書かない私

@teiw

第1話

はじまりはじまり──。大抵の昔話はそう始まったものだよね。めでたしめでたしで終わるところ迄が全てしっかりと予定されていて、子供ながらに「ああよかった」「あの鬼は本当はいい鬼だったんだ」「すっきりしたぁ!」「お地蔵さん見かけたら手をあわせないとね」なんて思ったりしたよね。小学生になる頃には「物語の始まる前と終わった後の世界はどうなったの?」なんてことも考えるようになるし、中高生になれば「文字で書かれているだけなのにどうしてこんなに魅力的なひとがいるのだろう、大好きだなぁ」とか言い出すし、大人になると世界の前後に余白を作ることが余興に繋がることも知ってしまうよね。


もう既に始まっている世界であえてはじまりを唱えることに意味がある、そんな会話をしてしまった朝を得て、僕は私の世界についてまた考える事を始めてしまった。僕がいつも言う通り「おそらく長く続かない」のだろうけれど、私の書かなくなった世界にも多生のなにかがあるかもしれない、それはとても幸せな事だと今の僕と私はそう考えているので、折を見て包み隠しつつお披露目してゆこうとおもう。

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