すぐにデレちゃう幼馴染

第61話 裏

「やったぁー！」

「よしっ！」

「くそぉ、惜しかったなぁー！」

「まぁでも、2位だからいいんじゃね？」

　1位をとれたことを葵と一緒に喜び合う。ぎりぎりで２位になっちゃったクラスには悪いけど、これも競争だからしょうがないよね。

【じゃあ２年生は自分たちのベンチに戻ってね。】

「ここからじゃ遠いな。」

「皆ゆっくり移動してるし私たちもゆっくり移動しよ。」

　クラスの皆もゆっくり歩きながら皆で喜び合ってるし、私たちもゆっくり歩いてそうしても良いよね？

【いやぁ、これは良いものを見れたなぁ。最初で崖っぷちになったけど最後の最後で逆転１位！アニメのシーンみたいだったよ。】

「ふふん、だってさ。」

「見世物じゃないんだけどな……いや、必ず見られるけども。」

　確かに実況の子の言う通り、最下位になってから最後に逆転するなんて話、アニメとか漫画みたいな話だよね。

　それを私たちがしたんだって思うとなんか少しにやにやしちゃう……あ、間違えちゃった。私たちじゃなくて皆でだったね。

【ああもう、分かってますよぉ。もう少し待ってくださいって……最後に皆に言いたいことがあるけど聞きたいやつはいるかー！聞きたいやつは返事しろー！】

「「「聞いたーい！」」」

「聞きたーい！」

「玲奈まで……確かに気になるが……」

　だって、いかにも聞いてくださいみたいな感じじゃん？それに何の話か気になるし……私と同じ考えの人だっていっぱい居るもん。

【そうかいそうかい、そんなに聞きたいのなら聞かせてやろうじゃないか！というわけで先生少し時間貰うね。】

【あー、あー……分かったから早くしてくれよ？あんまり時間ないんだから。】

「あ、あの声私たちの先生の声じゃない？」

「本当だな、実況を担当していたんだな。」

【実はさぁ私、というか秘書君がなんだけどね面白いことをSignで教えてくれたんだよ。】

　なんか、他の先生の代わりにマイクで喋ることになったのかな？実況の担当者ってことで。でも、いつもの面倒くさそうな声だし、大丈夫そうだね！

【それでさぁ、２組の子が転んじゃったじゃん？なんと！それを見て笑っている人たちがいたらしいんだ！】

「転んだのって……」

「納泉さんと石晶のことだろうな。」

　２人のことで何を言うのかなって思ったけどその前にもっと気になることがあった。秘書君って何者なの？２年生なのかな？

【きっとさ、その転んだ人たちってたくさん練習したと思うんだ。それを馬鹿にするって皆的にどう思う？】

　実況の子の声を聴いてそうだそうだって思う。誰だって頑張ってることを馬鹿にされたら辛いし怒りたくなるよ！

　ドームにいるほとんどの人が「最低！」とか「ないわー」とか否定的なことを大きな声で他の遠くの人に聞こえるようにしてる。

【だよねぇ、じゃあ、君たちはどう思う？４組のA君、H君、O君達？】

「これは……かなりえげつないやり方だな。」

「そ、そうだね……実況の子って怖いね。」

　多分だけど今名指しされた３人って馬鹿にした人たちだよね。名指ししちゃったらその人がやったも同然ってみんな分かっちゃうね。

　今だってほら、その３人かな？４組の方を見てみると近くの人に何か言われてる。あの中には軽蔑してる人とかも良そうだね。

【僕は、あくまでも練習の成果を見せるところで、皆で楽しむのが体育祭だと思っている。決して馬鹿にするところじゃないってね。僕からは以上だ。じゃあ１年生の部、行ってみようか！】

「最後は軽く終わらせたな。」

「この話を引き摺っていたら体育祭が楽しめないじゃん。」

「それもそうだな。」

　実況の子がいろいろ言ってくれたおかげで、私の溜飲が下がったというか、もういいやって感じになった。あれだけされれば充分過ぎるくらいかな。

【さぁ、１年生諸君！君たちは初めての体育祭ということだから先生も多少、ほんのちょっとだけ失敗しても誰も怒らないさ！目いっぱい楽しんでね！】

　実況の子の合図で１年生が一気にグラウンドに出てくるけど気のせいかな？少し緊張してるようにも見える。まぁ、この話の後だからしょうがないかもね。

　１年生の２組、頑張ってね！

「あ、翠ちゃんお帰り。」

「大丈夫だったか？」

「え、ええ。私は大丈夫だけど……石晶は骨折して今から病院に行くみたい。」

　それからしばらくしてから翠ちゃんは私たちのところに戻ってきた。その顔はなんかちょっと気まずそうにしてる。

「そうなんだ……翠ちゃんは桔梗君について行くの？」

「わ、私？私は………体育祭が終わってからお見舞いに行くわ。」

「石晶の奴、暇していたら喜ぶんじゃないか？」

「それは無いんじゃないかしら。私のせいで骨折したんだし。それに、またクラスの足を引っ張っちゃったし。」

　そんなことないと思うんだけどなぁ。桔梗君だってきっと喜んでくれると思うのに……翠ちゃんは自分がやったっていう負い目があるのか否定してくる。

「引っ張ってないよ！翠ちゃんが競技始まる前に皆に声をかけてくれたから、みんなやる気出たんだよ！」

「助かったぜ！」　　　「ありがとう納泉さん！」

「そう……そうなんだ。ありがとう、皆。」

　ほら、皆翠ちゃんに感謝してるんだからそんなに自分を責めなくてもなくても良いの！次に競技で頑張ればいいの！

「納泉さん、１つだけ聞いていい？」

「あ、遠藤さん。どうしたの？」

「その……ね？掘り返すようで嫌なんだけど、転んだ時に桔梗君のこと、その……アキって呼んでたの気になって……」

「そ、それは……」

「あ、私も気になるなぁ。アキって桔梗君のことだよね？」

「も、もう！今は、その話は良いでしょう！と、とにかく！次からは気を付けるし、次の競技は頑張るから！」

　ふふん、ようやくいつもの翠ちゃんに戻ったね。桔梗君のアキ君呼びは気になるけどはぐらかされちゃった。

　翠ちゃん、私だけにでも聞かせてくれないかな？