第70話 裏
「今日は母さんが帰ってくるから晩御飯の準備とかは大丈夫だぞ。」
「あ、今日帰ってくるんだ。でも、おばさん達帰ってくる遅くない?」
「もう少しで来るんじゃないか?」
ピコン!
もうちょっとで晩御飯の時間だし帰ろうかなって思ってるけどおばさん達帰ってくるのちょっと遅い気がする。
楽しむのが好きなおばさんなら予定ぎりぎりまで楽しんでから帰ってきそうだけど晩御飯の時間までには帰ってくると思ってたんだけど。
『ちょっと新幹線乗り遅れちゃったから帰るの遅くなるわねー』
「「………」」
「それで、ご飯どうするの?」
「……カップ麺で良いだろ。」
「むぅ、カップ麺は健康に悪いからダメ。葵、たまにじゃなくて結構食べてるから不健康になっちゃうよ?」
「そ、そんなに毎日食べてるわけじゃないぞ?」
おばさんが遅くなるって知ったらすぐに晩御飯をカップ麵に決める葵。そんな不健康なこと許さないんだからね。
『お母さん、ご飯ってもう作ってるの?』
『今から作ろうとしていたのよ。どうかしたの?』
『それなら、葵の分も作ってくれないかな?おばさん帰ってくるの遅れるらしくて。』
私はお母さんに連絡を取る。そうすれば葵は健康にあまり良くないカップ麺を食べなくても良いはず。
それにさっき毎日食べてないって葵は言ってるけどそれが嘘なの知ってるんだから。
「嘘、燃えないゴミにいっぱいカップ麺の容器あるの知ってるんだから。」
「……そこまで見てるのか。」
「うどんとか蕎麦が入ってた袋を捨てるときに見たの。最近食べた感じの容器ばっかりだったし。」
袋を捨てるときびっくりしたよ。私が葵の家に来てない間にそんなにカップ麺を食べてたなんて。
だから、葵がカップ麺を食べなくて済む方法があるなら絶対そっちを選ばせるんだから。そっちの方が健康的だし……
『そうね、私の方にも連絡が来たわ。葵君の分は大丈夫よ。今日はカレーだから余ると思うし。ぜひ来てほしいくらいだわ。』
「はい、お母さんからご飯食べに来てって言われたから行こ?」
「あぁ、おばさんに連絡してたのか。というか良いのか?」
「良いも何もお母さんも良いって言ってるんだし。」
「そうだな。じゃあ、ご馳走になろうかな。」
やった、これで葵が私の家でご飯を食べるってことが決まったしもう少しだけゆっくり出来るよね。お母さんこれから作るらしいし。
「お母さんも今作り始めたばっかだし、もうちょっとゆっくりしよ?」
「まぁそうだな……今から行ってもしょうがないしな。」
「今日のご飯はなんだと思う?」
「玲奈はもう聞いているのか?」
「うん、どの季節でも食べれるご飯だよ。」
あれ?今のヒントって意味ないかな?ほとんどの料理って何時でも食べれるし……ヒントですらなかったね。葵、分かるかなぁ。
「カレーか?」
「正解。なんで分かったの?」
「俺基準だけどな、カレーって夏に食べても美味しいじゃないか。夏に食べるから熱いけどそれが美味い、みたいな。」
「うん、お母さんもそんなこと言ってたよ。カレーでも食べて汗かかなきゃねって。」
だいぶ前にお母さんがそんなこと言ってたのを思い出した。確かに、暑いときにはカレーだよね。
それにカレーなら寒い冬に食べても温かくなれるから良いよね。お母さんは1か月に1回はカレー作ったりしてる。
「玲奈もカレー好きだったよな。」
「うん。嫌いな人はあまりいないと思うよ。夏はちょっと食欲がなくなるけど、カレーなら食べれるんだよね。」
「暑いもんな。暑いなら今みたいに寄りかからなくても良いんだぞ?」
「これは暑くないの!暑くてもやめないんだから。」
気づいたら食欲がなくなる話から私が葵に寄りかかるのを止める止めないの話になっていた。そんなこと言われたって止めないんだから。
うぐぐ……葵気にしてないと思ってたのにここでこんなこと言われるなんて思わなかったよ。
「熱中症になるぞ。」
「なったら葵が助けてくれる?」
「当たり前だろ。目の前でなったらさすがにな。」
「それって目の前じゃなかったら助けないってこと?」
「俺が見ていない間に時間が経ってるかもしれないからな。病院に連れていく。」
目の前じゃなきゃ助けてくれないのかぁ。確かに病院に行った方が治るは速いけどね。
「むぅ、ああ言えばこう言う。何とも思わないの?」
「何とも思うからそうするんだよ。誰だって大切な人を死なせたくないだろ。」
私はそう言われて気づいた。そっか、私たちって調べて軽い処置くらいは出来るけど時間が経って悪化してる人の処置は難しいよね。
熱中症だって死んじゃう可能性だってあるんだし。それなら病院で知識豊富な人たちに任せた方が良いってことかな?
葵はそこまで考えてくれてたんだ。それに私のことを大切な人だって。葵の優しさ感じたのと大切な人って言われて嬉しくなった。
「そ、そっかぁ……大切な人。」
「当たり前だろ。」
「んふふ。」
ぐりぐり
葵はさも同然っていう風に言い切ったからなんかは嬉しいけど恥ずかしいみたいな感じなってきた。私は照れ隠しと嬉しさで葵にぐりぐりする。
しばらくすると葵はぐりぐりを止めて頭を撫でてきた。それも嬉しくてさらに葵に寄りかかる。
私たちは晩御飯ができるまでしばらく、ずっとそうしてた。
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