第24話 講習二日目午後

 午前の講義も終わり、昼食は今日も講習会場の食堂で、カイトとステファの二人と一緒に取っていた。


 今日俺が食べているのはパスタである。

 やはり、うどんとは違うよな。久しぶりの食感にまた涙が出そうになった。

 うどんはうどんで美味しいけどな。


「セイヤ、パスタはそんなに美味いか?」

「そうだな、俺の田舎にはなかったからな」

「パスタがないなんて、どんな田舎なんだよ」

 カイトが呆れている。


「私も興味があるわ」

「うーん。どんな田舎かと言われてもな。片田舎としか答えようがないな。名前を言ってもわからないだろうし」


「もしかして、隠れ里か何かなの?」

「いや、知られてないだけで隠れているわけではないよ」

「そうなの……」

 ステファは少し残念そうだ。隠れ里に興味があるのだろうか。


「そういえば、なんで講義中にあんな質問したんだ?」

「いや、俺の船はキャプテンシートから魔力を充填できるようになっているからさ」

「へー。ハルク千型はそんな機能があるんだ」


 カイトは感心しているが、ステファはそうではないようだ。


「ハルク千型にそんな機能はないと思うけど?」

「やっぱり普通はないのだな。プロトタイプだからかな?」


「プロトタイプなの?」

「そうみたいだよ。プロトタイプのデルタ、試作機の四番船だな」


「デルタなんてあったの?」

「ステファはハルク千型に詳しいのか?」


「いえ、そんなことないわよ」

 ステファはとぼけているが、これはハルクに相当詳しいのだろう。


「古くても、所詮、試作機でも、船持ちなのは羨ましいよ」

「カイト、あんまり羨ましそうに聞こえないぞ」


「ははははは、気にするな」

 カイトは最新型に憧れているんだろうな。


 お昼を食べ終わり、午後の講習は緊急事態の対処法だったのだが、隣の席の男爵令嬢がうるさい。


「胸を触るなんてハレンチですわ!」

 まあ、普通、触ったら痴漢だね。


「ましてや、口と口を付けるなんて、許せませんわ!」

 うん。許せないね。命がかかっている状態でなければ。


 救急救命で心臓マッサージと人工呼吸の話になったら大騒ぎしだした。


「そんなことしなくても、大体、ポーションを飲ませればどうにかなるはずですわ」

「残念だが、心肺停止の状態ではポーションを飲ませられない。だから、蘇生法はよく覚えておけ」


「そんなの覚えたくありませんわ!」

 講師に対してよくそんなこと言えたものだ。流石は男爵令嬢だ。


「それでは困るのだがな。覚える気がないなら、体に叩き込むしかないな」

 講師は、講師で体育系か。

「そうだな。それじゃあ、隣の席の者と実技訓練をしてもらおうか」


「えっ! 俺ですか?」

 なんで俺を巻き込む!


「スケベ、痴漢、変質者!」

 男爵令嬢が俺を罵ってきた。


「なっ。俺は何もしてないだろ」

「いやらしい目で私を見ていましたわ」


「見てないから。というか、視野に入らないでくれ」

「まあ、庶民の分際で失礼にも程がありますわ」

「失礼なのはお前の方だ、お前!」


「おいおい、その辺にしてくれ。講習が進まないだろう」

 ちょっと待て、講師のお前が振ったのだろうが。


 その後も男爵令嬢は騒ぐのを止めなかった。

 お陰で、午後の講義だというのに、まったく眠くならないで済んだのだった。


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