第83話 領地へ 川を渡る

「そうでしたわね?お母様、ごめんなさい。ですが……またここで、足留めになって仕舞うと色々と問題が出ますわよ?」

「まぁ、そうだな!お前の言う事も分かるか……ここに止まっても仕方がない。先に進む手だてが出来たんだ。領地へ向かうぞ?」

「……そうね貴方。ここを渡れば、あと少しで領地ですものね?パトリシア、ありがとう」


 両親と、話していると兄達二人が近付て来て私にどうした?と尋ねてくる。


「パトリシア、どうした?父上も如何しましたか?」

「ああ、今パトリシアが向こう岸へ向かう手立てを考えてな、渡る道を作ってくれたよ」

「は?何を言って。ああ……パトリシアでしたね……ハァ~」

「ヴァンスお兄様……なにか?」


 ヴァンスお兄様ったら、また失礼な事を考えましたわね?


「それで、シア!どんなことを?」


 逆にアレクお兄様は、ワクワクしてます……何故?


「アレクお兄様。えっと、その門を潜って下さいませ。向こう岸へ着きますわよ?」


 地表に張った、転移門を指してそこに立てば向こうの転移門に抜けられると、説明をするとアレクお兄様が興奮して食い付いてくる。ウザイ!


「シア!それは本当か?」

「えぇ。バッチリですわ!完璧です」

「それなら………」


 アレクお兄様が、転移門を潜り抜け暫くすると戻って来た。


「シア!お前凄過ぎる!これなら時短になるな!父上早く潜って領地へ戻りましょう!」

「そ、そうか、なら馬車で通れると言ってたな?全員馬車に乗り込み進むか。ヴァンス!騎士達にも伝達しろ」

「はい、了解しましたよ………。私の出る幕が全くない!」


 ブツブツと、文句を言ってその場を離れて行く。

 私と、アレクお兄様以外が戻りお父様の騎士達にも伝達が行くように手配して移動となった。


「シア?お前は?」

「私は、全員がここを通ったら最後にここを抜けますわ」

「何故?」

「転移門を、消さないといけませんよ?なのでお兄様、最後に全員が向こうに居るか確認して私に教えて下さいませ?」

「分かった。なら!俺は一足先に馬車に戻る。向こう岸で、待ってるよ?」

「えぇ、よろしくお願いしますわ!」


 そして、一番先頭の馬車から転移門を抜けるのを確認する。

 次々に、転移門を馬車が通り抜けて行き最後の馬車も転移門を抜けて、ベルガモット家の隊列がパトリシアの居る場所から居なくなり、向こう岸に消えていき、アレクお兄様が転移門から姿を現した。


「おいシア!早く戻ってこい!」


 向こう岸へ行った、お兄様が私の所に一旦戻って来て全員揃ったから戻れと言われ、私も転移門を抜け皆のいる場所に戻る。


「分かりましたわ!お兄様は、彼方でお待ちに成っていて下さいね?」

「おう!」


 返事をすると兄が門から消える。


「さて、では。門を抜けて消しますわ!解除!」


 すると、転移門が目の前から綺麗になくなった。


「戻りましたわ、お父様?お兄様?」

「「あぁ、お帰り」」

「さて……パトリシア、アレク。馬車に戻って領地へ向かうぞ!」


「「はい!父上」お父様」

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