第16話 裏

「そういえば何処向かってるの?」


 しばらく歩いたけど何処に向かってるか分からないから葵に聞いてみた。結構歩いた気がするんだけどまだ着かないのかな。


「イ○ンに向かってる。そこで玲奈の服を見ようと思ってな。」


「えっ!?」


 イ○ンはいろんなものが売ってるから暇潰しには最適だね。だけど、私の服を見る?見るってことは良いやつがあったら買うってことだよね?


「どうした?」


「い、いやっ、わ、悪いよぉ。」


 葵だって好きなものにお金を使いたいはずなのにわざわざ私の服を買わなくても良いのに。お金の無駄遣いになっちゃうよ。


「お金なら心配しなくても良い。母さんに無理矢理渡された分もあるから少し高いやつ選んでも間に合うぞ。」


「それもあるけど、そうじゃなくて。服なんて別に買わなくても良いよぉ。」


 お金はおばさんから渡されたらしい。どうしてお母さんとかおばさんはおせっかいを焼きたがるのかな?


 それに、葵が買ってくれた服は着れないよぉ。着ただけで幸せになっちゃうから。嬉しすぎるから。


「そんな遠慮しなくても良いんだけどな。まぁ、とりあえずイ○ンに行こう。」


「うん。けど、ほんとに買わなくて良いからね?」


「はいはい。」


 いかにも話を聞いてないですみたいな感じで葵は聞き流した。むぅ、後からこっそり買わせないからね。




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「とうちゃ~く。」


「ゆっくり歩いたから結構長く感じたな。」


 やっとイ○ンに着いた。やけに長く感じたけど葵の言う通り恋人繋ぎしていたくてゆっくり歩いたんだった。


「よし、じゃあ早速玲奈のふ……」


「買わせないから。」


 気を抜けばすぐそんなことを言う。何でそんなに買わせたいんだろう。おばさんの指示とかかなぁ。


「はぁ、じゃあゲームでもやるか。」


「あれ?意外と引くのが早いね。」


「あまり強制してもな。」


「ふーん。じゃ、ゲームコーナーに行こ。」


 てっきり何がなんでも買わせるのかと思ってたんだけどそうじゃないらしい。あまり強制したくないなんて葵らしいや。


「玲奈、ゲームで何かを賭けて遊んでみないか?」


「いいよ。お願いはなんでも良いの?」


「ああ。」


 ゲームコーナに向かってるとゲームで勝負したいらしい。負けた方は勝った方のお願いを1つ聞くとか。


 もしかしてこれで服を一緒に見て買うとかかな?そうだとしたらあからさますぎない?バレバレなんだけどなぁ。


「じゃあ、何で勝負しよっか。」


「そうだな……メダルゲームとかどうだ?」


 とりあえず葵の話に乗ってみた。私だって葵にお願いしたいことの1つや2つ……いっぱいあるもん。


「うん、それで良いかも。」


「よし。じゃあそれにするか。」


 メダルゲームで勝負することになった。初めてやるゲームだけどたしかメダルを増やしていくゲームだよね。


 子供向けや大人向けのゲーム機がいっぱいある。私は初めてだから子供向けのゲームで増やしていけば勝てるよね。


 勝負をすることになったからルールを付けた。ふむふむ、80枚から始めて30分で葵よりも多くすれば良いのね。思ったよりも簡単そう。


「さて、両替するか。」


「うん。負けないから。」


 1人ずつメダルに変える。葵はちゃっかり私の分もやってたんだよね。葵だけお金使ってる。私別に払えないわけじゃないんだけど。


「準備オッケー。」


「俺もだ。じゃあ、30分後にな。」


「うんっ。」


 2人分のメダルが準備できたので葵からメダルを受け取って別れる。今から勝負は始まった。よしっ、頑張るぞ~!




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 10分後……


「うぅ、そう。メダル無くなっちゃった……」


「そ、そうか。ドンマイだったな。」


 あっという間にメダルがなくなっちゃった私は葵がいるところに移動して葵になくなったことを伝える。


 私が持っていたメダルは子供向けのゲームに吸いとられるようにして無くなっていった。あんなに難しかったなんて思わなかった。


「じゃあ、俺の勝ちということで……」


「うん……」


 私のメダルはなくて葵のメダルはまだあるから必然的に葵の勝ちになる。私が勝って葵にお願いしたかったなぁ。


「そんなに落ち込むほど俺に何かさせたかったのか?」


「うん……葵と……」


「俺と?」


 一日中ギュッてして過ごしたい。


 この時、落ち込んでいた私は葵の問いに普通に答えてしまっていた。


「何て言ったんだ?」


「な、何でもないよ!それより葵のお願いってなに?」


 言ってから気づいて大慌てするけど葵には聞こえてなかったみたい。良かった、聞こえていたら恥ずかしくて布団に籠って亀になる自信しかないよ。


「えっとな、いつもお世話になってる人に送る服を選んで欲しいんだ。」


「……それって後から私に渡すとかじゃないよね?」


 怪しい。葵がお世話になってる人って私がみたところいないんだけど。私に服を渡すための口実としか思えないよ。


「いいや、正真正銘別の人だよ。よく学校でお世話になっていてな。」


 葵は怪しく思っている私にその人のことを教えてくれた。


 私が葵と変えるようになる前よくお世話になってたらしい。その人は今年で卒業で、お世話になったから何かプレゼントしたいんだって。


 葵がその先輩に聞いたら服が良いって言ったから同姓の私の意見も参考にして選びたいらしい。


「だから、背丈も同じ感じだし女の子の玲奈からも意見が欲しくてな。」


「………」


 葵の話を一通り聞いて、私は俯いた。今の顔を葵に見られたくなかった。嫉妬でどうにかなっちゃいそうだった。


 こんなこと思うのは間違ってるって分かってる。私が照れ隠しで服を買わなくて良いって言ったことを後悔してる。


 他の女の子に服を買うのに私には買ってくれないなんて思っちゃいけないのに。嫉妬や後悔で涙が出そうだった。でも我慢した。


 葵が他の女の子と話してるのをみたり聞いたりしていつまでもすぐに泣くようじゃ何時か嫌われちゃう。少しずつでも我慢していかなきゃ。


「ぅ、ぅん……分かった……わ、私も手伝うよ……」


「……っ!」


 私は泣きたいのを必死に我慢して顔をあげて手伝うことを伝えた。声もちょっと震えてるけどこれで良い。少しずつ、一歩ずつ。


「……ああ、ありがとな。じゃあ、選びに行くか。」


 私は無言で葵と手を繋いだ。恋人繋ぎだ。何時もよりちょっとだけ強く握っちゃった。手も微かに震えてる。ばれたくないなぁ。


 私は葵がお世話になっていた先輩のために送る服を選ぶため移動し始めた。




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 あとがき


 今日で連載してから1ヶ月が経ちました。5000PVを越えました。正直1000PVいくかなと思ってたので嬉しいです。

 少ないと思うかもしれませんが初心者の私にはとても多く感じます。

 自分で書いてみてランキング上位帯の人たちって凄いと思えるようになりました。


 これからも頑張るので星やハートをポチっていってください。

 皆さんに感謝です。m(。_。)m

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