【3巻発売中】唯一無二の最強テイマー 〜国の全てのギルドで門前払いされたから、他国に行ってスローライフします〜
赤金武蔵
プロローグ
「ここもダメか……」
たった今門前払いされた冒険者ギルドを振り返る。
大きいが、寂れた古い建物。
最悪のギルドだとは聞いていた。
だけど、まさか話も聞かずに帰らされるとは思わなかったな。
『テイム出来ないテイマーなど、我がギルドには不要です。お引き取りを』
さっき、ギルドマスターから言われた言葉を思い出す。
漏れるのはため息と、将来を憂う言葉だけ。
ここがこの国最後のギルドだったのになぁ。
本当、これからどうしようか。
唸っていると、俺の肩に乗っている
『ほんっっっっっと! なんでコハクが門前払いされるの!? 激おこよアタシ!』
「まあまあ、仕方ないよ」
『仕方なくないわよ!』
と言われても、もう決まったことだしな。
苦笑いを浮かべ、クレアの頭を撫でる。
『むぅ……頭撫でてくれるのは嬉しいけど、あんたはもっと自分のために怒りなさいよ!』
「クレアが俺の代わりに怒ってくれるから、俺は怒らなくて済むんだよ。いつもありがとうな」
『ぐぬぬ……! ふん!』
腕を組んでそっぽを向く。
ただ口角が僅かに上がってるから、喜んではいるみたいだ。
「さ、行こう。ここにいたら邪魔になる」
『全くもう……!』
納得がいっていないクレアを連れ、俺はギルドから離れた。
◆
神が与えし職業は、天職と呼ばれていた。
その中に、テイマーという職業がある。
魔物をテイムし、使い魔として使うことの出来る職業。
それがテイマー。俺の天職だ。
犬系魔物、猫系魔物などの獣種。
蜂系魔物、ワーム系魔物などの昆虫種。
岩石系魔物、植物系魔物などの自然種。
他にも様々な種族の魔物がいるが、ここでは割愛。
これらをテイムし、戦うのがテイマーなのだが……。
問題は俺のテイマーとしての資質にある。
俺は、これらの通常の魔物をテイムすることが出来ないでいた。
理由は不明だ。
ただ一つだけ、俺がテイム出来る種族の魔物がいる。
強力だがこの世で最も数が少なく、人前には姿を現すことのない幻の種族。
『全くもう、全くもう……!』
今なお、俺の肩でぷりぷり怒っている彼女がその魔物である。
俺が契約しているうちの一人である。
ただでさえ見つからない上に、彼女達は普通の人間には見えない。
そのせいで、俺はどの魔物とも契約出来ない無能扱いされていた。
自分がどの魔物と契約出来るかは、本人にしか分からない。
だから「
嘘じゃないんだけど、世知辛いなぁ。
肩を落としていると、クレアが小さな羽をはばたかせて俺の顔の前まで飛んだ。
『それで、これからどうするのよコハク。もうどこも所属させてもらえるギルドなんかないわよ』
「……どうしようね」
『はぁ……どうしようねじゃないわよ、どうしようねじゃ!』
あ、怒った。
クレアは器用に後ろ向きで飛びながら、腰に手を当てて激昂する。
『テイマーじゃなくて、魔法師ってことにすればギルドに入れてもらえるじゃない! 何で頑にテイマーに拘るのよ!』
「無理だよ。職業を偽ると捕まっちゃうから」
『あーもー! あんたら人間は天職に固執しすぎなのよぉ!』
確かに言えてる。
この国。いや、この世界は天職至上主義だ。
いい職なら高待遇。悪い職なら冷遇。
分かりやすく格付けされている。
ただ、こんな世界に生を受けたんだ。
ルールに従う他ないんだよ。
クレアを連れ、俺はこの街で拠点にしている安宿へ戻ってきた。
木造で古く、歩くとミシミシ音が鳴る。
お金もないし、こんなところでないと泊まれないのが悲しい。
2階の一番奥の角部屋が俺の部屋。それ以外は空室だ。
わざわざこんな所に泊まる物好き、俺以外にいるはずないか。
ため息をつきつつ、鍵穴を回す。
すると、俺に気付いた皆が出迎えてくれた。
『コゥ、おかえりー!』
『お帰りなさいませ、ご主人様』
「ただいま2人とも。いい子にしてたか?」
クレアと同じく人型の
そして、俺より巨大な狼型の
これにクレアを加えた3体が、俺がテイムしている仲間だ。
『コゥ、どうだった? どうだった?』
俺の体に擦り寄ってくる、大型の狼。
