すぐにデレちゃう幼馴染

第26話 裏

「ほら、早く入ってよ。」

「あ、ちょ、押さないでくれ。」

「葵がいつまでも入るの悩んでるからだよ。」

　私は家の前で葵を押していた。だって、いつまで経っても家に入る気配がないんだもん。そんな人には無理矢理でも入らせなきゃね。

「お、お邪魔します。」

「いらっしゃい。やっと来たわね。」

「葵が準備ゆっくりしてたからだよ。」

　家に入るとお母さんが目の前にいた。私達の声がうるさかったから聞こえたのかな。そこから葵が入らない時間も合わせて10分位いたのかな？

「ほら、早く入って。もうご飯出来てるから。」

「ほんと？お腹すいてたから良かったぁ。ほら、葵も早くっ。」

「お、おう。」

　正直に言うともうお腹ペコペコなんだよね。勉強で集中したせいかもしれない。今日のご飯は何かなぁ？

「あ、ご飯の時に玲奈と葵君のアレコレ、色々聞いちゃおうかしら。」

「え！？」

「玲奈から少し聞いたのだけれどもっと聞きたくなっちゃったのよ。」

　あ、そう言えば通話で話してた時にお母さんに喋っちゃったんだった。でも、あれは葵がすぐに大丈夫って言わなかったから言うはめになったので葵が悪い気がする。

「ふふっ、逃げようとしても玲奈から聞くから。」

「……分かりました、話しますよ。」

　葵はがっくりと項垂れた。あれ？私の方まで被害来ちゃう？私はさっき言ったからお母さん見逃してくれないかな？

　えっと……葵、頑張って。

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「ふぅ、疲れた。」

「お疲れ、大変だったね？」

「いや、玲奈のせいでもあるんだが。」

　私と葵は部屋に戻っていた。葵は疲れ気味だけどそれも仕方がないと思う。ご飯を食べた後、葵はお母さんからの質問ラッシュを受けていた。

　私はあの後葵に巻き込まれないようにするためにすぐにお風呂に入った。でも、お母さんは私がお風呂上がっても質問責めしていたの。

　かなり長い時間色々聞かれたと思うから葵にお疲れさまって心の中で思ってたら、お母さんが目敏（めざと）く部屋に戻ろうとする私を見つけて私も一緒に話すことになった。

「うっ……だって、葵がお泊まりの許可取れって言ったから。事情説明のために仕方なく……」

「元は俺が原因かよ。失敗したなぁ。」

　部屋に戻ってから私のせいだって言われてもそういう風に仕向けたのは葵だよってしか言えないよ。

「まぁいい、今さら後悔したところでだしな。」

「そうだね。じゃあ早くこの前の続きしよ？」

「まてまて、まだ寝る時間でもないだろ。」

　やっと2人きりになれたから今回のお泊まりの目的を果たそうと思ったのにまだ早いって何でだよぉぅ。早いとか遅いとか関係ないじゃん。

「別に寝る前にするって訳じゃないから良いじゃん。早くしようよぉ。」

「分かった分かった。」

　我が儘っぽい感じでごり押ししちゃったら葵は折れちゃった。あれ？もしかしてこういう時って我が儘風にしてればいけるかな？

「ほら早く胡座（あぐら）になって。」

「へいへい、分かりましたよ。」

　えへへ、この前やった恋人っぽい抱きしめ方してもらうんだぁ。なんか、大切な人だよって表してる感じもするし、守られてるって思っちゃうんだよね。

「ほらぎゅーも早く。」

「分かったからそう急かさないでくれ。」

　ギュッ

　私が真ん中の穴に座ってぎゅーを要求すると葵はゆっくり腕を回して抱きしめてくれた。そんな恐る恐るみたいな感じでやらなくても良いのに。

「はふぅぅ……極楽ぅ。」

「風呂に入っときみたいな声を出さないでくれるか？」

「むぅ、そんな声してないし、お風呂の私みたこと無いじゃん。」

　昔の頃は一緒にお風呂に入ったこともあるけどこんな声出してなかったし、あの頃と今では声も少し違うしね。

「ま、いっかぁ。今はぎゅーを堪能しなきゃ。」

「堪能って、別に言ってくれたら考えなくもないけどな。」

「ほんと？」

　葵は私がしたいって言ったら考えてくれるらしい。やった、これからはしたくなったらすぐに葵に言ってしてもらわなくちゃ。

「じゃあ、これからして欲しかったら言うね？」

「……せめて時と場合を考えてくれよ。」

「分かってるよー。」

　フッフッフッ、学校でこれは出来なくてもこれより簡単なことを後から言えばしてくれる確率上がるよね。

　確かこれって心理学の何とかって名前の心理だったはず。この前テレビでやってたんだよね。考えてみたらそうかと思ったんだけど違ったかなぁ？

「てかいつまですれば良いんだ？」

「勿論私が満足するまでぇ～。」

「………まじか。」

　だって、そもそもこの前の続きなんだから私が良いって言うまで葵は私の言いなり(仮)なはず。私が満足するまでって言ったけどすればするほどどんどんしたくなっちゃうんだよね。

　多分だけど、眠るまでずっとこのままだと思う。それくらい好きな体勢になっちゃった。幸せになれるからこうなるのもしょうがないよね。

　それから私はその体勢のまま葵と雑談をした。途中、話すことがなくなっちゃって無言になったんだけどそれも心地良かった。

　無言で心地良くしていたら、毎日の勉強の疲れが一気に押し寄せてきたのかな？急に眠くなって思わず目を瞑ってしまった。

　そうしてしまったら最後、あっという間に私の意識は深いところに落ちていってしまった。