第27話 カノジョも彼女②

 翌日の朝。


 攻略も済み、俺は亜希と瑠羽、そして麻衣ちゃんに報告をしようと思い、3人に声を掛けていた。


 瑠羽はタイミングよく、午前中は登校する予定だったようで、都合が良かった。




 俺に呼ばれた三人は、人気の少ない屋上にて、互いの顔を見合わせて混乱していた。




「こちら、俺の彼女の主麻衣ちゃん。そしてこちら、俺の彼女の真木野亜希と愛堂瑠羽。……みんな、今後とも末永くよろしくお願いします」




 三人の美少女に向かって頭を下げた俺。




「……女の敵」




 そう言って亜希が俺に中指を立て。




「友馬くんの節操ナシ……」




 嘆いた瑠羽が中指を立て。




「信じていたのに……」




 麻衣ちゃんは低い声でそう呟き、虚ろな眼差しを向けつつ中指を立ててきた。




「麻衣ちゃん、誤解をしないでくれ。俺にとって、麻衣ちゃんは特別だ。そして、亜希も、瑠羽も。同じくらい、順番が付けられないくらい。大事な人なんだ」




「……つまり、どういうことですか?」




 生気の宿らない眼差しを向けてくる麻衣ちゃん。正直ちょっと怖かった。




「俺は三人とも、真剣に好きなんだ。誰とも別れたくない。だから、これからも俺と一緒にいて欲しい。……頼む」




 俺が麻衣ちゃんに頭を下げると、亜希が呆れた声で言う。




「麻衣、今ならまだ間に合うわよ。こんな男のことなんて忘れて、誰か他の男子のことを好きになった方が、よっぽど素晴らしい青春を送れるに違いないわ」




「そうそう、この調子だといつの間にか友馬くんのことが大大大大大好きな100人の彼女が出来ていてもおかしくないし。まだ傷の浅いうちに、身を引いた方が良いと思うよ」




 瑠羽も、亜希の言葉に同意を示した。


 しかし、その言葉を聞いた麻衣ちゃんは、




「……もう忘れられない」




 と、目尻に涙を浮かべ、答えた。




「亜希ちゃんと愛堂さんが、友馬さんのことを好きなのは昨日の時点で気づいていたし。……既に付き合っていたのは予想外だったけど、だからといって、この気持ちが無くなるわけじゃないから」




 それから、麻衣ちゃんは真直ぐに俺を見て、告げる。




「友馬さんがこれからも、ちゃんと私のことを特別に想ってくれるって約束してくれるなら、振られるよりも3股でも良いから、恋人でいたいです」




 麻衣ちゃんの視線を、俺は真直ぐに受け止める。




「うん。麻衣ちゃんはこれから先も、ずっと俺の特別だ。約束する」




 俺が答えると、彼女はコクリと頷いた。




「はぁ、またか……」




「私自身二人目だから、強くは言えない……」




 その様子を見ていた亜希と瑠羽が、肩を落としながら、そう言った。




「二人も、改めて。これからもよろしく」




「二度目だし、慣れたものよ」




「三度目はないと信じてるよ?」




 そう言って二人は、俺の両腕掴んだ。


 やれやれ、寂しくなったのかな? 可愛い奴らめ。


 と、俺が思っていると、彼女たちは息を合わせ、俺の腕を捻った。まさかの関節技サブミッション。


 キレイに関節を極められた俺はその場で両ひざをつく。




「ご、ごめんって」




 俺が謝罪するも、二人は意に介した様子はない。


 無言のまま、更にキツく締め上げてきた。




「すんませんでした……っ!」




 と、必死に声を振り絞り、二人に向かって再び謝罪した。


 しかし、二人は俺の腕を掴む手を緩める様子がない。


 俺は麻衣ちゃんを見て、「た、助けて欲しいんですが……」と助けを請う。


 麻衣ちゃんは俺の懇願を聞いて、




「友馬さんには、痛みを伴った反省が必要かと思います」




 と、微笑を浮かべて答えるのだった――。

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