第165話 暗黒魔星

 カイトからの連絡を受け、俺は連邦のアルデバラン星系にあるヒアデスに来ていた。

 行方不明になっていたステファ達は、途中のプレアデスで拾い上げた。


 当初、カイトと連絡がつかなかったのは、色々と事情があったようだが、ステファたちと連絡がつかなかったのは、連れ戻されることを警戒して、ステファがみんなのカードを着信拒否に設定していたせいだった。相変わらず、やることがステファである。


 ステファだけ、プレアデスに置いてこようかとも考えたが、ステファの場合、また、密航などしかねない。はた迷惑になるだけなので仕方なく連れてきた。


 プレアデスで再会した時、珍しくアリアがリリスにお説教をしていたが、リリスもかなり心配をかけたことは自覚していたのだろう、甘んじてそれを受けていた。

 リリスが怒られているところなど、滅多に見られないので、微笑ましく見ていたら、聖女とヨーコに「「セイヤ様もですよ!」」と、ステレオ音声で怒られてしまった。


 その後、アリアがティアを見て、いきなり斬り捨てようとしたが、リリスが庇ったため事無きを得た。庇ったのが、俺だったら、俺ごと斬り捨てられるところだった。危なかった。


 さて、カイトからの連絡はヘルプ要請だったのだが、今一つ理解できないでいた。

 カイトが王様って、どういうことだ?


「セイヤ、わざわざすまない」

「こっちこそ、ステファたちが無理言ったみたいで……」


「あー。それもすまなかった。受けた依頼を途中で投げ出してしまって」

「それは、ステファたちに言ってくれ、俺には直接関係ないから」


 間接的には、リリスとの結婚が先延ばしになって、被害を被っているが、元を正せば、俺が、みんなを置いてドラゴン探しに出たせいなので、なんとも言えない。


「ところで、王様になったってどういうことよ?」

「それは、これからどうなるか、わかんないんだが……。実は、俺の母ちゃんが元プレアデスの末姫だったらしいんだ」


「カイト、お前、王族だったのか?!」

「いや、王族ではないようなんだが……」


 カイトの説明によると、母親が元王族だったらしいが、今は王籍を抜けているので、カイトは王族というわけではないようだ。

 ただ、現在のプレアデス王太子の孫に当たるのは間違いないらしい。


 そんなこともあり、ヒアデスの姫と結婚して王にならないかと、連れてこられたらしいが、だからといって、普通、ついてこないよな。


「普通、それを信じるか?」

「セイヤやステファを見ていたら、そんなこともあるのかな……と、納得しちゃって」


 それじゃあ、まるで、俺とステファのせいみたいじゃないか。まあ、俺たちが普通の王族から少しはみ出しているのは確かだが。


「それで、肝心の救援要請の内容だが、ヒアデスが崩壊の危機にあるって、どういうこと?」

「それがだな……」

「それについては、わたくしがお話しいたしましょう」


 ヒアデス王の執事をやっていたというアインが、説明役を買って出た。


 アインの説明によると、暗黒魔星なる物がやって来ることにより、ヒアデスの星々が散り散りになってしまうそうだ。


 それを食い止めるために、暗黒魔星をどうにかしたい。具体的には、オメガユニットで破壊してほしいということだ。


「星の軌道を変えてしまうということは、かなりでかいということだろ? オメガユニットで破壊できるかな?」

「大きさ的には、シリウスの衛星と大差ありません」

 ああ、オメガユニットで破壊してしまった衛星ね……。


「でも、質量的にはもっとでかいだろ? あれか? 暗黒というくらいだからブラックホールなのか?」

「ブラックホールではありません。質量的には普通の星より軽いくらいです」


「それで、なぜ、他の星の軌道に影響が出る?」

「それが、どうやら魔力を引き寄せるらしいのです」


「そんな星があるのか?!」

「詳しくはわかっていませんが、鉄が磁石に引きつけられるように、魔力が暗黒魔星に引き寄せられるらしいのです」

 重力でも、磁力でもなく、魔力に作用して引き寄せるということか。それで、魔星なのか……。


 カイトには世話になってるからな。そのカイトが王になる星が危機的状態なら、できる範囲で助けてやりたい。


「わかった。協力するよ」

「ありがとうございます、セイヤ様。ですが、頼んでおいて今更ですが、今まで様々な兵器で破壊を試みましたが、どれも効果が見られませんでした」


「効果が見られないというのは、傷一つ付かないということなのか?」

「そうです。まるで、吸い込まれるように消えてしまう感じです」


 それで、暗黒ということなのか?


「そうなると、オメガユニットで破壊できるかわからないが、まあ、やるだけやってみよう」

「反空間対消滅弾を使えばいい」


 チハルが何やらまた物騒な名前を持ち出した。


「チハル、その、反空間対消滅弾ってなんだ?」

「反空間により、空間そのものを対消滅させる」


「余り、説明になっていない気がするが、それを使うとどうなる」

「効果範囲にあるすべてが無になる」


「それは、空間に穴が開く、ゲートのようなものとは違うのか?」

「違う。ただすべてが無になるだけ。物質も空間も時間も次元も、そこには何も存在しなくなる」


「それは、使った後に凄くまずいことになっていないか?」

「多用すれば、この宇宙そのものが無くなる」


「それって、使ったら駄目だろ!」

「ずいぶん昔に製造が禁止されている」


「却下! 却下! 取り敢えず通常兵器で攻撃してみて、無理なら他の方法を考えよう」

「了解した。キャプテンが常識人でよかった」

「使うのが心配だったなら、そんな物騒なもの勧めるなよ!」


 チハルのせいで無駄に心配してしまった。


「カイト、そういう訳で、取り敢えずオメガユニットで破壊できるか攻撃してみるよ」

「ありがとうセイヤ。それで、どうする? ギルドに指名依頼を出すか?」


「んーーー。今回はやめておこう。達成できるかわからないし」

「こっちとしては、何が何でも達成してもらいたいんだが……」


「できるだけの努力はするが、暗黒魔星がどんな物か未知数だからな。慎重にやるよ」

「そうだな、そうしてくれ」


 こうして、今回は依頼でなく、友人のカイトを助けるということで、暗黒魔星の破壊に臨むことになった。


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