第30話 裏

「もう帰っちゃうの?」


「もうって、もう夕方なんだが。」


 お昼ごはんを食べてからは時間があっという間だった。葵とスマシスやって2人で熱中していたのもあるかも。


 でも、もう帰っちゃうのかな。まだ夕方だから晩ご飯もこっちで食べてしばらくしてから帰っても良いと思うのに。


「ねぇ、やっぱり今日も泊まろうよ。」


「俺も勉強があるんでな。」


「むぅ………けち。」


 何なら泊まって今日一日中遊ぶっていうのでも良かったのに。勉強を盾に断られちゃった。変なところで真面目なんだから。


 それにしても困ったよぉ。私、まだ葵と遊びたいのに。遊び足りない。遊ぶっていうか抱きしめて貰いたいだけなんだけどね。


「あんまり我が儘言ってると、それがテスト後のお願いになるかもなぁー。」


「………ずるい。もう、我慢するからっ。」


 うぅ、我慢すれば良いんでしょ!我慢すれば。テストのご褒美がお泊まりはなんかいや。もっと特別なことをお願いするつもりなのに。


 なでなで


「ありがとな。テスト終わったらまた泊まるから。」


「ぁぅ……こ、こんな簡単ななでなでなんかで許してあげないからっ。」


「じゃあ何をすれば良いんだ?」


 うぐぐ、私の機嫌を治すためだけに頭なでなでしないでよぉ。い、今の私にはそれ以上の行動じゃなきゃ機嫌治してあげないんだからっ。


「んっ!」


「その広げた手はいったい?」


「んっ!」


「……まさか、ここでしろと?」


 私は許す条件を身体で表現する。さすがに鈍ちんの葵でも分かるよね。してくれなきゃえーっと……色々しちゃうんだから。


「それやって帰んなきゃ駄目か?」


 コクコク


「これやるまで帰してくれないのか?」


 コクコク、ブンブン


 私は頭をコクコクと何度も上下に振って頷いた。やらなきゃ帰さないといいますか、家についていってやるんだから。


 それで葵の勉強の邪魔してやる。そうすれば私に構わなきゃいけなくなるから私には嬉しいことしかないよね?


「じゃあ、はい。」


 ギュッ、ギュー


「ぎゅー。」


 葵が抱きしめてくるので強めに抱きしめ返した。こうしているだけで幸せ。私は外でしていることも忘れた。


「………」


「………」


 まだ葵成分足りないから離してあげない。どのくらい時間たってるかな?まだ2、3分位だよね。


「……じゃあ、明日またな。」


「……うん。私がんばるから。」


 そこからもうちょっと抱きしめてた。さすがにそろそろ周りの家の人たちに見られるかもだから仕方なくやめた。


 葵は抱きしめるのをやめた後、ちょっとだけ名残惜しそうにして帰った気がする。


 そんな風になるならもうちょっとしてほしかったなぁ。




 ____________________________________________





「うぅ……葵成分が足りないよぉ。そう、会いたいよぉ。」


 私は夜ご飯を食べた後、部屋のベッドの上でゴロゴロ転がってた。私には早急に葵のハグが必要だよぉ。


「そうだ!」


 どうせ明日は勉強しなきゃいけない。だけど葵と一緒だから少しだけ露出多めの格好になれば葵も何かしてくれるかな?


 だけどあまり分かりやすい格好していたらばれちゃうよね。不自然じゃないようにするのと、葵がドキドキする服装にしなきゃ。


「あ……そんな服なかった。」


 私、服そんな買わないタイプだった。つまり、葵をドキドキさせる服装は無理?作戦も前段階で失敗?


「むむっ……絶対ドキドキさせるんだから!」


 こうして私の服選びが始まった。




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「ふぅ~……これで良いよね。」


 やっと終わったぁ。時計を見ると1時間も経ってた。服選びでこんなに時間掛かったの久しぶりだなぁ。


「ふふん、これで葵だってドキドキしてくれるはず!」


 私が選んだ服装はダボタボのTシャツとショートパンツ。これで葵はドキドキすること間違いなしだよね。


 ショートパンツで脚を露出してダボタボのTシャツでショートパンツを隠す。そうすれば下に何も着ていない感じの女の子が出来上がるはず。


 ついでにTシャツがダボタボだから下着が見えそうで見えないようにすれば向い合わせで勉強してても顔をあげたら少しはそこに目がいくよね。


「もしかして……すごく良い感じ?」


 私って服のセンスあったんだぁって思うくらい上手くいく気がしてきた。でも、成功するのと服のセンスがあるのは違うんだよね……


「私センスないからなぁ。」


 そろそろオシャレとか覚えなきゃいけない気がしてきた。葵の前では綺麗でいたい。今度翠ちゃんと一緒に服買いにいこうかなぁ。


「………あれ?ちょっと待って。」


 そういえば下着が見えそうで見えないようにするんだったらもしかしたら下着が見えちゃうこともあるよね。


「……可愛いのにしなきゃ。」


 もし葵に下着が見られて、それがおばさんとかがしてそうなものだったら引かれちゃう。そういう感じの物あんまり無いんだけどね。


 でも、どうせなら1番可愛いのつけなきゃ。葵の好きな色のやつ選んで、その中で1番可愛いのにしよう。


「玲奈ー。お風呂入りなさーい。」


「え?……わっ、もうこんな時間!?」


 気づいたらさらに時間が経っていた。早くお風呂入らなきゃ。でも、可愛いやつ選ばなきゃだし忙しいよぉ。


 でも、明日が楽しみだなぁ。

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