第58話 表
すみません、予約投稿忘れてました……
「あ、葵。おはよぉ。」
「あぁ、おはよう。早速だが帰っていいか?」
「ダメだよ。嫌でも頑張らなくちゃ。」
体育祭当日の朝。いつも通り玲奈と一緒に目的地へ向かう。今日は体育祭なので学校ではなくドームへ現地集合だ。
勿論制服は許されずジャージで行くしかない。短パンとクラスTシャツという格好で行かなければならないが、大体の人は上に長袖のジャージを着てTシャツを隠している。
「なんで、ドームに行かなきゃならないんだ。どうせ無観客なら学校のグラウンドでもいいだろ。」
「学校のグラウンドじゃ小さいんじゃないかな?ほら、私たちの全校生徒数って結構多いって言うし。」
「そうかもしれないが……わざわざ少し遠い所に集合って言われるとなぁ。」
生徒数が多いのは分かる。そのせいで体育祭になると親御さんがいっぱい来て大変になるから無観客なのも分かる。
だが同時にこう思ってしまうんだ。競技に出ない人は教室やら何処かで待機すればいいし無観客ならやる必要なくないか?
「ほら、午前で終わって帰れるって思おうよ。帰ったら一緒にご飯食べよ?」
「……そうだな。ポジティブに考えよう。帰ったら何食べようか。」
「何にしよう……帰りにスーパー寄って帰る?」
「そうするか。俺も食べたいやつ考えておくよ。」
これで体育祭後の楽しみが増えた。2、3日ぶりに食べる玲奈のご飯が楽しみだ。今回は何を作ってもらおうか。
「あ、二人三脚用のタオル持ってきた?」
「うん?……あぁ、カバンの中に入ってるぞ。」
「よかったぁ。二人三脚も頑張ろうね。」
「油断は禁物だが1番大丈夫そうな競技だよな。石晶と納泉さんは上手く出来るようになったのか?」
「どうだろう。でも翠ちゃんから練習してるってことは聞いてるよ。」
体育の時間で結構失敗していたから大丈夫かと気になっていたんだが練習していたんだな。それなら大丈夫だろう。いざとなったら石晶がリードするさ。
「お、ドーム見えてきたな。」
「ほんとだ。これなら余裕で間に合いそうだね。むしろ暇になっちゃうかも。」
「ほかの人達も少しくらい入るんじゃないか?特に石晶と納泉さんは議長副議長だから早いうちに来るかもだし。」
「議長って大変そうだよね。」
「見ていても大変だってわかるよな。HRの進行とかもやらなきゃいけないし、昼休みに招集がかかる時もあるしな。」
それを考えると議長をしている納泉さんって凄いんだな。副議長もそこそこ大変そうだし、本当にあの2人は凄いな。
「あ、あそこにいるの翠ちゃんと桔梗君じゃない?」
「お、本当だ。2人も今向かってたんだな。」
「おーい!翠ちゃーん!」
玲奈が大きな声で2人を呼ぶ。納泉さんは声が聞こえたほう、俺たちの方を向き目を見開いた気がした。こんなところで会うとは思わなかったのだろう。
「葵っ、行こ。」
「あ、おいちょっと待ってくれ。」
「早くしないと置いて行っちゃうもん。」
そういって玲奈は駆け出し2人のところへ向かっていった。俺も玲奈を追いかけるようにしてそちらに向かった。
【さぁ、いよいよ体育祭の始まりです!選手の皆さん頑張ってくださいね!実況の私はここでゆっくりしとくから!どうだ、羨ましいだろ!】
「いいなぁー、私もゆっくりしていたいなぁ。」
「実況の人、一言多いが実際に羨ましいな。」
【あ、ちょっ、先生……え?今のダメ?やり直し?……そんなぁ。】
実況の人の羨ましいかという投げかけにあちこちで「羨ましぃー!」と叫んでいる男子がちらほらといる。
しかし、締まらない体育祭の宣言はどうやら先生的に駄目だったらしく実況の人はやり直しを食らっていた。
【あー……これから体育祭、始めまーす……選手の皆、頑張ってねぇー】
「あ、やる気なくなっちゃった。」
「ドンマイと言えばいいのか、自業自得と言えばいいのか……」
「さっきの方が良かったなぁ。どうせなら少しでも面白くすればいいのに。」
「どうせ出番じゃない限り暇だしな。少しでも面白い方が楽しいのにな。」
それなのに格式が大事とか何とかでやり直しをさせられた実況の子はかわいそうだな。他の生徒も盛り上がっていたところに水を差されて気分が台無しといったところだろうか。
【アー、アー……えっと、まずは団体競技になった二人三脚からだね。噂で聞いたんだけどいい感じのペアがいるってほんと?】
「良い感じのペア……翠ちゃん達かな?練習の時も楽しそうだったし。」
「確かに、言い合ってたりしていたが、終始楽しそうだったよな。」
【あ、まじ?本当に居たんだ、ありがとう秘書君。この調子で私が気になったことの情報収集よろしくぅ。】
どうやら実況の子が気になったことを近くにいる人が情報を集めて教えているらしい。楽しくすることは禁止されたがせめてこれくらいはという意趣返しだろうか。
実際、さっきよりも楽しそうなので、体育祭も暇じゃなくなりそうだ。実況の子にはこれからも先生に何か言われながら頑張ってほしい。
「俺たちのクラスは、もうちょい先だから、まだゆっくりしているか。」
「そうだね。葵、膝まくらしてもいい?」
「ほかの人に迷惑にならないなら良いぞ。」
「私たちも周りに誰もいないから大丈夫だね。」
ぽすっ
「んん~やっぱり膝まくらって気持ちいいね。」
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