第65話 表

【ふぅ、やっと借り物競争も終わったね。選手の皆さんは皆のところに戻ってね。】


「やっと終わった……これで俺たちが出る種目は無くなったし、ベンチでゆっくり出来る。」


「たった3種目だけど結構疲れたね。」


 実況の子の誘導に従い玲奈と一緒にベンチに戻っていく。後は大玉転がしとリレー系だけで、俺たちは出ないから俺たちはゆっくり観戦することができる。


【さぁ、ここからは大玉転がし!今年の選手はどこまで遠くに玉を飛ばせるのかな?期待してるぜ3年生!】


「「おぉー!」」


「去年はどのくらい飛んだんだっけ?」


「確か……コースの半分くらいまで飛ばしてスタートしたんだと思う。」


 去年の3年生の中にサッカー部の人がいてその人が大玉を蹴って半分くらいまで飛ばしたはず。


 今年は反対側まで大玉を飛ばしてくれる人は出るのだろうか?確か数年前に反対側の生徒の方まで飛ばした人がいるんだとか。


【競技の説明するね。大玉転がしはクラス対抗戦。序盤からハイペースで飛ばしちゃうと後半疲れちゃうから気を付けてね。】


「これは……また結構長くなりそうな競技だな。」


「私たちのクラスが出ないときに今日のお昼ご飯何にするか決めちゃう?」


「そうするか。」


 他のクラスに仲のいい人がいるわけでもないし、応援するのは自分たちのクラスだけでいいだろう。


【全部で7クラスだから1クラスシードで初戦は休みになるよ!今年のシードは2組になってるよ。いっぱい休んどいてね。】


「しばらくは暇になるのか。」


「葵ー、ごろーん。」


「おっと……いきなりどうしたんだ?」


「だって、しばらく暇になるから、どうせだったらまた膝まくらしてもらおうかなって。頭も撫でてほしいなぁなんて。」


「はいはい……玲奈の頭を撫でながら食べたい昼ごはんでも考えるかな。」


 急に俺の膝を枕にした玲奈の頭をゆっくり撫でつつ、今日の昼に食べたいご飯を考えていく……考えるがそうすぐに浮かんでこない。


【さぁ、まずは4組と5組から行ってみようか!】


「んふふー、もっといっぱい撫でてね。」


「ちょうどいい高さに頭があるから撫でやすいな。」


 まだ、そんなに昼ごはんのことを考えなくてもいいか。俺は玲奈のサラサラな髪を撫でながら試合を観戦することにした。



















【はい、しゅーりょー。これで大玉転がしの1位が決まったぁー!1位は4組!よく頑張りました!】


「おーい、玲奈起きろー」


「んんっ……むにゅ……」


「寝てる間に大玉転がし終わっちまったな。」


 あの後、玲奈はすぐに眠りに落ちて一度も大玉転がしを見ることはなかった。わざわざ気持ちよさそうに寝ているところを起こすなんてしたくないからな。


【さぁ、いよいよ最後の種目!チーム対抗リレー!ここで1位をもぎ取ると逆転のチャンスがある、かもしれないよ。】


「リレーは完全に興味がないしもうそろそろ昼ごはんについて考えてもいいか。」


 寝ている玲奈を見ると疲れているように見えるし、あまり手間暇かからない簡単な料理にした方がいいだろう。


 それに、玲奈は暑いときに熱いものをあまり食べたがらないから……スーパーでうどんとそば、それと少しのトッピングを買って食べようか?


「よし、後は玲奈が起きた後で要相談だな。」


「んにゅ……うるさあぁい……」


「あ、起きたか。」


 リレーということで周りが熱くなっていて自然と声も大きくなってくる。その声がうるさかったのか玲奈は目を覚ましたようだ。


「ん、あれ?大玉転がしはぁ?」


「玲奈が寝ている間にとっくに終わったぞ。」


 起きたてで余り状況が分かっていないらしい。玲奈がグラウンドの方に目を向けてもそこに大玉は無く走っている人しかいない。


「おこしてよぉ。」


「いや、あまりにも気持ちよさそうに寝ていたからな。起こしづらかったんだ。」


【次は2年生の部!僕としてはメンバー全員が陸上部の3組が勝ちそうですがどうなんでしょうか?】


 もう1年生のリレーが終わったようだ。せめて2年生のリレーだけは見ようとするが玲奈が正面から俺に抱き着いてきた。


「おーい、ここ外だからな?」


「疲れたから回復しなくちゃいけないの。」


「つまり?俺は玲奈専用の回復アイテムだと。」


 コクコク


 どうやら少しの間寝ても、あまり疲れは取れなかったらしい。だからって今俺に抱き着かなくても……ほら、人の目もあるし家とか……駄目ですか。


「リレー見えないんだけど。」


「リレーより私の方大事じゃないの?」


「玲奈の方が大事だ。」


「じゃあ葵もやってよ。」


 別にリレーをそこまで見たいと思っているわけではないから玲奈を優先する。玲奈に腕を回し玲奈を抱きしめる。


 多分だが閉会式が始まるまではずっとこのままな気がする。











「がんばれー!おい!越されちまうぞ!」


「うるさっ……てかさっきよりも皆声大きくなってないか?」


「鈍いやつだな察しろ。」


 チラッ


「……?……あ、ああ。そういうことか……俺も気を紛らわせるか。」


((((((ここでいちゃつくなよ!!))))))

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