第159話 帰還
目的であったドラゴンの角を手に入れた俺は、これで結婚できると、浮かれた調子でリリスと一緒にセレストに帰ることにした。
もちろん、アシスタントのチハルと、新たに竜姫も一緒である。
代わりと言ってはなんだが、ブルドラは、自分の宇宙船を帝王からもらって、それで引き続きハーレム要員を探しに、旅を続けることになった。
ブルドラの宇宙船の操縦士は、なんと、パンドラ元公爵が務めることになった。
俺的にはそれでいいのかと思ったが、ドラゴン的にはあの時の闘いでブルドラがパンドラ元公爵に勝ったので、ブルドラにパンドラ元公爵を子分にする権利があるそうだ。
「それじゃあブルドラ、可愛い女の子に会えることを祈っているよ」
「うむ、セイヤには世話になった。ハーレムを作ったら自慢しに行くから楽しみにしておれ」
「まあ、ハーレムは兎も角、いつでもセレストに戻ってきていいからな」
「そうだな、セレストは俺様の星の一つだから、気が向いたら帰ってやるさ」
そう言って、ブルドラはパンドラ元公爵を引き連れて、旅立っていった。
「セイヤ様はハーレムを作られないのですか? もしよければ、聖神国からも何人か見繕いましょうか?」
「スピカ、俺はリリス一人いれば十分だ。やっと結婚できると目処が立ったのに、波風立てないでくれ!」
「そうですか。それは残念です。ですが、自分で波風立てているように見受けられますが?」
「ウッ! それは……」
それは俺の斜め後ろに立っているガラティアのことだよな? 結局、ティアも連れて帰ることになった。
M4要塞を操縦するのに必要となったため、アシスタントとしてティアを手に入れたわけであるが、元はリリスを攫ったメイドアンドロイドである。
初期化されて記憶がないとはいえ、リリスとしては気分が良くないであろう。
そして、役目であったM4要塞の操縦は、もうする必要がない。
ならば、ブルドラたちのアシスタントにどうだろうと提案してみたら、ティアは「ご主人様は、ことが済めば私のことを捨てるのですね。よよょ」と泣きだし、ブルドラは「それを乗せたらハーレム要員を乗せる人数が一人減るだろ」と却下されてしまった。
おまけに、ティアが「ことが済めば」などと紛らわしいことをいうものだから、リリスが変に誤解してしまった。
土下座して謝って事情を説明したが、完全には納得していないようだ。
アリアがいない間リリスの身の回りの世話をさせてはどうかと言ってみたが「心を入れ替えたと言われても、俄かに信じられません。ましてや、アリアの代わりが務まる者などおりはしません」とかえってリリスの機嫌を損ねてしまった。
ならば、竜姫はどうかと尋ねてみたが、元々、世話係などついておらず、自分でなんでもできるそうだ。
終いにはリリスに「セイヤ様は、今まで専属の世話係がいませんでしたから、この際、その娘を専属にしてはどうですか?」と笑顔で言われてしまった。今まで、あれ程恐ろしい笑顔は見たことがなかった。
そんなわけで、ティアは俺の斜め後ろに立っている。
「まあ、いずれにせよ。結婚したら、新婚旅行も兼ねて聖神国に来てください。歓迎しますよ」
「新婚旅行ですか……。リリス、どうだろう?」
「新婚そうそう、スピカ(他の女)に、会いに行くのですか?」
「いや、そういうことじゃないよ。新婚旅行だから、リリスの好きな所でいいよ!」
リリスに睨まれ、俺は慌てて否定する。リリスは未だにご機嫌斜めだ。
「リリス、あまり焼き餅を焼き過ぎると、セイヤ様に嫌われますよ」
「ムッ。スピカに言われたくありませんが、それもそうですね」
「私に言われたくないって、それは、私が男女の機敏に疎いと言いたいの?」
「スピカは、男性と付き合ったことがないでしょ?」
「乙女巫なんだから、仕方がないじゃない! そんなリリスだって、セイヤ様ぐらいでしょ」
「ゼロとイチでは大違いよ!」
この二人、セレストから来る間に、随分と仲良くなったものだ。余程気が合うのか?
「皇王よ、世話になったな。竜姫のことは頼む」
「帝王陛下、こちらこそ、角をいただき、ありがとうございます。おかげでリリスと結婚できます」
竜姫を頼むと言われても、屋敷に住まわせることぐらいしかできないが、幸いリリスと仲が良さそうなので、なんとかなるだろう。
「それはよかったの。また、フォーマルハウトにも顔を見せてくれ」
「はい、機会がありましたら」
オメガユニットでゲートを開ければ、それ程遠くないからな。
「俺からも感謝しておく。いい感じにかき混ぜてくれた」
「将軍、俺は泡立て器ではないんだがな……」
「それじゃあ、ミキサーかな?」
「なんだそれは?」
「泡立て器より強力だろ!」
「俺は別に混乱を起こしたかったわけじゃない!」
リリスと結婚するために、ドラゴンの角が欲しかっただけだ。
まあ、だが、結果的に帝国を混乱させてしまったのは確かだ。
「これから帝国はどうなるんだ?」
「心配しなくても、俺が住み良い帝国にしてみせるさ! 帝国ではなくなるかもしれないがな」
「確かに、共和制になったら帝国は名乗れないな」
いずれにせよ、帝国が落ち着くまでには、しばらく時間がかかるだろう。
リリスとスピカの言い争いも済んだようなので、別れの挨拶をして、ハルクに乗り込む。
「チハル、セレストに帰るぞ」
「オメガユニットも準備万端」
帰りは、オメガユニットでゲートを作って帰るのであっという間だ。
「それじゃあ、ゲートを開けてくれ」
「了解」
四基のオメガユニットを使って、ゲートを開く。
「それじゃあ、発進!」
「発進」
ゲートを潜り、異次元を進む。
そういえば、何か忘れているような気がするが……。
「目的地に到着。ゲートを開ける」
思い出す前に、到着したようだ。
再びゲートを潜り、通常空間に戻る。
そこは、セレストのすぐ側だった。
「リリス、セレストの衛星軌道に乗ったら、すぐに大公に会いに行こう。結婚の許可をもらわないと」
「そうですね」
リリスは、先程とは違い、穏やかな笑みを向けてくれる。
これで、やっと結婚できるぞ!
「キャプテン、通信」
そう思ったのも束の間、地上から通信が入った。誰だ?
「誰だ?」
「プロキオンの大使の補佐官」
「ヨーコの? 繋いでくれ」
スクリーンに映し出されたのは、見慣れた補佐官の一人だった。
「皇王様、大使は、ヨーコ様は一緒ではないですか?」
「いや、一緒ではないが? 何かあったのか?」
「ヨーコ様が、皇王様を追いかけて行ったまま連絡がつきません!」
「なんだって? ヨーコ一人か?」
「いえ、ステファニア様と聖女様とアリアさんも一緒です」
「どういうことだ?」
ステファが一緒なら大丈夫だろうが、連絡が取れないとは、なにがあった?
聖女とアリアが一緒ということで、リリスも心配そうだ。
これは、また、結婚はお預けになりそうだ。
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