第30話 表
「もう帰っちゃうの?」
「もうって、もう夕方なんだが。」
玲奈からのお願いを聞いた後、俺達は少しぎこちない感じで昼ご飯を食べた。食べてるときはおばさんのにやにやした様子が目に入りげんなりした。
ご飯を食べた後はぎこちなさを無くすためにスマートシスターズ、略してスマシスで遊んだ。もちろん俺は玲奈を抱きしめながらの参戦だ。
俺はキャラクターをランダムにして戦うというハンデがあったのだがそれでも半分以上勝った。しかし、良い勝負のときもあり非常に盛り上がった。
そして、あっという間に夕方になって今に至る。もうお願いの延長タイムは終わった気がするし、明日からはまた勉強漬けだ。
そんなわけで帰ろうとしたのだが、玲奈は帰ってほしくなさそうにしている。今だって玄関で必死に俺を引き留めようとしている。
「ねぇ、やっぱり今日も泊まろうよ。」
「俺も勉強があるんでな。」
「むぅ………けち。」
むくれた顔をするのは可愛いのだがけちは失礼だ。もともとこういう約束だったのに、これでは俺が悪者になった気分だ。
「あんまり我が儘言ってると、それがテスト後のお願いになるかもなぁー。」
「………ずるい。もう、我慢するからっ。」
少々手荒だがテスト後のご褒美を盾にして回避した。あれ?もしかしなくとも結局俺って酷いやつ?悪者になった気分じゃなくて悪者だったか。
なでなで
「ありがとな。テスト終わったらまた泊まるから。」
「ぁぅ……こ、こんな簡単ななでなでなんかで許してあげないからっ。」
「じゃあ何をすれば良いんだ?」
どうやらご機嫌取りのなでなではおきに召さなかったらしい。それのわりには嬉しそうだったのは言うべきだろうか。
「んっ!」
「その広げた手はいったい?」
「んっ!」
「……まさか、ここでしろと?」
玲奈が手を広げて何かを催促したのだがすぐには分からなかった。少し考え、思い当たったものがあったのだが人前ではあまりしたくないやつだった。
「それやって帰んなきゃ駄目か?」
コクコク
「これやるまで帰してくれないのか?」
コクコク、ブンブン
玲奈は俺の質問に手を広げながら顔を使って返事してくれた。2つ目の返事に限ってはめちゃくちゃ勢いがあった。どれだけ帰ってほしくないんだよ。
「じゃあ、はい。」
ギュッ、ギュー
「ぎゅー。」
俺は仕方なく玲奈を抱きしめた。いや、仕方なくではないか。心の何処かでは喜んでいる俺もいた。
「………」
「………」
どちらも抱きしめるのをやめようとしなかった。結局俺も玲奈といたかったってことなんだよなぁ。否定はしないが。
「……じゃあ、明日またな。」
「……うん。私がんばるから。」
お互いに抱きしめるのをやめる。さすがにここで長くして他の人に見られたくないしな。周りの家の人たちの間でアレコレ噂になりたくないしな。
俺は少し寂しさを覚えながら家に帰った。玲奈がいなくなるだけでこれなんだからもう玲奈がいない生活は耐えられないんだろうな。
さて、ゆっくり悩みごとの整理でもしますかね。
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「はぁ。」
俺はご飯を食べて部屋でゆっくりしていた。ご飯中は母さんの聞きたいオーラが凄かった。というか情報伝達速すぎないか?
「まぁいいか。」
そんなことは今はどうでも良い。今考えるべきことは玲奈のことだ。今の俺の頭の大半は玲奈について考えてる。
考えていることは最近の玲奈についてだ。
最近妙にハグをせがんできたり、今日みたいに恋人同士で言い合うような言葉をせがんだりしてきてる。
まぁ、俺としては玲奈に触れあえて嬉しいのだが、玲奈はどんな気持ちで俺にそれらをお願いしてるんだろうな?
うーん………インターネットで調べてみたら特徴とかでてくるのか?それ当てはまるなら玲奈はもしかしたらということなのかもな。
「よし。女の子が好きな人に見せる特徴っと。」
調べたら滅茶苦茶その事に関して書いているサイトがあるんだが。とりあえず上から順に見ていくか。
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「わからねぇ……」
アレコレ色んなサイトを見てみたものの玲奈がそれをしているかと言われると全然分からない。
ああ、でも玲奈がいつもしていることも特徴としてはあったな。えーっと、たしかこのサイトの……あったあった。
·笑顔が多い
·ボディタッチが増える
·可愛く拗ねる
·赤面する
とかだったな。1つずつ詳しく当てはめてみるか。
まず笑顔が多いか。玲奈はもとから笑顔が多かったしな。少しでも嬉しいことがあるとそれだけで笑顔になってたからなぁ。
次、ボディタッチが増える。最近は増えてきたよな。いつもしてる気がするし、さっきの帰る時もしたしな。
次、可愛く拗ねる。これはあったな。ボディタッチができなかったときとか「むぅ、」とか言ったりして拗ねてるな。
最後、赤面する、か。これもしていたな。今日は1段階上のしばらく戻ってこない状態になったしな。
一通り考えてみたが結論はやっぱり分からないだ。それに、サイトの特徴で当てはまっても玲奈がどう思っているかは分からないしな。
「いや、4つ中3つ当てはまるということはそう思われてるのか?」
玲奈に当てはまりそうなもの中で3つも当てはまるなら少しは可能性がでてくるのか?……ここは可能性があるということにしておこう。
しかし、それで安心するつもりはない。玲奈は可愛いからモテる。モテると色んな人から告白される。その時に俺より良い奴がいたらどうしようもないのだ。
これからはもう少し攻めてみるべきか。いや、でも今でも積極的に行っているつもりなのだがこれより上は難しいな。さすがに大胆に人前でハグとかは俺も無理だし。
ここは小さめのスキンシップを多くしていくか。
そうと決まればさっそくどんなことをしていくのか、大雑把に考えるか。自分から手を繋ぐとかだろうか?
俺はテスト勉強そっちのけで玲奈のことについてばかり考えた。
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