第156話 四者会談

 帝王により四公爵が捕らえられ、クーデターを起こした将軍も戦力を引いたことにより、帝都アンタレスは一応の平穏を取り戻した。


 だが、王宮と四公爵邸は、跡形もなくなっていた。


 パンドラ公爵と殴り合いの闘いをしたブルドラは、それなりの怪我を負ったが、竜姫に治療されて元気に生きている。

 今は、流刑星から引き上げて来たドラゴンに、ハーレムに入れられる娘がいないか物色中だ。だが、帝王の話では竜姫を除き全員既婚者だそうだ。残念!

 それでも諦めずにNTRを目指しているようだが、旦那さんに伸されて、その度に竜姫に治療されている。


 そして、今日は帝王と将軍と俺とそれに乙女巫の四者会談が行われる。

 場所は神聖国のユートピア号だ。


「凄いですね! まるで草原の真ん中にいるようだ」

 宇宙船の中だというのに一面の草原が広がっている。

 遠くの方に馬や牛が見える。


「のどかでいいですね」

「気に入っていただけたなら良かったです」


 スピカが嬉しそうに笑顔を向けてくる。


「会談の場所はあちらになります」

 草原の中に東屋がありテーブルが据えられている。


 俺たちはテーブルを囲んで椅子に座り話し合いを始める。

 四者会談といっても四人だけでなく、俺の隣にはリリスが座り、後ろにはチハルとブルドラも座っている。

 帝王のそばには王妃と竜姫が、将軍の周りにも何人かの部下一緒だ。


「まずは、一番簡単な私どもへの報酬を決めてしまいましょう」

 会場提供者でもある、スピカが口火を切った。


「竜王子を救出する際に使った転送装置の使用料ですね」

「そうなります」

 俺が確認するとスピカが頷いた。


「その際には大変世話になった。感謝する。それで、そちらからの希望はあるか?」

 帝王がスピカに頭を下げ感謝の意を表した。


「神聖国に隣接する領域の割譲と言いたいところですが、流石に無理があるでしょうから、領界面の確定と不可侵条約の締結といったところでしょうか」


「ちょっと待て! 竜王子の救出は帝王個人の都合だ。帝国として報酬を払うのはおかしい」

「将軍、国のトップ同士がした約束ですよ。個人的な友諠があるならともかく、私は帝王陛下と友人ではありませんよ。それを、個人の都合とするのは無理があります」

「チッ」


 スピカの要求に将軍が異議を唱えたが、異議は受け入れられなかった。将軍が苦い顔で舌打ちをする。


「領界面の確定と不可侵条約の締結か。では、そのための協議を進めるということでどうだろう?」

「わかりました。私どもへの報酬はそれでお願いします」


 帝王がより現実的な条件を出し、スピカがそれに合意し、神聖国への報酬は結論が出たようだ。


「続きまして、皇王様への報酬について話し合いましょうか」

「皇王には何から何まで、世話になったな。いくら感謝してもしたりないほどだ」

 帝王が頭を下げて、感謝の言葉を述べる。


「いえ、こちらの都合もあってのことですから」

「皇王様の報酬は、個人事業主としての、契約した報酬でよろしいのですか?」

 スピカが俺への報酬について確認する。


「そう願いたいのですが、現状それが難しいかもしれませんね……」

「契約した報酬の内容は?」


「ドラゴンパーク星の情報です」

「そうであったな。だが、その資料は王宮にあった。既に灰になってしまったな」


 俺達が将軍の方を見ると、将軍はバツが悪そうに視線を外した。


「ドラゴンパーク星ですか? 何でそんな大昔に無くなってしまった星のことなんか調べているのですか?」

「無くなった? スピカはドラゴンパーク星について知っているのか?」

 意外なところに、ドラゴンパーク星について知っている人がいた!


「知っているといっても、大昔に、ゲートに飲み込まれて消えてしまったことだけですよ」

「ゲートに飲み込まれた?」

 折角の情報であったが、何か絶望的な情報なのだが……。


「確かゲート7だったはずです。当時はまだ未発見のゲートだったため、発見が遅れて、回避できなかったようですよ」

「ドラゴンはそのまま飲み込まれたのか?」


「いえ、それはほぼ全員が退避したはずです。M4要塞も元は避難船の一つですよね?」

「確かにそうだったな。あれで逃げ出したのだ」

 帝王も当時を思い出したのか、しみじみと呟いた。


 ドラゴンパーク星が無くなっていたとは、ブルドラの願いは叶えてやれなくなったな。


 だが、ブルドラからの依頼は「他のドラゴンがいる星に連れて行って欲しい」だったはずだ。それなら、ドラゴンパーク星にこだわる必要はない。むしろ、既に依頼は達成しているよな。

 ハーレムを作れるかどうかは、俺の関知するところではない。後はブルドラしだいだ。

 ……現状では無理だろうけど。


「まあ、無くなってしまったものは仕方ないですね。代わりの報酬はどうしますか?」

「それなら、ドラゴンの角が欲しい」

「ドラゴンの角だと?」

 俺の要求に、帝王が訝しげな表情を見せる。


 やはり、ドラゴンにとって角は重要で、簡単には手に入れられないか?

 俺が諦めかけていると、帝王は不思議そうに言った。


「そんな物でいいのか?」

「そんな物? ドラゴンにとって角は重要な物ではないのですか?」


「確かに、角がなかったら女にもてないが、我は既に王妃がいるからな、新しい妻を迎える気もない」

「当たり前ですよ!!」

 王妃の顔が怖い。


「ということで、角がなくても困らん。それに、すぐに生えてくるしな」

「再生するのですか?」

「再生というか、伸びてくる感じだな。爪と一緒だ」


 そういえば、鹿などは角が生え変わるのだったか?


「では、皇王様の報酬はドラゴンの角ということでよろしいですね」

「それでお願いします」

「いや、ちょっと待て。それでは報酬が少なすぎる」

 帝王が慌てて遮る。


「少なすぎると言われましてもですね。……。それなら、残りは、そちらが納得するだけのお金でいいです」

 これからリリスと結婚するんだ。お金も必要になるだろう。


「わかった。こちらから、皇王の口座に振り込んでおこう。それでよいな」

「はい、そうしてください」

「ちょっと待った!」

 決着したかと思ったら、今度はブルドラから待ったがかかった。


「俺様も活躍したのだから、それに見合った報酬が欲しい」

 まあ、確かにそれなりの働きをしたのだから報酬は必要だな。


「何か欲しいものがあるのか?」

「ハーレム要員を探しに行くための宇宙船をくれ」


「宇宙船って、ブルドラ、操縦できるのか?」

「できん!」


「できんって、それじゃあ駄目だろう」

 ブルドラは、相変わらずだな。呆れ返ってしまう。


「まあよい、操縦できる者も含めて、宇宙船をやろうではないか」

「助かるぜ、ありがとよ」

 流石は、帝王。太っ腹だな。だが、ブルドラにそこまでしてもらっていいのだろうか?


「すみません。俺の報酬金は無しにしてもらっていいですから」

「そんな心配するほどのこともない」


「それでは、皇王様への報酬はこれでいいですか?」


 今度は誰も異議を唱えなかった。


「続きまして、帝国の今後の体制についてですね」


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