第64話 裏

ま、まだセーフ……








【競技は中盤に入っていきましたー!早い人はすでにお題をもって?連れてゴールに向かってるぞ!】


「ところで葵のお題って何だったの?」


「俺か?俺のは………付き合いたい人だ。」


 葵が恋愛系のお題を当てたのは知ってたけど、付き合いたい人だなんて思わなかった。可愛いと思う人とかだと思ってた。


「そ、そうなんだ……ふーん、えへへ。」


「嬉しいのが駄々洩れだぞ。そういう玲奈はどういうお題だったんだ?」


「わ、私?私は……秘密!後で分かるからその時にね。」


【てか、先頭走ってるのはあの2人なんだね。僕はもうどう反応すればいいか分からないよ……またかって言えばいいの?】


 実況の子がそう溢す。団体競技以外ではまだ2種目しか出てないからまたかってことはないと思うんだけどなぁ……


「でも、ゴールするのは良いけど私たちの場合って順位どうなるのかな?どっちも1位とか?」


「先にゴールした方じゃないか?一緒にゴールしてもゴールの位置を過ぎるのは個人差があるだろ。まぁ、どっちにしろ2組が1、2位を独占ってことになるのか。」


「ほんとだね。じゃあ、このまま追い越されないようにもっと速く走る?」


「いや……まだ後ろに人いないから大丈夫だろ。」


 他の選手はまだお題に当てはまる人、かな?を大声で叫んで探し回ってる。たまに「実況の菫ちゃーん!俺と来てくれぇ!」っていう実況の子にお願いして断られてた。


「後ちょっとでゴールだけど皆にバレることの心の準備は出来てる?」


「これが当たった時からできてる気がする。玲奈も大丈夫そうだな。」


「実は結構緊張してるんだよね。今だって心臓が凄い速くなってるもん。」


「どうすれば治りそうとかあるか?」


「じゃあ……もっと深く手を繋いでくれれば治るかも。」


「そんなの俺からお願いしたいところだよ。」


 ギュッ


 皆に私のお題を知られるのはやっぱり緊張するから葵に手を繋いでもらう。いつもの繋ぎ方じゃなくてもっと深い繋ぎ方で。


【もうそろそろ最初の走者が……ってあれ?一緒に走っているのも良くないけど、この2人どっちも走者だったよね?……ン゛ン゛ッ、詳しいことは後から聞こうか。】


「最後だけイケボ?っていうんだっけ。それになってたね。」


「低い声で圧を出したかったのかもな。」


「でも、なんか女の子が手を組んでそうしてるの想像したら可愛くなったよ?」


「……確かに、意味ないかもしれないな。」


 実況の子ってなんか小さい子のイメージがあるんだよね。だからその基準で小さい子が有名な眼鏡をかけたおじさんのポーズをしているように思えてきた。それを思い浮かべたら実況の子が凄く可愛く思えた。


【……ッハ!今何か馬鹿にされたような気がする!……気のせいか。とりあえず2人同着でゴールしました!】


「ここからが本番な気がしてきたんだが。」


「うぅ、やっぱり手を繋いでいても緊張するものだね。」


 これから、2人一緒にお題を聞かれるって思うと収まった緊張がまたぶり返してきた。やっぱり無しにならないかな?


【おっと、言い忘れていたけどここでも新しいルールーがあるからね!最近借り物競争のお題を知られるのが恥ずかしいっていう子が多いから今年からお題を公表するのは自由になりました!】


「ほんと!?じゃあ、言わなくても良いんだね。」


「これは本当に救われたな。」


 やった!やっぱり私と同じような考えを持つ人もいたんだね。葵は私に教えちゃったけど私は誰にも教えなくていいんだよね。


【まぁ、私と審判の人には一応確認っていう形で見せてもらうけどね。じゃ、早速2人の奴持ってきてね。】


「預かるのでお題の紙を渡してください。」


「実況の子はどういう反応するのかな?」


「どうだろうな。少なくても俺たちがお互いどう思っているかは知られるだろうな。」


 さすがに全員に全く知られないと言う訳ではなかった。でも、2人にバレるだけで後はバレないから良いかな。


【まだかなーまだかなー……お、きた!皆は僕の反応を見てお題を想像してね。】


「皆にもばれちゃうかな?」


「どうだろうな。男女が2人でゴールするって時点でそういう系かって察する人もいるんじゃないか?」


「あ、確かに。私もそれ見たらそう考えるかも。」


【……ほほうほうほう。これは、人に見せられないような顔でにやけちゃいそうだよ。休日とかずっと観察してたくなるね。】


「つまり、実況の子は人の恋愛を見てにやにやしちゃう子だってことが分かったね。」


「それはそうだが、注目するべきところはそこか?」


 だって、それ以外に何もない気がする。でも、他人の恋愛を見てこっそりにやにやしちゃうのは分かっちゃうかも。


【文句をつけれないくらい合格!後は2人でごゆっくりしてください?】


「ごゆっくりする?」


「さすがにこんなに人が多い所ではちょっとな……」


「じゃあ家に帰ったらするの?」


「それは……まぁ、するかもしれない。」


「……ぅん。」


 私、家に帰った後何をされるのかな?

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