないからこう謂うしか無いのよね。

 

 今のところ、この王子がどんな考えでここに(ベルガモット)乗り込んで来たのかが分からないのですもの。


「ハハハ。そうか?そうだね……。それなら……良い返事は貰えないだろうか?」

「それですが……私が少し皆様と違うのを受け入れてくれますの?」

「違うとは?」

「私は、貴族の娘らしくはないと自分でも思うのですが。ほら、従魔が多くいるとか?殿下の知らない植物等の知識があるとか?それって、知らない人から見れば脅威では?」


 だからこそ、隠す事が多くて……独りで居たいし。

 この王子とは関わりたくない!


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