第15話 裏

「お、おい。さすがに外出るのは着替えてからな?」


 私は葵を引っ張ってそのままの格好で行こうとしていたところだった。葵に言われて気づいだけど、私の格好パジャマだった。


「あ……ぅん。」


 私こんな格好で行こうとしてたんだ……恥ずかしい。嬉しすぎて肝心なことを忘れていたよぉ。


「お互い家で準備するか。先に準備できた方がまだの方の家に行くっていう感じでいいか?」


「うん。それで良いよ。」


 それから、やっぱりお互い準備は必要ということで準備できてから合流ということになった。葵とデートだからいつもより可愛くならなくちゃ!




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「ただいまぁ~」


 私は家に帰りすぐに2階へ向かう。どんな服にしよう。春だけどまだ少し肌寒いから暖かい服にしようかな?


「お帰りなさい。早かったわね?」


「着替えに着ただけだよ。またすぐに出るから。」


 お母さんに呼び止められた。今日はずっと葵の家にいると思ってたのかな?私もさっきまでそう思ってたんだけど。


「あらそう。なら早くしなくちゃね。」


「うん、早くしなきゃ遅れちゃう。」


「ふふっ、張り切っちゃって。葵君とデートなのね。」


 私は急いで階段を上り部屋に入る。ドタドタとうるさかったからお母さんが何かを言ったことに気づかなかった。




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「うーん、どんなのにしようかな?」


 服を選ぼうとしたところで気づいたんだけど、私そんなに服持ってないんだよね。友達なんて翠ちゃん位だしそんなに頻繁に遊ぶわけでもないしね。


「これしか良いのないかも。」


 結局選んだのはデニムにパーカーのシンプルセット。シンプルが一番ってよく言うから良いよね。


「後は……」


 次に髪を整える。といってもアイロンをするだけなんだけどね。少しだけいじりたいけどそうすると時間掛かっちゃうからね。


「よし、髪もオッケー。どうしよう。お化粧、してみようかな。」


 普段はしないんだけどやり方は知ってるし、葵とデートだからしようかな。うっすらとするくらいだけど。


 葵は気づいてくれるかな。気づいてくれなくても何かしら誉めてくれないかなぁ。


「……よしっ。準備終わり!」


 化粧品を片付けて玄関に向かう。1階に降りるとリビングからお母さんが微笑ましそうに見てた。どうしたんだろう。


「行ってきまーす。」


 どうしたんだと思うけどそのまま外へ出る。今はデートの方が大事だもん。外へ出ると葵も丁度出たところだった。


「タイミングバッチリだ。」


「ふふっ、そうだね。やっぱり私達って気が合うんだね。」


 実際にそう思ったので言うと、葵は照れちゃった。葵の照れたところも可愛いなぁ。


「……早く行くぞ。」


 ギュッ


「あっ……ちょっと待ってよぉ。」


 照れてるのをばれたくないのかな、私の手を掴んで先に歩いちゃった。引っ張られるようにされてるけど葵の隣を歩くように調整する。私が葵の隣を歩くようになると歩くスピードを合わせてくれた。


「……その、なんだ。その服、とても玲奈に似合ってる。滅茶苦茶可愛いと思う。」


「……っ!ふ、ふーん、あ、ありがとっ。」


 しばらく歩いたら、少し恥ずかしそうに葵は私を誉めてくれた。急に誉めてくるの反則だと思う。でも嬉しい。


「……その……葵もかっこいいよ?」


「そ、そうか。ありがとな。」


 葵もいつもよりもっとかっこいいので私も負けじと誉める。それにしても私たちの服装って結構似ている。これってもしかしなくても……


「ペアルックみたい……」


 口に出してみてドキドキした。葵に聞かれてないよね?私はちらっと葵を見る。そしたら葵もこっちを見てた。私は慌てて視線をそらす。


 もしかしなくとも今の聞かれてたよね!?ど、どうしよう。なに言ってるんだってならないよね?


 私はもう一度葵を見る。葵は私と同じように恥ずかしそうにしていた。もしかして葵も同じようなこと考えていたの?えへ、えへへ。にやけてきちゃう。


「……早く行くか。」


「……そ、そうだね。」


 ギュッ


 葵はまたしても照れ隠しでそう言ってくる。実際には歩く速さを変えてないのにね。なんだかんだ言っても私に合わせてくれるんだから優しい。


 手の繋ぎ方はいつの間にか恋人繋ぎにしていた。どちらともなく指を絡めた。葵も何も言わずにしてくれる。


 段々恋人繋ぎにも抵抗がなくなってきてる。このままだと手を繋ぐときはいつも恋人繋ぎになりそうだけど、それも良いかなって思ってる自分もいるんだよね。


 私たちは恋人繋ぎをしながらゆっくりと歩いた。少しでも長く恋人繋ぎをしていたかった。

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