疑惑──④

   ◆



 アレクスに戻ると、俺達はテイマーギルドへとやって来た。

 テイマーギルドの会議室。そこに入ると、既にメンバーは集まっているみたいだ。


 テイマーギルドからは、龍種ドラゴンテイマーのトワさん。獣王種キングテイマーのザニアさん。妖精種フェアリーテイマーのコロネさん。


 バトルギルドからは、英雄レオンさん。剣聖アシュアさん。魔拳闘鬼ロウンさん。魔導図書コルさん。


 改めて見ると、すごいメンツだ。



「おぉ、少年。おっひさー」

「コハク殿、壮健か?」

「ザニアさん、コロネさん、お久しぶりです。はい、元気ですよ」



 それにしても……ちょっと見ない間に、この2人もすごく強くなってる。

 ザニアさんは相変わらず大雑把な感じがするけど。


 2人に挨拶をすると、トワさんが真剣な顔で口を開いた。



「コハクさん、先程の報告をもう一度お願いします」

「あ、はい」



 今までの経緯を順を追って説明した。

 ボード森林にいるワイバーン40体の討伐に向かったこと。

 魔物どころか生物の気配がなく、急に姿を現すこと。

 魔物を倒しても手応えがなく、まるで別のもので作られた感覚があったこと。



「このことから、恐らく七魔極が関わっていると結論付けました」



 俺の言葉に、会議室がざわついた。



「コハクくん、それは本当かい?」

「はい。恐らく」

「おいおい。それが本当だと、えれーことだぞ」

「そうですね。前回の魔族戦から我々も力を付けたとはいえ、きつい戦いになるでしょう」



 ロウンさんとコルさんの言う通りだ

 俺も毒の魔族と戦った時、ライガと魔人化しないと勝てなかった。

 魔人化の力を使えるようになったけど、それでも七魔極相手は厳しいだろう。


 みんながざわつく中、コロネさんが俺に質問してきた。



「コハク殿、その七魔極はどのような奴だ? コハク殿のことだ、わかっているのだろう?」

「はい。まだ可能性の段階ですが……」

「構わない。話してくれ」



 コロネさんの言葉に、みんな俺の方を向いた。



「可能性として挙がっているのは、疑似生命創造魔法を使う七魔極。創造のグラドです」

「疑似生命創造魔法ですって!?」



 この中で唯一魔術師のコルさんが声を荒げる。

 ただ他の人はピンと来ていないみたいで、レオンさんがコルさんに聞いた。



「疑似生命創造魔法……これはどういうものだ?」

「名前の通り、疑似的に生命を創造する魔法です。全世界魔術協会でも禁術に指定されている、禁忌中の禁忌の魔法……もしこの魔法が世界に広まれば、減ることのない無敵の軍勢を作ることができます」



 その言葉に、今度は全員息を飲んだ。

 疑似的に生命を作り出す。つまり、死んでも問題ない軍勢を作り出すことができる。

 更に、魔力が枯渇しない限り軍勢は無限に湧き出る。


 実質不死の軍勢だ。


 こんな魔法、確かに禁止にしないと世界が崩壊してしまう。

 でも……。



「コルさん。その魔法は簡単にできるんですか?」

「まさか。僕の全魔力を使って、恐らく100体くらいが限度でしょう。それに、一体一体に複雑な動きを取らせなければなりません。そうなると、僕でも1体作るのがやっとです」



 コルさんでもそんなに難しいのか。

 でもあの時は、ワイバーン40体。ウルフも数十体いた。

 しかも連携を取ろうとしてたし、各個体で動きがバラバラだった。

 間違いなく、創造のグラドの総魔力量はコルさんを越えているだろう。



「しかし、その疑似生命にも弱点は存在します。例えばアシュアの複製体を作ったとして、そいつは剣聖の力は使えません。ただし、アシュアの剣技は使うことができます」

「おいおい、それは弱点と言えるのかぁ?」



 ザニアさんの言う通りだ。剣聖の力を使えなくても、アシュアさんの剣技さえあれば世界最強の剣士だ。

 もしグラドがそんなものを数百体と複製したら、この世界は間違いなく終わる。



「もう1つあります。疑似生命は魔力で作られた体を有しています。つまり、ロウンのようにどれだけ体を鍛えていようと、龍種ドラゴンのようにどれだけ硬い鱗があろうと、簡単に攻撃を通すことができるのです」



 なるほど。あの違和感はそういうことだったのか。

 でもいくら防御力がなかろうと、攻撃力は本人のままって……もしプラチナプレートの皆さんやテイムしている魔物が複製されたらそんなの反則級に強いに決まってる。


 どうやって疑似生命創造魔法を使っているのかもわからないし、これは今まで以上に厳しい戦いになりそうだぞ。

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