3話 開催。

 ――学園の生徒は、全部で1024人。その全校生徒で毎年行われるのが、能力祭。そして今、その能力祭が始まろうとしていた。


『会場にお集まりの皆さん、お待たせしました!今年もこの季節がやってまいりましたぁ!実況はお馴染み、わたくし九重このえ御子みこが担当します。解説には、この学園の講師でもある、たちばな希美きみ先生にお越しいただきました』


 ――――ん?どこかで聞いた名前のような……。


『はーい。どうも、希美先生でーす!ニカッ☆』


 すごく元気のある声なのにどこか間の抜けた感じ、それに加えてあの眩しい笑顔。間違いない、あの人は――。


「か、母さんじゃねぇか!?た、確かにどこかの学園で先生やっているって、聞いてはいたけど……。まさかここかよ!?てか、母さんって意外と人気なんだな……」


「おお!今年の解説は希美先生だぁ!よっしゃー!」


 俺は母さんの登場と意外な人気度に驚きつつも、能力祭の説明を聞く。


『それでは、能力祭の説明をいたします。まず個人戦、ランダムに戦う相手が決まるトーナメント方式で、試合は1ブロック32組で行われます。つまり、16ブロックありますね。最終的に、その16ブロックの中を勝った人が、決勝ブロックに進むことができるのです。そして団体戦、チームで戦う以外は個人戦とあまり変わりません。それでは、これにて説明は終わります』


 ――なんか雑だな、そう誰もが思った。


『さーて、それでは皆さんお待ちかねのトーナメント表の発表でーす!皆さん、お手持ちのスマホをご覧くださーい』


 先生(母さん)がそう言うと、学園で支給されたスマホに自分のトーナメント表が映し出されていた。


「俺は、Bブロックの3組目。相手は――――学園順位673位、仲野なかのてつ。よし、Bブロックにはあの10人はいない。これなら問題ないな……」


 俺は少し安心した、なんの問題もないと思ったから……。


        ◆


「ほう、あれが橘瑞人か。なるほどな」


「なんか、パッとしないわね。あの東条に勝ったって、聞いたんだけど……」


「まあ、どんな人が相手でも、わたくしは手加減しませんよ」


「そうですね。――――君がどんな戦いを見せてくれるのか、私は楽しみにしていますね。橘瑞人君」

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