滑らかで触り心地のいい毛並みが、淡い金色に輝いている。
テイマーになる前から俺の傍にいる、幼馴染みみたいな子だ。
何故かフェンリルは、小さい頃から見えたんだよね。
はは。当時は、俺が空想の友達と遊んでるって虐められたっけ。
そんなことを思い出しながら、フェンリルの頭を撫でる。
「ごめんねフェン。今日もダメだったよ」
『大丈夫。ボクはずっとコゥと一緒なら、どこでも嬉しいから』
「……ありがとう」
そう言ってくれるだけで、本当に救われる。
『ご主人様。お召し物をお預かりします』
「ありがとう、スフィア」
俺が脱いだローブを受け取り、大事そうに抱える女の子。
闇夜を孕んでいるかのような漆黒の髪に、陶器のような白い肌。
神が造形したとしか思えないプロポーション。
もし人間なら、国中の男が求婚するであろう絶世の美女。
だが表情は変わらず、まるで無機質な人形のようだ。
『ちょっとスフィア。匂い嗅ぎすぎじゃない?』
『何のことでしょう』
『でも顔填めてたじゃない』
『そんなことはありません。それは普段クレアが妄想しているから、そう見えてるだけでは?』
『はぁ!? そ、そんな妄想してないわよ!』
『ではそれ以外の妄想はしていると? くすくすくす。いやらしい火精霊ですこと』
『あんたねぇ!』
ぎゃーすかぎゃーすか。
元気だなぁ、2人とも。
ま、こんだけ騒いでも他の人には聞こえないから、近所迷惑にはならないんだけど。
『コゥ、これからどうする?』
「そうだねぇ……」
ターコライズ王国全土のギルドを回ったけど、どこも受け付けてくれなかった。
これはもう、この国は無理かなぁ……。
「……皆聞いて。もし皆がよければ、俺は他国へ行こうと考えてる」
『他国、ですか?』
「うん。他国のギルドなら、まだ望みはあると思うし」
ターコライズ王国に隣接している国は、多分噂が流れてるからダメだ。
だとしたら、少し遠いけど俺のことが知られていない国に行こう。
「ブルムンド王国に行こうと思うんだ」
『ブルムンド王国? 確か、テイマー専門のギルドもある場所よね』
「そうそう」
俺の意図を汲んでくれたクレアの頭を撫でる。
子供扱いするなー!と怒るが、満更でもなさそうなところが可愛い。
『ボクはコゥが行くなら、どこでもいいよ!』
『私もお供致します』
『仕方ないわね、私もついて行ってあげるわ!』
「……皆、ありがとうね」
俺には勿体ないくらい、いい子達だよ。
「じゃあ、早速準備しよう。明日の朝出発だ」
◆◆◆
『な、何ですって!? コハクきゅんがターコライズ王国を出る!?』
白く何もない空間。
そこに集まっているのは、神聖な雰囲気を纏っている人外の存在達だった。
数にして数百……否、千は超えているだろうか。
人外の存在が、宙に映し出された映像を見て驚愕する。
映し出されていたのは、漆黒の髪にメイド服を着た美少女だ。
『はい。ご主人様は先程、ターコライズ王国を見限りブルムンド王国へ移る決意を固めました』
ザワッ──!
青天の霹靂。
まさか、ターコライズ王国を出るなど予想だにしていなかった。
『そ、そんな……!』
『コハクきゅんがいるから、わざわざこんな辺鄙な国に移ってきたのに!』
『私なんて既に神として崇められてるのよ!』
『俺も、加護を渡した人間が数人いるんだぞ!』
ザワザワとざわめきが大きくなる。
そんな人外の存在を、少女は無機質な目で見つめる。
『皆様、落ち着いて下さい』
ピタッ。
少女の声に、黙って耳を傾けた。
『先程も申し上げた通り、ご主人様はこの国を見限りました。つまり……この国はご主人様の素質を見抜けず、国を出るという苦渋の決断にまで追い込んだのです』
少女の言葉は、普段他者の話を聞かない人外の存在をも引き付けた。
今、この少女が喋る言葉を一言一句逃さまいと、無心になって聞き入る。
『皆様。ご主人様を……聖なる魂を持つあの方をここまで追い詰めたこの国に、未練はありますか?』
『『『『あるわけがない!!!!』』』』
人外の意思は決まった。
この国を──ターコライズ王国を捨てる。
そして人外の……全
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